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恋人編
5月2日(金)-⑥-
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午後4時半。
高津田駅から栞と手を繋ぎながら歩いて7、8分。閑静な住宅街の中で、栞の歩みが止まる。
僕らの横には立派な一軒家が建っている。ここが栞の……あっ、『日高』って彫刻されている表札があった。やっぱり、ここが栞の家なんだ。
「ここだよ、悠介君」
平日の夕方だからいない可能性が高そうだけど、栞のお父様がいたらどうしよう。それを考えただけでも冷や汗が出てくる。
「今までの中で一番緊張しているように見えるけど、どうしたの?」
「……親戚以外では、女の子の家に上がるのが初めてだから緊張してる」
僕がそう言うと、栞はくすっと笑う。
「何だか意外。篠宮さんと仲良くしているし、一度は女の子の家に遊びに行ったことがあると思ってた」
「そんなことないよ」
気兼ねなく話せる女子って、親戚以外だと栞と亜実くらいしかいない。高校に入学してからは彼女達以外の女子と少しずつ話せるようになったけど。それは栞のおかげでもあるし。そんな僕にとって、女の子の家に上がるのはかなり緊張することなんだ。
「でも、緊張する悠介君、可愛いなぁ。いつもクールで落ち着いているから」
「そ、そうかな」
落ち着いていると言われたことはあるけど、クールだと言われたことはないな。それよりも、緊張している僕が可愛いって思うのか。栞ってSなのかもしれない。
「何かあっても私がいるから大丈夫だよ。さっ、行こう!」
「うん」
付き合い始めてから1週間ちょっとだけど、あの頃から随分と頼もしくなったな。今回のことで、また心が通い合えたからだろうか。
僕は栞に手を引かれたまま、彼女の家にお邪魔する。
「ただいま~」
「お邪魔します」
すると、廊下の突き当たりから1人の女性が現れ、駆け足で僕達の方にやってくる。黒髪のロングヘアが印象的な綺麗な方だけど、栞のお姉さんなのかな? あと、ちょっと息苦しそうだけど大丈夫か?
「そんな慌ててどうしたの? お母さん」
「だって、男の子の声がしたから……」
お、お母さんだったのか。随分と若々しい方だな。
「お母さん、彼が私の彼氏の新倉悠介君」
「初めまして。八神高校1年の新倉悠介です。先日から、栞さんとお付き合いしています。彼女と同じ1年です」
「初めまして。栞の母の恵美です。あなたの話はいつも栞から聞いているわ。男の子が苦手な栞から、最初にあなたの話が出たときは驚いたけれど。きっと、新倉君を見たときに一目惚れしちゃったのね」
栞のお母さん……恵美さんはニヤニヤしながら僕達を見ている。
一目惚れだったのは知っていたけれど、栞は男の人が苦手だったのか。天羽女子に進学した一つの理由なのかも。
「最近は元気がないからお父さんが怒っていたけれど。栞のことを悲しませるとはどういう人だって」
「……本当に申し訳ないです」
お父さんが怒っているとは……これはまずい状況ではなかろうか。
「そのことはもう大丈夫だよ、お母さん。悠介君が学校まで迎えに来てくれたから……」
栞は嬉しそうな表情でそう言った。迷惑かもしれないと不安だったので、そういう風に言ってくれるのは僕も嬉しい。
「あらあら、栞は愛されているのね。そんな2人の邪魔をすると悪いから、これからゆっくりとお買い物をしてこようかな」
「あうぅ……」
栞は両手で赤くなった顔を隠す。
「こういう感じの子だけど、これからも栞のことをよろしくね」
「僕でよければいつまでも」
「ふふっ、今のことをお父さんに話しておかないと。お父さん、栞に溺愛しているところがあるから」
「そ、そうですか」
「私達が上手に言っておくから安心してね」
「ありがとうございます」
こんなに可愛い娘だと溺愛してしまうのは納得かな。
少なくとも、恵美さんには好意的に受け入れられているようだ。ただ、栞のお父さんはここ2、3日のことで僕に対する印象が悪くなっているか。でも、恵美さんの口ぶりからして、今回の一件が発覚するまでは大丈夫だったみたい。
「ゆ、悠介君! 私の部屋に行こう!」
「分かった。お邪魔します」
「ごゆっくり~」
栞の家に上がり、僕は再び彼女に手を引かれて彼女の部屋に行く。
僕が想像していたよりも、栞の部屋の中はシンプルな雰囲気。机の上に置かれているものや本棚に入っている本などを見ると、女の子らしさは感じられる。
「ごめんね。お母さんが色々と言ってきて」
そう言う栞の呼吸はちょっと荒かった。はあっ、はあっ、と声が聞こえる。恋人の僕を自分の家へ連れてくることに緊張していたのかもしれない。
僕の方に振り向いた栞の顔は赤くて、少し汗ばんでいた。栞は恥ずかしそうに、照れくさそうに、僕に向かってはにかむ。
「気にしなくていいよ。僕のことを話していたみたいだね」
「……うん。気付くといつも悠介君のことばかり話してた。電車の中で悠介君と出会ったあの日から」
「そっか」
「あのときから、悠介君と付き合いたいと思っていて。付き合い始めてからは、悠介君といつまでも一緒にいたいって思っているよ」
「……僕も同じようなことを考えてた」
栞と恋人として付き合いたい。
いつまでも一緒にいたい。
こんな気持ちにさせてくれたのは栞が初めてだし、同じような気持ちにさせる人はきっと二度と現れないと思う。
「だから、クラスメイトから悠介君と篠宮さんの写っている写真を見せられたとき、とてもショックだった。悠介君が私の側から離れちゃうって。そんなの嫌だって思ったよ」
「ごめんね、栞。辛い想いをさせて」
「謝らないでいいよ。実際はキスしなかったんだから。それに、私がもっと積極的に悠介君に会いに行けば良かったんだから。会いたい気持ちはなくならなかったし、悠介君が悪いとは全然思わなかったから」
「そっか……」
「篠宮さんが悠介君のことが好きだって知った瞬間、私はとても素敵な人と付き合っているんだって実感できたの。そんな人と付き合っているから、今回みたいなことが起きたのかなって」
それを優しい表情で言うってことは、僕のことを全く悪く思っていないようだ。栞はとても優しい心を持っている。
「本当に……こんなに素敵だと困っちゃうな。かっこよくて、優しくて。篠宮さんが悠介君のことを好きになっちゃうのも分かるよ」
「栞……」
「……私のわがまま、聞いてくれないかな」
栞は目を潤ませながら僕に一歩近づいて、僕の手をぎゅっと握る。
「悠介君のことが好き。これからもずっと私の側にいてください」
栞のわがままは分かっていたのに、実際に言われると、初めて出会ったときや告白されたときのようにときめく。
僕の答えはもう決まっている。
「僕も栞のことが好きです。これからもずっと一緒にいよう」
「……うん」
ゆっくりと頷くと、潤んでいた栞の目からは涙が流れる。
「……泣かないで」
「これは嬉し涙。悠介君と会えなくなると思ったときもあったから」
「そうか。……もう、そんな想いはさせないよ」
僕はそっと栞のことを抱きしめる。そのことで、栞の柔らかな甘い匂いが広がる。ずっとこのままでいたい。
少しの間、僕らは抱きしめ合って無言の時間を過ごす。
「ねえ、悠介君」
「うん?」
「……ずっと一緒にいてくれるなら、キスをしてほしい。悠介君はキスしたことある? 私はまだしたことないけれど」
「僕も一度もしたことないよ」
「……じゃあ、その……初めてのキスを私としてくれませんか?」
栞はゆっくりと目を閉じて、ちょっと背伸びをする。
栞の胸の鼓動が体を通じて僕に伝わってくる。僕も緊張してくるな。でも、僕も栞とキスがしたい。
そんな気持ちに身を任せ、僕はそっと栞とキスをした。
ほんの少しの間だけど、栞の唇の柔らかさがしっかりと感じられる。あと、好きな人とのキスって、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるんだ。
唇を離すと、栞は恍惚とした表情になっていた。
「……キスって気持ちいいね。悠介君だからかな」
「僕はそうであってほしいな」
「私も。でも、キスするとますますドキドキしちゃう。こんなに密着していると、悠介君にバレちゃっているんだろうね。恥ずかしい……」
栞は顔を僕の胸に埋める。
栞の言うとおり、キスをしてから栞の鼓動がますます早くなっている。恥ずかしがっている栞はとても可愛らしい。
「ねえ、今度は私からしてもいい?」
「……いいよ」
僕がそう言うと、すぐに栞はキスをしてきた。しかも、さっきよりも長い。
「キスって凄いね。何度もしたくなっちゃう。それに、悠介君になら私、何をされてもいいっていうか……」
「えっ?」
僕がそう反応すると、栞ははっとした表情になり、
「えっと、私の部屋で2人きりだからっていって、そ、その……ベッドの上でキス以上のことをしたいっていかがわしい気持ちになったわけじゃないから!」
それにしては随分と具体的な内容だった気がするけど。本当にそう思っていないのかな。それとも、思っているけど必死に隠そうとしているのか。このあたふたした様子だと、後者のような気がしてならない。
「あ、明日から4連休だよね。今からどこかに行くか決めよう!」
「うん、そうだね」
そういえば、明日から4連休だったな。最高の形で迎えられそうで良かった。やっぱり連休は楽しい気持ちで過ごしたい。
「この4連休の間に悠介君の家に行きたいな」
「是非来てよ。僕の家族にも栞のことを紹介したい」
「何だか照れちゃうな。一日はそれで決まりかな。他の日は――」
今回のことで危うく、僕と栞は離ればなれになるところだった。ただ、何とか栞とはこれまで通り恋人関係でいられることになった。むしろ、今回のことを通して僕らの仲が深まった気がする。
まだまだ、僕と栞は恋人としての道を歩き始めたばかりだ。
今回のような困難がこれからいくつも待ち受けているかもしれない。でも、栞となら絶対に乗り越えられる。それは自信を持って言える。
部屋に差し込む茜色の日差しは、いつもより温かく優しく感じられるのであった。
恋人編 おわり
The Connection-Re:Love-に続く。
高津田駅から栞と手を繋ぎながら歩いて7、8分。閑静な住宅街の中で、栞の歩みが止まる。
僕らの横には立派な一軒家が建っている。ここが栞の……あっ、『日高』って彫刻されている表札があった。やっぱり、ここが栞の家なんだ。
「ここだよ、悠介君」
平日の夕方だからいない可能性が高そうだけど、栞のお父様がいたらどうしよう。それを考えただけでも冷や汗が出てくる。
「今までの中で一番緊張しているように見えるけど、どうしたの?」
「……親戚以外では、女の子の家に上がるのが初めてだから緊張してる」
僕がそう言うと、栞はくすっと笑う。
「何だか意外。篠宮さんと仲良くしているし、一度は女の子の家に遊びに行ったことがあると思ってた」
「そんなことないよ」
気兼ねなく話せる女子って、親戚以外だと栞と亜実くらいしかいない。高校に入学してからは彼女達以外の女子と少しずつ話せるようになったけど。それは栞のおかげでもあるし。そんな僕にとって、女の子の家に上がるのはかなり緊張することなんだ。
「でも、緊張する悠介君、可愛いなぁ。いつもクールで落ち着いているから」
「そ、そうかな」
落ち着いていると言われたことはあるけど、クールだと言われたことはないな。それよりも、緊張している僕が可愛いって思うのか。栞ってSなのかもしれない。
「何かあっても私がいるから大丈夫だよ。さっ、行こう!」
「うん」
付き合い始めてから1週間ちょっとだけど、あの頃から随分と頼もしくなったな。今回のことで、また心が通い合えたからだろうか。
僕は栞に手を引かれたまま、彼女の家にお邪魔する。
「ただいま~」
「お邪魔します」
すると、廊下の突き当たりから1人の女性が現れ、駆け足で僕達の方にやってくる。黒髪のロングヘアが印象的な綺麗な方だけど、栞のお姉さんなのかな? あと、ちょっと息苦しそうだけど大丈夫か?
「そんな慌ててどうしたの? お母さん」
「だって、男の子の声がしたから……」
お、お母さんだったのか。随分と若々しい方だな。
「お母さん、彼が私の彼氏の新倉悠介君」
「初めまして。八神高校1年の新倉悠介です。先日から、栞さんとお付き合いしています。彼女と同じ1年です」
「初めまして。栞の母の恵美です。あなたの話はいつも栞から聞いているわ。男の子が苦手な栞から、最初にあなたの話が出たときは驚いたけれど。きっと、新倉君を見たときに一目惚れしちゃったのね」
栞のお母さん……恵美さんはニヤニヤしながら僕達を見ている。
一目惚れだったのは知っていたけれど、栞は男の人が苦手だったのか。天羽女子に進学した一つの理由なのかも。
「最近は元気がないからお父さんが怒っていたけれど。栞のことを悲しませるとはどういう人だって」
「……本当に申し訳ないです」
お父さんが怒っているとは……これはまずい状況ではなかろうか。
「そのことはもう大丈夫だよ、お母さん。悠介君が学校まで迎えに来てくれたから……」
栞は嬉しそうな表情でそう言った。迷惑かもしれないと不安だったので、そういう風に言ってくれるのは僕も嬉しい。
「あらあら、栞は愛されているのね。そんな2人の邪魔をすると悪いから、これからゆっくりとお買い物をしてこようかな」
「あうぅ……」
栞は両手で赤くなった顔を隠す。
「こういう感じの子だけど、これからも栞のことをよろしくね」
「僕でよければいつまでも」
「ふふっ、今のことをお父さんに話しておかないと。お父さん、栞に溺愛しているところがあるから」
「そ、そうですか」
「私達が上手に言っておくから安心してね」
「ありがとうございます」
こんなに可愛い娘だと溺愛してしまうのは納得かな。
少なくとも、恵美さんには好意的に受け入れられているようだ。ただ、栞のお父さんはここ2、3日のことで僕に対する印象が悪くなっているか。でも、恵美さんの口ぶりからして、今回の一件が発覚するまでは大丈夫だったみたい。
「ゆ、悠介君! 私の部屋に行こう!」
「分かった。お邪魔します」
「ごゆっくり~」
栞の家に上がり、僕は再び彼女に手を引かれて彼女の部屋に行く。
僕が想像していたよりも、栞の部屋の中はシンプルな雰囲気。机の上に置かれているものや本棚に入っている本などを見ると、女の子らしさは感じられる。
「ごめんね。お母さんが色々と言ってきて」
そう言う栞の呼吸はちょっと荒かった。はあっ、はあっ、と声が聞こえる。恋人の僕を自分の家へ連れてくることに緊張していたのかもしれない。
僕の方に振り向いた栞の顔は赤くて、少し汗ばんでいた。栞は恥ずかしそうに、照れくさそうに、僕に向かってはにかむ。
「気にしなくていいよ。僕のことを話していたみたいだね」
「……うん。気付くといつも悠介君のことばかり話してた。電車の中で悠介君と出会ったあの日から」
「そっか」
「あのときから、悠介君と付き合いたいと思っていて。付き合い始めてからは、悠介君といつまでも一緒にいたいって思っているよ」
「……僕も同じようなことを考えてた」
栞と恋人として付き合いたい。
いつまでも一緒にいたい。
こんな気持ちにさせてくれたのは栞が初めてだし、同じような気持ちにさせる人はきっと二度と現れないと思う。
「だから、クラスメイトから悠介君と篠宮さんの写っている写真を見せられたとき、とてもショックだった。悠介君が私の側から離れちゃうって。そんなの嫌だって思ったよ」
「ごめんね、栞。辛い想いをさせて」
「謝らないでいいよ。実際はキスしなかったんだから。それに、私がもっと積極的に悠介君に会いに行けば良かったんだから。会いたい気持ちはなくならなかったし、悠介君が悪いとは全然思わなかったから」
「そっか……」
「篠宮さんが悠介君のことが好きだって知った瞬間、私はとても素敵な人と付き合っているんだって実感できたの。そんな人と付き合っているから、今回みたいなことが起きたのかなって」
それを優しい表情で言うってことは、僕のことを全く悪く思っていないようだ。栞はとても優しい心を持っている。
「本当に……こんなに素敵だと困っちゃうな。かっこよくて、優しくて。篠宮さんが悠介君のことを好きになっちゃうのも分かるよ」
「栞……」
「……私のわがまま、聞いてくれないかな」
栞は目を潤ませながら僕に一歩近づいて、僕の手をぎゅっと握る。
「悠介君のことが好き。これからもずっと私の側にいてください」
栞のわがままは分かっていたのに、実際に言われると、初めて出会ったときや告白されたときのようにときめく。
僕の答えはもう決まっている。
「僕も栞のことが好きです。これからもずっと一緒にいよう」
「……うん」
ゆっくりと頷くと、潤んでいた栞の目からは涙が流れる。
「……泣かないで」
「これは嬉し涙。悠介君と会えなくなると思ったときもあったから」
「そうか。……もう、そんな想いはさせないよ」
僕はそっと栞のことを抱きしめる。そのことで、栞の柔らかな甘い匂いが広がる。ずっとこのままでいたい。
少しの間、僕らは抱きしめ合って無言の時間を過ごす。
「ねえ、悠介君」
「うん?」
「……ずっと一緒にいてくれるなら、キスをしてほしい。悠介君はキスしたことある? 私はまだしたことないけれど」
「僕も一度もしたことないよ」
「……じゃあ、その……初めてのキスを私としてくれませんか?」
栞はゆっくりと目を閉じて、ちょっと背伸びをする。
栞の胸の鼓動が体を通じて僕に伝わってくる。僕も緊張してくるな。でも、僕も栞とキスがしたい。
そんな気持ちに身を任せ、僕はそっと栞とキスをした。
ほんの少しの間だけど、栞の唇の柔らかさがしっかりと感じられる。あと、好きな人とのキスって、こんなにも幸せな気持ちにしてくれるんだ。
唇を離すと、栞は恍惚とした表情になっていた。
「……キスって気持ちいいね。悠介君だからかな」
「僕はそうであってほしいな」
「私も。でも、キスするとますますドキドキしちゃう。こんなに密着していると、悠介君にバレちゃっているんだろうね。恥ずかしい……」
栞は顔を僕の胸に埋める。
栞の言うとおり、キスをしてから栞の鼓動がますます早くなっている。恥ずかしがっている栞はとても可愛らしい。
「ねえ、今度は私からしてもいい?」
「……いいよ」
僕がそう言うと、すぐに栞はキスをしてきた。しかも、さっきよりも長い。
「キスって凄いね。何度もしたくなっちゃう。それに、悠介君になら私、何をされてもいいっていうか……」
「えっ?」
僕がそう反応すると、栞ははっとした表情になり、
「えっと、私の部屋で2人きりだからっていって、そ、その……ベッドの上でキス以上のことをしたいっていかがわしい気持ちになったわけじゃないから!」
それにしては随分と具体的な内容だった気がするけど。本当にそう思っていないのかな。それとも、思っているけど必死に隠そうとしているのか。このあたふたした様子だと、後者のような気がしてならない。
「あ、明日から4連休だよね。今からどこかに行くか決めよう!」
「うん、そうだね」
そういえば、明日から4連休だったな。最高の形で迎えられそうで良かった。やっぱり連休は楽しい気持ちで過ごしたい。
「この4連休の間に悠介君の家に行きたいな」
「是非来てよ。僕の家族にも栞のことを紹介したい」
「何だか照れちゃうな。一日はそれで決まりかな。他の日は――」
今回のことで危うく、僕と栞は離ればなれになるところだった。ただ、何とか栞とはこれまで通り恋人関係でいられることになった。むしろ、今回のことを通して僕らの仲が深まった気がする。
まだまだ、僕と栞は恋人としての道を歩き始めたばかりだ。
今回のような困難がこれからいくつも待ち受けているかもしれない。でも、栞となら絶対に乗り越えられる。それは自信を持って言える。
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