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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
第24話『ロープウェイ』
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鍾乳洞から羽崎山ロープウェイまでは車でおよそ30分。
山道を登っているので、ロープウェイ乗り場に近づくにつれて標高が高くなっていく。パンフレットに書いてあった情報だと確か、ロープウェイで頂上まで行くと、標高1000m以上のところに行けるとのこと。
「上からの景色もいいね。広いよね」
「そうですね。でも、一番はメガネをかけた智也さんの横顔ですが」
「ははっ、そっか」
鍾乳洞を出発してからずっと、助手席の方から美来の熱い視線が送られている。たわわなアイマスクの後にした突然のキスでスイッチが入っちゃったのかな。
「美来はずっと見てるよね、僕のこと」
「はい。智也さんが運転するときの真剣な表情。そして、赤信号で運転を休んでいるときの柔らかな表情のギャップがたまらないんです」
「……なるほどねぇ」
ギャップがたまらないって言われたこと、たぶん人生初。
僕のことを陰で見守っていたとき、もしかしたらこんな感じで僕のことをじっと見ていたのかもしれないな。
そんなことを考えながら運転をしていると、羽崎山ロープウェイまであと500mという標識が見える。
「もう少しで到着するからね」
「はーい」
返事はするものの、依然として美来は僕のことをじっと見続けている。旅行に来たんだし、もうちょっと周りの景色を楽しんでもいいんじゃないかと思うけど。車から降りたらたっぷりと堪能すると決めているのかな。
正午前、僕が運転する車はロープウェイ乗り場の駐車場に到着した。
先ほどと同じように駐車をするとき、後ろに振り向いたときの美来はとても興奮しているように見えた。どうやら、彼女がキュンとするポイントの一つはこれみたいだ。
「さっ、到着したよ」
「はい。周りには自然がいっぱいなので空気が美味しいですね」
「そうだね」
さっきの鍾乳洞と比べると、さすがに人は少ないかな。でも、それなりの数の車が駐まっているので、ロープウェイで上に上がったところにはたくさん人がいると思われる。
ロープウェイが見えたので、ケーブルを辿ってみてみると。
「結構高いところまで行くみたいだね」
「向こう側は豆粒くらいにしか見えませんね」
「そうだね。本当に小っちゃいね」
メガネをかけていなかったら全然分からなかったんじゃないだろうか。
「忘れ物はないかな」
「はい。今回はカーディガンを着なくても大丈夫でしょう」
「そうだね」
ただ、ノースリーブの縦セーター服姿の美来が可愛らしいからか、男女問わずこちらを見てくる人が多いな。鍾乳洞のときは割とすぐに中に入ったし、薄暗かったので周りからの視線はあまり感じなかった。美来がとても魅力的な女の子なのだと改めて思う。
「美来、僕から離れないでね」
「もう、何を言っているんですか。言われなくても智也さんの側からは離れませんよ。むしろ、離れそうになったら私から近づいていくくらいです」
「……分かっているけれど、美来からその言葉を聞きたかったんだ」
「ふふっ、可愛いですね」
そう言うと、美来は僕の手をぎゅっと掴んで、
「さっ、行きましょう!」
「そうだね」
美来の手から温もりを感じ、彼女の楽しげな笑みを見れば……そんな心配をする必要はないということは容易に分かった。
受付で往復分のチケットを買い、乗り場に着いたときにはあと3分でロープウェイが発車するところだった。既に10人くらいの人が並んでいる。
「いいタイミングでしたね」
「そうだね」
といっても、ロープウェイは10分に1回は出ているんだけどね。でも、すぐに行けるのはいいかな。
受付でもらったパンフレットを見てみると、このロープウェイおよそ800mの高低差を10分ちょっとで上がっていくとのこと。確か、駐車場は標高500mちょっとだったから、上まで行くと1300mくらいか。
やがて、上から戻ってきたロープウェイが到着し、上からのお客さんが降りた後、僕達はロープウェイに乗った。
僕達より後に来た人もいて、ロープウェイに乗った人数は20人弱。それでも、結構大きなロープウェイなので、まだまだ中には余裕がある。
『それでは、間もなく頂上に向けて発車いたします』
という女性のアナウンスが流れた後、10秒くらいでロープウェイが動き出す。
「きゃっ」
美来は僕の腕にしがみついた。
「どうしたの? 美来」
「動き出したときにちょっとビックリしちゃって」
「ははっ、そっか」
鍾乳洞でのことといい、意外と美来はささいなことで驚いてしまうタイプなのかも。普段の美来はしっかりしているので、僕よりも年上に思えてしまうときもあるけど、今日の美来は実年齢よりも幼く見えるかな。
「美来、こっちはいい景色だよ」
「綺麗ですね」
遠くには青い海が見える。その先にある水平線が丸っぽく見えるのは気のせいだろうか。あと、駐車場がもうこんなに小さいなんて。綺麗な景色だったのでスマートフォンで写真を撮った。
「あれ、美来。大丈夫? 顔が赤いけれど……」
青白ければ乗り物酔いで気持ち悪くなったのかなと疑うけど、顔が赤いってことはまさか熱が出ちゃったのかな。
「具合が悪くなったら、遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます。でも、今はそうじゃないんです。ただ、ロープウェイが動き出したときに驚いちゃったのに、智也さんはとても落ち着いていて。今も動いているので私、ちょっと緊張しているんです。でも、智也さんがいると安心できるのも事実で。それが分かったら、今度は凄くドキドキしてきちゃって……」
確かに、僕の左腕からは美来の心臓の鼓動がはっきりと伝わってくる。
「なるほどね。それで、顔が赤くなっているわけだ」
「はい。智也さんがいつも以上にかっこよく見えるんです」
「ははっ」
何だか、吊り橋効果に似ているような気がする。
あっ、でも……あれって緊張感を一緒に味わうからこそ生まれる恋愛感情だから、今の美来と僕とはちょっと違うのかな。
ただ、自分が驚いたり、緊張したりする中で落ち着いている人を見ると、その人のことがかっこよく思えるという気持ちは分かる。
しかし、見つめられながら凄くドキドキしちゃうって言われると、何だか僕までドキドキしてくるよ。僕の中だけで、このことを『ロープウェイ効果』と言うことにしよう。もし2人きりだったら、おそらくキスしていただろう。
「智也さん、絶対に離れないでくださいね。もし、離れたら……床が抜けて、下に落ちちゃうかもしれませんから」
「そんなことにはならないと思うけどな。ただ、僕は離れないから大丈夫だよ」
「……ほんと?」
上目遣いで見られながら、いつになくタメ口でそう訊かれるととても可愛く思えるな。
「もちろん、美来の側から離れない。それに、あと数分もすれば到着するから」
僕がそう言うと、美来は何も言わずにちょっと頷いて、更に僕に密着してくる。すると、彼女は微笑んだ。ちょっとは安心したのかな。
ふと、ロープウェイの中を見てみると……こっちを見てくる人が多いなぁ。家族もそうだし、カップルもそうだし。美来が僕に密着しているからかな。意外にも僕らの一番近くにいた老夫婦は一緒に外の景色を眺めていた。
「美来、とても綺麗な景色だよ。遠くにある海を見ていると落ち着くと思うよ」
老夫婦を見習って、ここからしか見ることのできない景色を楽しむことにしよう。あと数分で終わっちゃうけど、だからこそ価値があるというか。
「確かに、遠くの海を見ていると落ち着きますね」
「でしょ?」
「でも、私は……すぐ側にいる智也さんを見るのが一番落ち着きます」
「……嬉しいことを言ってくれるね」
どこにいてもブレないな、美来は。車で移動しているときと一緒で、何かの乗り物に乗っているときは僕を見ることに決めているのかな。まあ、この風景は頂上からも見ることができる景色だからなぁ。
僕は自然でいっぱいの景色を眺めることにしよう。もちろん、時々、すぐ近くにある美来の笑顔を見ながら。
山道を登っているので、ロープウェイ乗り場に近づくにつれて標高が高くなっていく。パンフレットに書いてあった情報だと確か、ロープウェイで頂上まで行くと、標高1000m以上のところに行けるとのこと。
「上からの景色もいいね。広いよね」
「そうですね。でも、一番はメガネをかけた智也さんの横顔ですが」
「ははっ、そっか」
鍾乳洞を出発してからずっと、助手席の方から美来の熱い視線が送られている。たわわなアイマスクの後にした突然のキスでスイッチが入っちゃったのかな。
「美来はずっと見てるよね、僕のこと」
「はい。智也さんが運転するときの真剣な表情。そして、赤信号で運転を休んでいるときの柔らかな表情のギャップがたまらないんです」
「……なるほどねぇ」
ギャップがたまらないって言われたこと、たぶん人生初。
僕のことを陰で見守っていたとき、もしかしたらこんな感じで僕のことをじっと見ていたのかもしれないな。
そんなことを考えながら運転をしていると、羽崎山ロープウェイまであと500mという標識が見える。
「もう少しで到着するからね」
「はーい」
返事はするものの、依然として美来は僕のことをじっと見続けている。旅行に来たんだし、もうちょっと周りの景色を楽しんでもいいんじゃないかと思うけど。車から降りたらたっぷりと堪能すると決めているのかな。
正午前、僕が運転する車はロープウェイ乗り場の駐車場に到着した。
先ほどと同じように駐車をするとき、後ろに振り向いたときの美来はとても興奮しているように見えた。どうやら、彼女がキュンとするポイントの一つはこれみたいだ。
「さっ、到着したよ」
「はい。周りには自然がいっぱいなので空気が美味しいですね」
「そうだね」
さっきの鍾乳洞と比べると、さすがに人は少ないかな。でも、それなりの数の車が駐まっているので、ロープウェイで上に上がったところにはたくさん人がいると思われる。
ロープウェイが見えたので、ケーブルを辿ってみてみると。
「結構高いところまで行くみたいだね」
「向こう側は豆粒くらいにしか見えませんね」
「そうだね。本当に小っちゃいね」
メガネをかけていなかったら全然分からなかったんじゃないだろうか。
「忘れ物はないかな」
「はい。今回はカーディガンを着なくても大丈夫でしょう」
「そうだね」
ただ、ノースリーブの縦セーター服姿の美来が可愛らしいからか、男女問わずこちらを見てくる人が多いな。鍾乳洞のときは割とすぐに中に入ったし、薄暗かったので周りからの視線はあまり感じなかった。美来がとても魅力的な女の子なのだと改めて思う。
「美来、僕から離れないでね」
「もう、何を言っているんですか。言われなくても智也さんの側からは離れませんよ。むしろ、離れそうになったら私から近づいていくくらいです」
「……分かっているけれど、美来からその言葉を聞きたかったんだ」
「ふふっ、可愛いですね」
そう言うと、美来は僕の手をぎゅっと掴んで、
「さっ、行きましょう!」
「そうだね」
美来の手から温もりを感じ、彼女の楽しげな笑みを見れば……そんな心配をする必要はないということは容易に分かった。
受付で往復分のチケットを買い、乗り場に着いたときにはあと3分でロープウェイが発車するところだった。既に10人くらいの人が並んでいる。
「いいタイミングでしたね」
「そうだね」
といっても、ロープウェイは10分に1回は出ているんだけどね。でも、すぐに行けるのはいいかな。
受付でもらったパンフレットを見てみると、このロープウェイおよそ800mの高低差を10分ちょっとで上がっていくとのこと。確か、駐車場は標高500mちょっとだったから、上まで行くと1300mくらいか。
やがて、上から戻ってきたロープウェイが到着し、上からのお客さんが降りた後、僕達はロープウェイに乗った。
僕達より後に来た人もいて、ロープウェイに乗った人数は20人弱。それでも、結構大きなロープウェイなので、まだまだ中には余裕がある。
『それでは、間もなく頂上に向けて発車いたします』
という女性のアナウンスが流れた後、10秒くらいでロープウェイが動き出す。
「きゃっ」
美来は僕の腕にしがみついた。
「どうしたの? 美来」
「動き出したときにちょっとビックリしちゃって」
「ははっ、そっか」
鍾乳洞でのことといい、意外と美来はささいなことで驚いてしまうタイプなのかも。普段の美来はしっかりしているので、僕よりも年上に思えてしまうときもあるけど、今日の美来は実年齢よりも幼く見えるかな。
「美来、こっちはいい景色だよ」
「綺麗ですね」
遠くには青い海が見える。その先にある水平線が丸っぽく見えるのは気のせいだろうか。あと、駐車場がもうこんなに小さいなんて。綺麗な景色だったのでスマートフォンで写真を撮った。
「あれ、美来。大丈夫? 顔が赤いけれど……」
青白ければ乗り物酔いで気持ち悪くなったのかなと疑うけど、顔が赤いってことはまさか熱が出ちゃったのかな。
「具合が悪くなったら、遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます。でも、今はそうじゃないんです。ただ、ロープウェイが動き出したときに驚いちゃったのに、智也さんはとても落ち着いていて。今も動いているので私、ちょっと緊張しているんです。でも、智也さんがいると安心できるのも事実で。それが分かったら、今度は凄くドキドキしてきちゃって……」
確かに、僕の左腕からは美来の心臓の鼓動がはっきりと伝わってくる。
「なるほどね。それで、顔が赤くなっているわけだ」
「はい。智也さんがいつも以上にかっこよく見えるんです」
「ははっ」
何だか、吊り橋効果に似ているような気がする。
あっ、でも……あれって緊張感を一緒に味わうからこそ生まれる恋愛感情だから、今の美来と僕とはちょっと違うのかな。
ただ、自分が驚いたり、緊張したりする中で落ち着いている人を見ると、その人のことがかっこよく思えるという気持ちは分かる。
しかし、見つめられながら凄くドキドキしちゃうって言われると、何だか僕までドキドキしてくるよ。僕の中だけで、このことを『ロープウェイ効果』と言うことにしよう。もし2人きりだったら、おそらくキスしていただろう。
「智也さん、絶対に離れないでくださいね。もし、離れたら……床が抜けて、下に落ちちゃうかもしれませんから」
「そんなことにはならないと思うけどな。ただ、僕は離れないから大丈夫だよ」
「……ほんと?」
上目遣いで見られながら、いつになくタメ口でそう訊かれるととても可愛く思えるな。
「もちろん、美来の側から離れない。それに、あと数分もすれば到着するから」
僕がそう言うと、美来は何も言わずにちょっと頷いて、更に僕に密着してくる。すると、彼女は微笑んだ。ちょっとは安心したのかな。
ふと、ロープウェイの中を見てみると……こっちを見てくる人が多いなぁ。家族もそうだし、カップルもそうだし。美来が僕に密着しているからかな。意外にも僕らの一番近くにいた老夫婦は一緒に外の景色を眺めていた。
「美来、とても綺麗な景色だよ。遠くにある海を見ていると落ち着くと思うよ」
老夫婦を見習って、ここからしか見ることのできない景色を楽しむことにしよう。あと数分で終わっちゃうけど、だからこそ価値があるというか。
「確かに、遠くの海を見ていると落ち着きますね」
「でしょ?」
「でも、私は……すぐ側にいる智也さんを見るのが一番落ち着きます」
「……嬉しいことを言ってくれるね」
どこにいてもブレないな、美来は。車で移動しているときと一緒で、何かの乗り物に乗っているときは僕を見ることに決めているのかな。まあ、この風景は頂上からも見ることができる景色だからなぁ。
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