わかばの頃に

うみのほたる

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 舶来の加熱式。男は確かにそう言った。裏ルートで出回っているアレだ。従来の紙巻よりも健康被害は少ないらしいし、禁煙化が進む現在では、加熱式しかだめだというカフェもあるくらいだ。チャラチャラとした若者がクラブでやっている、アレとはそもそも物が違うらしい。

 ギリシア力(ちから)クラーベ大会が延期となった今でも、4月からの法改正で・・・おっと話しがそれたな。そもそも、大往生を直前にした女の死因など、病死でも他殺でも大差はないはずだ。他殺といってもヘビーローテーショナーで肺気腫の老女のことなど、誰も気にかけていないのだ。

 都心でも35度を超えた猛暑日に葬儀は執り行われた。身内だけのこじんまりとした式だった。

 高光コダマは黒いネクタイをして式に参列した。職業柄慣れているとまではいかないが、ご愁傷様ですと口ごもりながらボソボソと言った。あまり、はっきりと発音してしまうのはよろしくないと夜のバラエティ番組でやっていた。

 やはり、容疑者は身内だろう。遺産は大した金額でもないが、相続税を引いても一人頭、外車を一台買えるくらいはあるはすだ。怪しいのは長男か次男か三男か、嫁か。全員共謀となると話は早いが、皆、きちんとしたアリバイをもっていた。

 やれやれ、葬儀場を後にして黒いネクタイを外すと、高光はまた、ソフトケースから一本取り出し、咥えた
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