片道15分の恋人

桜庭かなめ

文字の大きさ
44 / 51
逆・恋心編

4月16日(水)

しおりを挟む
 今日もいつもの午前7時27分発、各駅停車八神行きを待つ。もちろん、先頭車両の一番後ろの扉が止まる場所で。平日の朝がこんなにも楽しみだなんて。
 定刻通りに電車が到着すると、最後に乗って扉のすぐ近くに立つ。
 昨日、電車を降りてからずっと、今日は彼と何を話そうかワクワクしている。彼と話すことができたのが本当に嬉しくて楽しかったから。
 鳴瀬駅に到着すると、今日もいつもの場所に彼が立っていた。そのことが嬉しく、扉が開くと彼に小さく手を振った。

「おはようございます。今日もここで待っていましたね」
「僕のお気に入りの場所ですからね」

 お気に入り。
 その言葉を聞いてとても安心する。よほどのことがない限り、この場所に乗っていれば彼と会えると分かって。本当に嬉しい。
 今日は、彼は私の左隣に立った。
 昨日は彼から声をかけてきてくれたんだ。今日は私の方から話題を振らなきゃ。

「その制服って八神高校の制服ですよね」
「ええ、そうですよ」
「同じ中学だった友達の中に、八神高校に進学した人がいたので見覚えがあったんです」

 思い出せば、私の同じ中学から八神高校に進学した女の子がいたんだよね。
 そうだ、私の通っている高校がどこなのか訊いてみようかな。

「私はどこの高校に通っているか分かりますか?」
「分かりますよ。天羽女子高校でしょう?」
「正解です」

 私のことを一つ知ってくれていて嬉しいな。ささいなことなのに、彼が関わると途端に嬉しさや愛おしさに変わる。

「やっぱり、天羽女子高校に進学したお友達がいたから分かったんですか?」
「そうですね。中学の同級生に天羽女子に進学した女子がいて」

 なるほど、私と同じ理由なんだ。
 天羽女子に通っている知り合いの女の子がいるんだ。まあ、女の子の知り合いの1人や2人いても……べ、別に気にしないけれどね!

「やっぱりいますよね、天羽女子に進学する女の子は」
「僕の知る女子は、みんな一度は天羽女子に行きたいって言っていましたね」
「私の中学校でもそうでした。ところで、八神高校はどんな雰囲気なんですか? 確か私立の共学でしたよね」
「ええ、私立だけあって校舎が凄いです。クラスの雰囲気は共学だからか、中学のときとあまり変わりない感じですね」
「なるほどです」

 私は高校になって初めて女子校に通うから、新鮮な雰囲気かな。あと、天羽女子も校舎がなかなか凄い。

「そういえば、女子校ってどんな雰囲気なんですか? 僕のイメージだとみんな上品で、クラスに一人くらい王子様的なポジションの女子がいて……」
「ふふっ」

 やっぱり、男の子ってそういうイメージがあるのかな。漫画やドラマで描かれる女子校は個性的な生徒が登場することが多いし、どうしてもそういうイメージになってしまうのかも。

「確かに、女子に好かれそうな子はクラスにはいますね。みんな結構普通ですよ。可愛い子ばかりです。ただ、男の子がいないからなのか開放的になっている子はいるかな……」

 ワイシャツの第2ボタンまで開けて、肌を大胆に露出させたり、胸の谷間を普通に見せたりしている子とか。

「1年生ではまだいませんけど、1学年上では学内公認のカップルが何組かあるそうです。それが女子校特有かもしれませんね」
「つまり、女子同士のカップルができるんですか」
「そうですね。一番有名なカップルはとってもかっこいい金髪の女の子と、とっても可愛い茶髪の女の子でした」

 茶髪の女の子の方は、茶道部でお世話になっている先輩のことなんだけど。その先輩が彼女さんと一緒にいるときはとても幸せそうにしていて。
 私もいつか先輩達のようになりたいなって思っている。できれば、隣に立っている彼と。

「……あの。もしかして、男子よりも女子の方が……ってことはあるんですか? まあ、人を好きになることは自由なので、僕は同性でもいいと思いますけど」

 彼は爽やかな笑みを浮かべながら、そんなことを訊いてくる。
 こ、こういうことを質問するってことは、もしかして私のことが恋愛的な意味で気になっているのかな。いやいや、それは自意識過剰か。
 ううっ、何だか恥ずかしくなってきて、顔が熱くなってきたよ。

「もちろん、友人としての好きになることはあると思いますけど、恋愛対象になるのはやっぱり男の子……でしょうか」


 それでも、私は自分の考えを正直に伝えた。彼の目をしっかりと見ながら。
 私が彼の目を見つめているからか、彼も私のことを見つめてくれる。何だか、とっても気持ちのいいドキドキが私を包み込んできて。

『まもなく、鏡原、鏡原。お出口は左側です』

 そのアナウンスで我に返った。

「きょ、今日もあっという間でしたね。もう降りないと」

 私は慌ててスクールバッグを肩にかけた。

「やっぱり誰かと話すと15分なんてあっという間ですね。楽しいから……かな。ま、また明日もお話ししましょうね!」

 そう言ったときには電車が鏡原駅に到着していた。私は急いで電車から降りる。
 彼が私を見つめてきたとき、凄くドキドキした。どうして、私をあんなに見つめてきたんだろう。もしかして、本当に私のことが気になっているのかな。

 彼の気持ちがとても気になってきた。

 だけど、焦らずに彼ともっと話してみよう。その中で、彼の気持ちを少しずつ聞いてみることにしよう。そう心に決め、高校に向かって歩き始めるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ
恋愛
 桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。  しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。  風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、 「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」  高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。  ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!  ※特別編11が完結しました!(2025.6.20)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

処理中です...