片道15分の恋人

桜庭かなめ

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逆・恋心編

4月22日(火)

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 今日もいつもの午前7時27分発、各駅停車八神行きを待つ。もちろん、先頭車両の一番後ろの扉が止まる場所で。
 電車が到着すると、最後に乗って扉のすぐ近くに立つ。
 時刻表通りの時刻で電車が発進する。3分後には鳴瀬駅に到着するはず。
 今日、彼はいつもの場所で待ってくれているかな。ううん、絶対にいてほしい。彼からの告白の返事を書いた手紙を必ず渡したいから。何よりも、会いたいから。
 高津田駅を出発してから3分。電車は鳴瀬駅へと到着する。
 ホームのいつもの場所に、彼は――。

「嘘、だろ……」

 扉が開くとそこには彼が立っていた。私がいることに驚いたのか、そんな言葉が聞こえた。

「……おはようございます」

 私がそう言っても、彼は目を見開いて立ち尽くしている。

「あ、あの! 出発しちゃいますよ!」

 発車メロディが鳴っても彼が乗らないので私がそう言うと、

「えっ?」

 まるで我に返ったように、彼は慌てて電車に飛び乗った。私がここに立っていることが本当に信じられないと思っていたのが分かる。そうだよね、昨日乗らなかったら、しばらくは私がここに乗らないって思うもんね。
 彼が側にいるとドキドキする。
 でも、昨日はここに乗らなかったことが気まずくて。彼のことをチラチラと見る形になってしまう。それに対して、彼は私のことをじっと見ている。
 まずは昨日のことをちゃんと謝らなくちゃ。

「あ、あの……昨日はごめんなさい。色々あって、この場所に乗ることができなくて。私から、月曜日もまた話そうって言ったのに……」
「……気にしないでください。こうして、今日……ちゃんと会えたんですから。僕は嬉しいです」

 嬉しいという言葉がとても嬉しかった。彼の笑顔からは今日、私と会えて嬉しい気持ちがとても伝わってくる。だからこそ、昨日乗らなかったことが心苦しく、申し訳ないと思う。
 いつもはつり革を掴むけれど、今日は彼のブレザーの袖を掴む。
 彼と話したい気持ちはいっぱいある。
 けれど、彼からの告白の返事がまだであることや、昨日ここに乗らなかったこともあって、なかなか口が開かなかった。
 それでも、彼と会うことができて、彼の側にいることがとても嬉しくて。だから、停車する度に彼にくっついたりもして。こんな時間がずっと続けばいいなって思う。

『まもなく、鏡原、鏡原。お出口は左側です』

 気付けば、今日も彼と一緒にいられる時間が終わりを迎えようとしていた。
 このまま電車を降りちゃいけない。私は彼に手紙を渡すって決めたんだから。それだけでもやり遂げないと。

「あ、あの……」

 私はスクールバッグから手紙を取り出して、彼に握らせた。

「私が鏡原駅で降りて、電車が動き出してから読んでください」
「分かりました」

 良かった、受け取ってくれて。
 彼が手紙なら私も手紙。彼と同じように、鏡原駅を出発してから読んでほしいと言った。
 鏡原駅に停車すると、私は彼に軽く頭を下げて、電車を降りた。
 電車がゆっくりと鏡原駅を出発した。今頃、彼は私の渡した手紙を読んでくれているかな。彼に渡した手紙には、

『告白の手紙、読みました。とても嬉しいです。
 でも、返事は少し待ってくれませんか。金曜日からずっとあなたのことが頭から離れないけれど、あなたのことをちゃんと考えて、付き合うかどうか決めたいから。
 あと、私的にはメガネを外すともっと素敵になるんじゃないかな、と思います。一度でいいから見てみたいな』

 ということが書いてある。
 気持ちはもちろんOK。
 でも、ちゃんと「私と付き合ってください」って直接口で伝えたいと思っている。そうした方が気持ちにけじめを付けられそうだから。それまで待っていてほしいと手紙に書いた。
 メガネの件については、単純にメガネを外した彼の顔を見てみたいから。メガネを外したら絶対にかっこいいはず。
 この手紙を読んで、彼が離れてしまうようなことにあっても後悔はしない。だって、一方的にわがままを言ってしまっているんだから。

「でも、待ってくれるといいな」

 それでも、優しい彼なら待ってくれるはず。そんな甘えた気持ちが私の心の中には居座っていて。
 だからこそ、そんな気持ちに負けないように、付き合ってくださいと言える勇気を早く付けなくちゃ。
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