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しおりを挟む陛下は矢を受け取ると、その矢に括り付けられていた文を取り、その文面に見えを走らせる。
「飛龍、泰然、ここへ」
そこ声掛けに、控えの間にいた飛龍様と泰然様がやってきた。
「これを見よ」
そういって、陛下は文を二人に渡す。
二人は渡された文を見て、目を見開いた後に不敵に微笑んだ。
「あやつらは相当に間抜けですね……」
「バカの一つ覚えって言うんだろうな……」
そんな各々宦官のエースで陛下の側近と武官のエースで側近は黒い笑みを浮かべている。
室内の温度は急降下だ、ただでさえ寒くなっているのに……。
「そうだな、あいつらは余を甘く見すぎているな……。そろそろ灸を据えねばならんだろう」
その一言を言う陛下にゾクリと背筋が粟立つような気配に、陛下の本気の怒りを感じた。
陛下は私にはいつものように優しい笑みを浮かべて言う。
「せっかく来てくれたからな、一緒にお茶の時間にしよう。今日は月餅があるんだ」
陛下はそうしてお茶を飲むように勧めてくれたので、私は机と椅子のあるスペースに案内されて落ち着いた。
「危ない目に合わせて、すまなかった。それでも俺は春麗に会わないという選択は取りたくない。だが、最大限の配備を敷く。どうか、嫌にならないでくれると助かるんだが……」
陛下も、まさかここまで私があれこれ巻き込まれるのは想定外だったのだろう。
側妃は六人いるにも関わらず、なにかと私狙いが多いから。
まぁ、他の側妃は実家が大きかったりするので、狙うには相手方もリスクが大きすぎるのだろう。
「お気になさらないでください、陛下。平民出の私が側妃なのだから狙われても仕方ないのですよ」
そう私が言うと、陛下は少し苦い顔をして言った。
「そうじゃない。俺が側妃の中で一番気にかけ、気持ちを傾けていることは隠していないんだ。だから春麗身の回りには自分でも気を付けてくれ」
えっと……、つまり側妃の中で私が陛下に気に入られていると周囲も本人も隠さず認識していると。
「なぜです? 一番身分が釣り合わないのに……」
私の言葉に、陛下は少し悩まし気に微笑みを浮かべると私の頬に触れながら言う。
「人を想う気持ちは身分やらを考えて決まるものではない、俺には春麗が必要で求めてやまない。溢れるものは止められないし、俺は気持ちに素直に生きたいと思っている」
そこで陛下は区切るように言葉を止めた後に、
「だから、春麗だけはここから出してやることは出来ないだろう。嫌かもしれぬが、皇帝の寵姫は間違いなく春麗そなただからな」
いまだかつてないほどの、色気を伴った微笑みを向けられて私が真っ白になったのは言うまでもない。
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