異星人王女とのまったりラブライフ

桜庭かなめ

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第47話『ふるさと』

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 7月21日、日曜日。
 ゆっくりと目を覚ますと、部屋の中がうっすらと明るくなっていた。昨日は結構早めに寝たけれど、朝までぐっすりと眠ったのか。

「うん……」

 おかしいな。昨日はベッドには俺一人しか寝ていないのに、誰かの温かな吐息をはっきりと感じる。あと、温もりや柔らかさを右腕から直接感じている。そちらの方を見てみると、美夢が俺の右腕を抱きしめながらぐっすりと眠っていた。

「エリカちゃんとの子供には耳としっぽが生えているんだね、お兄ちゃん……」

 何という夢を見ているんだ、美夢は。妹達にはエリカさんのことが好きであると話したので、そのことが夢に影響しているのだろう。
 ただ、地球人とダイマ星人の間に子供が産まれたら、その子は耳やしっぽが生えているのだろうか。それについては気になるな。

「リサちゃんとの子供には耳としっぽはついていないんだね、お兄ちゃん……」
「リサさんとの間にも子供がいるのか……」

 夢の中の俺は何をやっているんだ。1人に絞れ。
 リサさんとの子供には耳やしっぽは生えていないのか。多分、実際にどうなるか分からないから、耳やしっぽについてランダムなんだろうな。

「うんっ……」

 有希のそんな声が聞こえ、彼女はゆっくりと体を起こした。

「おはよう、有希」
「……おはよう、兄さん。あっ、姉さんったらいつの間に」
「久しぶりに一緒の部屋に寝たから、ベッドで寝たくなったんだろう」
「……かもね。先週、連絡をもらってから姉さんはずっと嬉しそうだったし」
「そうか。兄ちゃんのことが好きなのはいいけれど、適度な兄離れをしてほしい……と思ったけど、本当はできているんだろうな」

 正直、エリカさんが俺にプロポーズしたことや、俺が彼女に好意を抱いていることに美夢はとても嫌がると思っていた。だけど、実際はとても嬉しそうにいて、エリカさんに告白することの応援までしてくれている。

「兄妹の中で一番、兄ちゃんが子供かもしれないな」
「……そうかなぁ? 兄妹だけじゃなくて、今、家にいる6人の中で兄さんが一番大人に思えるけれど」
「……そうかい」
「うんっ……」

 すると、美夢がゆっくりと目を開ける。俺と視線が合うと、美夢は嬉しそうな表情を浮かべる。

「おはよう、お兄ちゃん、有希」
「おはよう、美夢」
「おはよう、姉さん」
「夜中にお手洗い行って戻ってきたら、お兄ちゃんの香りに誘われてベッドで眠っちゃったんだよね。そのおかげかいい夢が見ることができた気がする」
「それは良かったな」

 俺がエリカさんとリサさんの間に子供を作っていたことは伏せておこう。2人がどんな反応を示すか恐いし、高確率でエリカさん達にも話しそうだから。


 リサさんの作った朝食を6人で食べながら、今日は何をするのか話すことに。
 すると、エリカさんが、彼女の乗ってきた宇宙船が着陸した場所に行くことを提案したので、お土産を実家に持っていくことを兼ねて日帰りで帰省することに決まった。


 午前10時過ぎ。
 家族へのお土産を持って、俺達はエリカさんのテレポート魔法で俺の実家に向かう。

「3ヶ月ぶりくらいか……」

 ここに来るのもゴールデンウィーク以来。あのときは何とも思わなかったのに、20年前の流れ星の正体である宇宙船に乗ったエリカさんと一緒だと、結構感慨深くなる。ちなみに、例の山は家の玄関前からはっきりと見える。

「立派なご実家ですね、宏斗先輩。自然がいっぱいのところにあるんですね」
「そうだよ、愛実ちゃん。都心の方にも電車を乗り継いで1時間半くらいで行けるけど、のどかなところだよ。ちなみに、20年前の夏に、あの山にエリカさんが乗ってきた船が着陸したんだ」
「へえ……」
「じゃあ、両親に旅行と出張のお土産を渡しに行きましょうか」

 3ヶ月ぶりに、俺はエリカさん達と一緒に実家に帰る。
 リビングを覗くと、両親が冷たい麦茶を飲んでゆっくりしていたところだった。
 両親にお土産を渡そうと思ったら、エリカさんやリサさんのことについて次々と質問された。特に母親は2人がとても可愛いからと興奮していた。それにはさすがにエリカさん達も苦笑い。
 俺にプロポーズをして返事待ちであると昨日エリカさんに話されたそうで、実際のところどうなんだと父親に訊かれた。実際には心決めているけれど、みんなの前で言う勇気が出なかったので、今も考えているところだと答えた。すると、

「宏斗なら自分とエリカさんの納得できる決断ができるだろう。その決断に父さんと母さんは支持するよ。エリカさんは宇宙人ではあるが、いいお嬢さんだろうから」

 父さんは落ち着いた口調でそう言ってくれた。その後に俺の肩に手を置き、口元だけ笑った。もしかしたら、父さんも俺の本心に気付いているのかも。

「……ありがとう、父さん。俺達は近くの山に行ってくる」
「分かった。いってらっしゃい。お土産、さっそく母さんと一緒にいただくよ」
「ああ。来月のお盆くらいの時期に泊まりに来るよ」
「分かった」

 さすがに、そのときまでにはエリカさんに想いを伝えないと。
 俺達は実家を後にして、エリカさんの宇宙船が到着した近所の山へと向かう。山道の入り口までは、小学1年生の俺で15分くらいだったので、大人になった今なら10分ちょっとで着くだろう。
 近所を歩いていると、子供の頃のことを思い出すな。特に高校生くらいまで。そんなときもずっと、エリカさんは近所の山に着陸した宇宙船の中で眠っていたなんて。今考えると面白い話だ。

「どうしたの? 急に笑って」
「故郷を歩いているので、色々と思うことがありまして」
「帰省するとそんなことってありますよね。去年の年末年始に帰省したときに、故郷っていいなと思いました」
「社会人になるとより一層思うよね。……ところで、エリカさんはここら辺で俺のことを聞き込み調査したんですよね?」
「そうだよ。それで……お腹が空いたから、あそこのお店でそばを食べたの」

 指さした先は、昔から家族で何度も食べに行ったことのあるおそば屋さんだった。あそこのそばやうどんはかなり美味しいんだよな。

「私達も何度も食べたことがあるからか、エリカちゃんが食べていたなんて不思議だね」
「そうね、姉さん。あたし達がそうしている間、ずっとエリカさんは宇宙船の中で眠っていたからまた不思議な感じ」
「それ言えてる」
「……ううっ、20年間が長かったんだって今一度思い知ったよ……」

 エリカさんは恥ずかしそうな表情を浮かべて、俺の腕を抱きしめてくる。美夢と有希の悪意なき言葉だからこそ、エリカさんの心により刺さってしまうのだろう。

「ただ、目覚めてからエリカ様は地球の調査をして、しっかりと女王様にご報告されていますよね」
「主をフォローするなんてさすがはメイドさんだね、リサちゃん」
「……主の身の回りの世話をするだけでなく、叱咤激励するのもメイドの務めですから」
「なるほどね。……リサちゃんがいれば、20年も眠ることはなかったんじゃない?」
「……聞こえてるよ、愛実ちゃん」

 ううっ、とエリカさんは俺の肩に頭を付けて泣いている。こういうことって小さな声で言っても、意外と聞こえてしまうものだよな。
 そんなことを話していたら、山道の入り口が見えてきた。ここに来るのも何年ぶりかな。10年くらい行っていないと思う。

「エリカさん。この山に宇宙船が着陸したんですよね」
「そうだよ。何かのときのために、魔法を使って宇宙船の着陸した場所に印を付けておいたから。行こう」

 そう言って、俺はエリカさんに手を引かれる形で山道を歩き始める。
 段々と当時の高揚感が蘇ってくるな。流れ星が落ちたことのドキドキと、それを見つけようという野心。友達と一緒にこの山道を行ったり来たりしたっけ。

「山道と言っていましたけど、結構整備されているんですね、先輩」
「そうだね。今の俺達みたいに散歩道として使う人もいるし、頂上まで行くと町の風景を一望できる広場もあるから、ハイキングやピクニックの場所としても人気なんだよ」
「そういえば、あたしが小さい頃に家族全員でピクニックして、頂上でお昼ご飯を食べたのを覚えてる」
「あったね。そのときのお弁当は有希やお母さんと3人で作ったよね」
「ふふっ、故郷ですから思い出もたくさんあるのですね。私も昨日は母の姿も見ましたし、ダイマ王星が恋しくなります」

 もし、エリカさんやリサさんがご実家に帰省するときは、俺も行ってみたいな。俺の場合は壮大な宇宙旅行になるけれど。
 思い返せば、この山は家族でも行ったし、小学生のときに遠足で行ったこともあったな。その間もずっとエリカさんはこの山で眠っていたんだな。

「ここから脇道に入るよ」

 山道を歩き始めてから数分ほど。
 俺達はエリカさんについて行く形で山道から逸れて、山の中へと入る。雑草は生えているけれど、歩くには全く問題はない。そういえば、こういった山道から外れた場所も色々と探したっけ。
 やがて、エリカさんは立ち止まる。そこには他の木よりも太く立派な大木があった。少しではあるけど視界も開けていて、街の様子を確認することもできる。

「到着。この下に宇宙船があって……20年間、私はずっと眠ってたの。着陸したときに、安全システムの一つで、自動的にこの木に監視カメラを付けておいたんだ。地球人には見えないようにして」
「それで、ここに幼い頃の宏斗様が探しに来ていたと」
「うん。カメラに映った最初の地球人が宏斗さんだったの。他の子も映っていたけれど、宏斗さんが誰よりも可愛く感じたんだよね」
「それをきっかけに、宏斗先輩のことを探し始めたんだね」
「うん」

 ということは、エリカさんと俺はこの場所から始まったんだ。
 20年前は山に落ちたものを俺は見つけることができなかった。でも、20年越しにここでエリカさんと会うことはできたんだ。

「20年経ったけれど、こうして憧れの人と一緒に来ることができて良かったよ」
「……そうですか。俺もここに来て良かったです。当時の俺なりに、遥か昔の予言者の言葉に興味を持って、流れ星がこの山に落ちたことを信じて良かった。だからこそ、20年経って、エリカさんやリサさんに出会えたと思いますから」
「……そうだね、宏斗さん」
「私も例の計画もありますし、エリカ様は地球にいますから、いつかは地球に行く予定でしたが、こういう形で地球に来て良かったと思います。宏斗様のお宅で3人で生活するのは楽しいですから。そういう意味では、エリカ様が長い間眠ってもらって良かったかもしれませんね」
「本当にそう思ってるの? バカにしてない?」
「とんでもございません。……ふふっ」
「あっ、笑った! やっぱりバカにしてるー!」

 そう言って、エリカさんはリサさんの両耳をくすぐり、お返しと言わんばかりにリサさんはエリカさんのしっぽを握る。二人とも急所を触られているけれど、何だか楽しそうに見えた。愛実ちゃんや美夢も有希も微笑ましく見ていた。


 美夢と有希が加わって、今週末も思い出深い休日になったな。その中でエリカさんのことが好きだと気付くこともできたし。打上花火を見るあのときのエリカさんを思い出すと、今でもドキドキする。
 好きな人のことを想うと気持ちが温かくなって。でも、告白しようか考えるとドキドキして何もできなくて。好きな人がすぐそばにいるからこそ、何とも言えない気分にもなる。愛実ちゃんもこういう感じだったのかな……と思いながら、休日は静かに終わるのであった。
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