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女心は難しい
7月19日昼間
僕は庭から続く坂道に座り込み、目の前の柿の大樹に話しかけていた。
「秋香さん、どうして今日は出てきてくれないの?」
彼女の好きな甘いチョコ菓子を持ってきたのに、姿を見せてくれない。昨日のお礼も言いたいのに、声すら聞かせてくれない。
「今日は狸も一緒に来たんだよ。月の太鼓囃子で僕を信用してくれたみたいで、懐いてくれたんだよ。ほら、可愛いでしょ?」
茶色くモコモコした化け狸たちを抱えて柿の木に近づけた。
ガサガサッ!
僕の頭上の枝が風もないのに大きく揺れる。
さっきからこればっかりだ。これが彼女の返事代わりなのかな。
「どうして出てこないの?あんまりにも僕が情けなさ過ぎて、愛想尽かしちゃったとか?祖父ちゃんとかけ離れすぎて幻滅しちゃった?」
ガサガサッ!
「そうなの?違うの?」
ガサガサガサガサ!
「もう!そんなんじゃ、どっちか分かんないよ。僕、どうしたらいいの?顔出さない方がいい?」
抱っこしている狸たちが顔にスリついてくる。
この子たちが懐いてくれた代わりに、秋香さんに嫌われちゃったのかな。せっかくみんなと仲良くなってきたのに、寂しいな。
僕は秋香さんに用意したチョコ菓子をいじりながら、肩を落として狸たちのモコモコに顔を埋めた。
「大希殿!土地神様と蛇の手伝いは終えたでござるよ。このまま、我が猿避けの柵の見回りも参ろうと思うが・・・ん、いかがされた?」
「何が?」
「背を丸めて小さくなって、意気消沈しているようにお見受けするが」
「マジか」
そんなに、しょんぼりした顔してる?他人から指摘されるくらい分かりやすい落胆ぶりってこと?
恥ずかしいな。なんかこれじゃ、フラれた女々しい奴みたい。
心配そうに僕を見つめていた清蟹くんが「あ!」と何かを思い出した様子で、僕のシャツをきゅっと引っ張った。
「土地神様から伝言を承ってござった。忘れぬうちに早く伝えてしまいたいが、よろしいか?」
「あんご爺ちゃんから伝言?なんだろう?」
僕は清蟹くんの方へふり向いた。
「この柿の木の精は、霊力が弱まってしまうと女子の姿を保てなくなるそうでござるよ」
「え!そうなの?」
「我も同様だが、人の姿を成すだけでも相当な霊力を必要とするものでござる。昨日のように身を守る特異な術を使うとさらに消耗してしまうのでござろう」
「そうなんだ。大変な重労働させちゃったんだんね」
知らなかったとはいえ、秋香さんにかなり負担かけちゃっていたのか。しみじみと苔の生えた老木の幹を見上げた。
「おそらく、あの若い女子の姿も霊力によるものでござろう。きっと弱っている今は、若さも保てぬ故、本体の木そのままの、老婆のごとき声でござ・・・」
ボトボトボト!!
「うわ!痛っ!!」
頭上から大量の青い渋柿の実が降ってきた。まともに食らった清蟹くんは頭を抱えて蹲っている。
清蟹くん、図星ついたみたいだね。
「僕も察してやれなくてごめんなさい。霊力が回復したら、またお話ししましょうね」
カサカサッっと軽やかに枝が揺れた。嫌われたんじゃなくてよかった。
「女心って難しいね、清蟹くん」
「ま、まこと、難解でござる」
僕は狸を放して、頭をさする清蟹くんを抱いて立ち上がり、猿避けの電柵のチェックへ向かった。
僕は庭から続く坂道に座り込み、目の前の柿の大樹に話しかけていた。
「秋香さん、どうして今日は出てきてくれないの?」
彼女の好きな甘いチョコ菓子を持ってきたのに、姿を見せてくれない。昨日のお礼も言いたいのに、声すら聞かせてくれない。
「今日は狸も一緒に来たんだよ。月の太鼓囃子で僕を信用してくれたみたいで、懐いてくれたんだよ。ほら、可愛いでしょ?」
茶色くモコモコした化け狸たちを抱えて柿の木に近づけた。
ガサガサッ!
僕の頭上の枝が風もないのに大きく揺れる。
さっきからこればっかりだ。これが彼女の返事代わりなのかな。
「どうして出てこないの?あんまりにも僕が情けなさ過ぎて、愛想尽かしちゃったとか?祖父ちゃんとかけ離れすぎて幻滅しちゃった?」
ガサガサッ!
「そうなの?違うの?」
ガサガサガサガサ!
「もう!そんなんじゃ、どっちか分かんないよ。僕、どうしたらいいの?顔出さない方がいい?」
抱っこしている狸たちが顔にスリついてくる。
この子たちが懐いてくれた代わりに、秋香さんに嫌われちゃったのかな。せっかくみんなと仲良くなってきたのに、寂しいな。
僕は秋香さんに用意したチョコ菓子をいじりながら、肩を落として狸たちのモコモコに顔を埋めた。
「大希殿!土地神様と蛇の手伝いは終えたでござるよ。このまま、我が猿避けの柵の見回りも参ろうと思うが・・・ん、いかがされた?」
「何が?」
「背を丸めて小さくなって、意気消沈しているようにお見受けするが」
「マジか」
そんなに、しょんぼりした顔してる?他人から指摘されるくらい分かりやすい落胆ぶりってこと?
恥ずかしいな。なんかこれじゃ、フラれた女々しい奴みたい。
心配そうに僕を見つめていた清蟹くんが「あ!」と何かを思い出した様子で、僕のシャツをきゅっと引っ張った。
「土地神様から伝言を承ってござった。忘れぬうちに早く伝えてしまいたいが、よろしいか?」
「あんご爺ちゃんから伝言?なんだろう?」
僕は清蟹くんの方へふり向いた。
「この柿の木の精は、霊力が弱まってしまうと女子の姿を保てなくなるそうでござるよ」
「え!そうなの?」
「我も同様だが、人の姿を成すだけでも相当な霊力を必要とするものでござる。昨日のように身を守る特異な術を使うとさらに消耗してしまうのでござろう」
「そうなんだ。大変な重労働させちゃったんだんね」
知らなかったとはいえ、秋香さんにかなり負担かけちゃっていたのか。しみじみと苔の生えた老木の幹を見上げた。
「おそらく、あの若い女子の姿も霊力によるものでござろう。きっと弱っている今は、若さも保てぬ故、本体の木そのままの、老婆のごとき声でござ・・・」
ボトボトボト!!
「うわ!痛っ!!」
頭上から大量の青い渋柿の実が降ってきた。まともに食らった清蟹くんは頭を抱えて蹲っている。
清蟹くん、図星ついたみたいだね。
「僕も察してやれなくてごめんなさい。霊力が回復したら、またお話ししましょうね」
カサカサッっと軽やかに枝が揺れた。嫌われたんじゃなくてよかった。
「女心って難しいね、清蟹くん」
「ま、まこと、難解でござる」
僕は狸を放して、頭をさする清蟹くんを抱いて立ち上がり、猿避けの電柵のチェックへ向かった。
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