19 / 51
恋人編
4月28日(月)-前編-
しおりを挟む
今日も僕は午前7時30分発、各駅停車八神行きの電車を待っている。
月曜日の朝の電車がこれほど待ち遠しいことはなかった。恋人ができるとここまで物事に対しての考えが変わるのか。あと、明日が祝日だから休みというのもあるかな。
気付けば、高校生活が始まってから1ヶ月が経とうとしていて、もうすぐゴールデンウィーク。栞と一緒に楽しい時間を送ることができれば何よりだ。といっても、今はまだ何も予定がないけれど。
『まもなく、1番線に各駅停車、八神行きが参ります』
そのアナウンスを聞いて潮浜方面に視線を向けると、いつもの電車の姿が見える。あの中に栞が乗っていると思うと、早く来いと心の中で急かしてしまう。
今日も電車が到着し、扉が開くとそこには栞の姿があった。
「おはよう、悠介君」
「おはよう、栞」
そう言って、僕は電車に乗り栞の左隣に立つ。
程なくして、電車は定刻通りに鳴瀬駅を出発する。
「今日はいつもよりもちょっと空いてるね」
「そういえば……そうだね。ゴールデンウィークが近いからもう休んでいる人がいるのかもしれないね」
周りを見てみると、栞の言うとおりいつもよりも乗客が少ない。有休を使って10連休をする社会人の方もいるそうだし、今日くらいから休みにする大学もあるみたいだ。羨ましい気持ちもあるけれど、満員電車じゃなくなると考えればそんな想いも薄れていく。
「ゴールデンウィークかぁ……」
栞は楽しげな表情を浮かべながらそう呟く。
「悠介君はいつお休みなの?」
「明日と、3日から6日までかな。暦通りだったはず」
「私と一緒だ」
「そっか。じゃあ、お休みの間に2人でどこかに遊びに行こうか」
「うん!」
良かった、自然な流れでデートに誘うことができて。待ち遠しそうな笑みをしてくれることが嬉しくて、ほっとしている。
「栞はどこか行きたいところとかある?」
僕がそう訊くと、栞はう~ん、と考えて、
「……悠介君のお家かな」
ほんのりと頬を赤くしながら控え目な声でそう言った。
「な、なるほどね。僕の家かぁ」
予想外の答えだったので正直驚いている。別に僕の部屋に厭らしいものはないので栞を呼んでもかまわないけれど。
「い、いきなり悠介君のお家だなんて厚かましいこと言っちゃってごめんね。ただ、悠介君のお家に行ってみたくて……」
「厚かましいだなんて全く思っていないよ」
「あうぅ……」
恥ずかしいのか栞はそんな声を上げ、俯いてしまう。
恋人の家か。確かに行ってみたいな。ただ、栞と恋人になってからまだ日が浅いので行きたいと言う勇気はまだない。それ以前に女の子の家だし。
「どこに行くかはゆっくり考えよう。まだ時間もあるし。あと、僕の家なら来てくれて大丈夫だから」
「……うん」
栞は小さく頷いた。そんな彼女もまた可愛らしい。
時間はいくらでもある。金曜日の放課後みたいに、どこかでゆっくりとお茶でもしながら考えることもできるんだから。焦る必要はない。
ゆっくりと考えようという僕の言葉もあってなのか、その後は栞からの提案は何も出なかった。僕も考えておこう。
『間もなく、鏡原、鏡原です』
今日の朝も栞との別れの時間がやってくる。
「帰りにまた会おうね。それまでに悠介君と行きたいところをいくつか考えておくね」
「そうか、分かった。僕も考えるよ。帰りを楽しみにしてる」
僕の家以外に行きたい場所は思いつかないかと思ったけど、今の言葉で安心した。
きっと、栞と過ごすゴールデンウィークは楽しいものになるだろう。それはもうすぐそこまで来ている。
電車は鏡原駅へと到着する。
「じゃあね、悠介君。また帰りに」
「うん。いってらっしゃい、栞」
栞は楽しそうに手を振り、電車を降りていった。
僕もどこに行きたいか考えておかないと。八神駅に着くまでの間、僕はずっとどこに行こうかスマートフォンを見ながら考えるのであった。
月曜日の朝の電車がこれほど待ち遠しいことはなかった。恋人ができるとここまで物事に対しての考えが変わるのか。あと、明日が祝日だから休みというのもあるかな。
気付けば、高校生活が始まってから1ヶ月が経とうとしていて、もうすぐゴールデンウィーク。栞と一緒に楽しい時間を送ることができれば何よりだ。といっても、今はまだ何も予定がないけれど。
『まもなく、1番線に各駅停車、八神行きが参ります』
そのアナウンスを聞いて潮浜方面に視線を向けると、いつもの電車の姿が見える。あの中に栞が乗っていると思うと、早く来いと心の中で急かしてしまう。
今日も電車が到着し、扉が開くとそこには栞の姿があった。
「おはよう、悠介君」
「おはよう、栞」
そう言って、僕は電車に乗り栞の左隣に立つ。
程なくして、電車は定刻通りに鳴瀬駅を出発する。
「今日はいつもよりもちょっと空いてるね」
「そういえば……そうだね。ゴールデンウィークが近いからもう休んでいる人がいるのかもしれないね」
周りを見てみると、栞の言うとおりいつもよりも乗客が少ない。有休を使って10連休をする社会人の方もいるそうだし、今日くらいから休みにする大学もあるみたいだ。羨ましい気持ちもあるけれど、満員電車じゃなくなると考えればそんな想いも薄れていく。
「ゴールデンウィークかぁ……」
栞は楽しげな表情を浮かべながらそう呟く。
「悠介君はいつお休みなの?」
「明日と、3日から6日までかな。暦通りだったはず」
「私と一緒だ」
「そっか。じゃあ、お休みの間に2人でどこかに遊びに行こうか」
「うん!」
良かった、自然な流れでデートに誘うことができて。待ち遠しそうな笑みをしてくれることが嬉しくて、ほっとしている。
「栞はどこか行きたいところとかある?」
僕がそう訊くと、栞はう~ん、と考えて、
「……悠介君のお家かな」
ほんのりと頬を赤くしながら控え目な声でそう言った。
「な、なるほどね。僕の家かぁ」
予想外の答えだったので正直驚いている。別に僕の部屋に厭らしいものはないので栞を呼んでもかまわないけれど。
「い、いきなり悠介君のお家だなんて厚かましいこと言っちゃってごめんね。ただ、悠介君のお家に行ってみたくて……」
「厚かましいだなんて全く思っていないよ」
「あうぅ……」
恥ずかしいのか栞はそんな声を上げ、俯いてしまう。
恋人の家か。確かに行ってみたいな。ただ、栞と恋人になってからまだ日が浅いので行きたいと言う勇気はまだない。それ以前に女の子の家だし。
「どこに行くかはゆっくり考えよう。まだ時間もあるし。あと、僕の家なら来てくれて大丈夫だから」
「……うん」
栞は小さく頷いた。そんな彼女もまた可愛らしい。
時間はいくらでもある。金曜日の放課後みたいに、どこかでゆっくりとお茶でもしながら考えることもできるんだから。焦る必要はない。
ゆっくりと考えようという僕の言葉もあってなのか、その後は栞からの提案は何も出なかった。僕も考えておこう。
『間もなく、鏡原、鏡原です』
今日の朝も栞との別れの時間がやってくる。
「帰りにまた会おうね。それまでに悠介君と行きたいところをいくつか考えておくね」
「そうか、分かった。僕も考えるよ。帰りを楽しみにしてる」
僕の家以外に行きたい場所は思いつかないかと思ったけど、今の言葉で安心した。
きっと、栞と過ごすゴールデンウィークは楽しいものになるだろう。それはもうすぐそこまで来ている。
電車は鏡原駅へと到着する。
「じゃあね、悠介君。また帰りに」
「うん。いってらっしゃい、栞」
栞は楽しそうに手を振り、電車を降りていった。
僕もどこに行きたいか考えておかないと。八神駅に着くまでの間、僕はずっとどこに行こうかスマートフォンを見ながら考えるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ルピナス
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。
そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。
物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。
※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。
※1日3話ずつ更新する予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる