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第9話『向日葵が家にやってきた。』
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まさか、向日葵が家に来ることになるとは。ほんの数日前まではろくに会話もせず、向日葵から舌打ちされたり、睨まれたりしていたのに。もし、向日葵が猫好きではなく、撫子が誘わなければこういう展開にはならなかっただろう。
当の本人の向日葵は……撫子と楽しそうに話しているけど、どこか緊張しているようにも見える。
「向日葵。もうすぐ家に着くよ。あと……大丈夫か? 緊張しているみたいだけど」
「し、親戚以外の男子の家に行くのは小学生以来だから。そのときも女子何人かで行ったし……」
「そうなんだ。意外だな。向日葵なら……彼氏の家とかに行ったことがあるのかと」
「……中学時代に付き合った男子はいるけど、元カレの家は一度も行ったことないわ。そもそも、1週間くらいしか付き合わなかったし」
向日葵は少し俯く。
向日葵には元カレがいたのか。今もたくさん告白されているし、元カレとも告白されたのがきっかけで付き合うことになったのかな。
ただ、1週間で別れてしまうとは。何があったのだろうか。今の向日葵を見ていると、彼女が嫌だと思うことがあったと窺える。
「そうだったんだ。ごめん。失礼なことを言って。向日葵が告白されるところは何度も見ているし、これまで一度くらいは誰かと付き合ったことがあるのかな……と思ってさ」
「私も同じようなことを思いました。それに、向日葵先輩は美人で可愛らしいですし」
「なるほどね。別に謝るほどじゃないわ。それに、元カレは別の高校に進学したから、中学を卒業してからは何度か姿を見かけたくらいで。もう全然関わりないし」
そう言うと、向日葵は口角を少し上げた。今後、元カレのことについては話題に挙げないように気をつけよう。
向日葵と撫子と話していたこともあって、あっという間に自宅に到着。ここが自宅だと伝えると、向日葵は「素敵な雰囲気の家ね」と言った。
父さんは仕事だけど、母さんはパートのシフトが入っていないので家にいるはず。撫子も一緒だけど、向日葵と会って変な勘違いをされそうな気がする。
僕が玄関を開け、撫子と向日葵の後に家の中に入る。
「お母さん、ただいま」
「ただいま」
「2人ともおかえり~」
リビングから母さんの声が聞こえてきた。
「お、お邪魔します」
「あら、お友達? 初めて聞く声ね」
そう言うと、母さんはリビングから姿を現す。その瞬間に向日葵が「綺麗……」と呟く。
向日葵の姿が目に入ったからか、母さんは明るい笑みを浮かべてこちらにやってくる。
「あら~、とっても綺麗で可愛い女の子。撫子のお友達? それとも桔梗の彼女?」
「か、彼女じゃありません! 桔梗……君のええと……ク、クラスメイトですっ! あと、撫子ちゃんの高校の先輩ですっ!」
向日葵は今までで一番と言っていいほどに顔を真っ赤にして、とっても大きな声でそう言う。
あと、僕のクラスメイトなんだから、必然的に撫子の先輩なんだけどな。思わず笑ってしまう。ただ、向日葵に笑い声が聞こえないようにとっさに右手で口を押さえた。撫子は「ふふっ」と声に出して笑っているが。
やっぱり、母さんに変な勘違いをされてしまったか。前にバイトの先輩方を連れてきたときも、なずなさんのことを彼女かと勘違いしたし。
「彼女は僕のクラスメイトの宝来向日葵さん。今年から同じクラスになったんだ。ほら、前に話したバイト中にナンパから助けたクラスメイトの女子生徒だよ」
「そうなのね。初めまして。加瀬桔梗と撫子の母の萌子といいます」
「宝来向日葵です。初めまして。桔梗君には……ナンパから助けてもらったり、クレーンゲームでぬいぐるみを取ってもらったりしてお世話になってます。とてもお綺麗ですね。若々しいと言いますか」
「どうもありがとう。現役女子高生にそう言われると、お母さん本当に若返る気がするわ~」
うふふっ、と母さんはとても嬉しそうに笑っている。息子から見ても若々しい見た目の母親だなとは思う。昔から何度も年の離れたお姉さんとか従姉なのかって言われるくらいだし。中身は基本的に落ち着いているけど。
「今日、向日葵はかぐやに会いに来たんだ。彼女、猫好きで。かぐやは今、リビングにいるのか?」
「ううん、いないわ。多分、お父さんと私の寝室にいると思う」
「分かった。……とりあえず上に行くか。向日葵。撫子と僕の部屋、どっちに行く?」
一応訊いてみたけど、女の子だし撫子の部屋がいいって言いそうだな。そもそも、こんなことを訊くのが間違いだったのかも。
向日葵はチラチラと僕のことを見て、
「……き、桔梗の部屋がいい」
「僕の部屋?」
意外な返答だったので食い気味に聞き返してしまった。ただ、そんな僕の言葉に向日葵は「うん」と言って頷く。
「部屋の中に、学年1位を取る秘密があるかもしれないから」
「秘密って」
男子高校生として普通の部屋だと思うけどな。ただ、向日葵は僕が普段どういう環境で勉強をしているのか知って、何か参考にしたいのかもしれない。
「もちろん、撫子ちゃんの部屋に行きたくないってわけじゃないからね」
「分かっていますよ。では、兄さんの部屋に行きましょうか」
「そうだな」
部屋は散らかっていないし、今すぐに僕の部屋に連れて行っても大丈夫だろう。
向日葵と撫子を連れて、2階にある僕の部屋へと向かう。
「ここが僕の部屋だよ」
「へえ……」
向日葵は部屋の中を見渡す。成績が良くなる秘密があると思っているのか興味ありげな様子だ。
今日もよく晴れたからか、部屋の中が結構温かくなっている。涼しい空気を入れるために窓を少し開ける。
「いい部屋ね。数少ないけど、今まで行った男子の部屋の中では一番綺麗だよ。あたしの部屋よりも綺麗……」
「兄さんの部屋って散らかっていることはあまりないよね。勉強机やテーブルの上に本とかが何冊か置かれているくらいで」
「そうだね。ゴミが出たら、すぐにゴミ箱へ入れるようにしているし。……それで、僕の部屋を見て、成績アップの参考になりそうなことはあったか?」
「……綺麗に片付いているところかな。あたし、部屋の片付けに夢中になって、勉強する気力がなくなることが何度もあるし」
「なるほど」
そういえば、テスト勉強を始めようとすると、片付けをしたくなる友達は何人かいるな。中には片付けで疲れて勉強しなかったっていう友達も。僕はそういうことは全然ない。
僕の部屋を見て向日葵の成績アップに繋がったら幸いだ。
「さてと、部屋にかぐやを連れてくるか。あとは飲み物も持ってくるよ。向日葵は何が飲みたい?」
「えっと……お茶系だと嬉しいわ。あたし、コーヒーはカフェオレくらいしか飲めなくて」
「そうなのか」
そういえば、昨日サカエカフェに来たとき、向日葵はアイスティーを頼んでいたな。
「じゃあ、私がアイスティーを用意するよ。兄さんはかぐやを探して連れてきて」
「了解。向日葵は適当にくつろいでて。本棚にある漫画や小説を読んでくれてもかまわないよ。バッグは……部屋の端にでも置いてくれ」
「分かったわ」
僕は撫子と一緒に部屋を出る。撫子は自分のバッグを持っていたので、僕は1人で1階に降りた。
リビングにいる母さんに一言言って、両親の寝室へ。寝室の扉が少し開いていたので、かぐやが入った可能性は高そうだな。
「にゃぉ~ん」
「……いた」
母さんの使っているドレッサーの椅子に、かぐやがのんびりとしていた。かぐやは母さんのことも好きだからな。母さんの匂いが感じられるドレッサーの椅子に乗ったのかも。あとはサイズ感がいいのかな。
「かぐや。僕の部屋へ一緒に行こう。かぐやに会わせたい人がいるんだ」
「にゃん」
そっとかぐやを抱き上げると、かぐやは僕の腕の中に収まり、顔を埋めてくる。この姿を向日葵が見たら、羨ましがって「あたしも抱きたい!」とか言いそうだ。
かぐやと一緒に僕は自分の部屋に戻る。
「向日葵。かぐやを連れて――」
「んっ……」
向日葵は僕のベッドにもたれる形でクッションに座っている。そんな彼女は目を瞑ってコクコクとしている。窓から入ってくる涼しくて穏やかな風が気持ちいいので、そのせいで眠気が襲ってきたのだろうか。
適当にくつろいでくれとは言ったけど……まさか、ベッドに寄りかかってウトウトしているとは。撫子の部屋ならまだしも僕の部屋で。少しは警戒心を持った方がいいのでは。僕が向日葵に何かしようとは露程も思っていないが。
「ただ、向日葵のこういう姿も可愛いな」
「うんっ……」
そんな可愛い声を漏らすと、向日葵はゆっくりと目を開ける。僕に視線を向けると、彼女の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「えっと、その……風が気持ちよかったから眠くなってきちゃって。それで、背もたれにベッドを借りたといいますか。他意はないんだからね」
「そんなことだと思ったよ。ただ、撫子の部屋ならまだしも、僕の部屋でウトウトするなんて。風が相当気持ちよかったんだな」
「うん。あとは学校の授業の疲れもあったから」
向日葵はそう言うと、少し目を細めて僕のことを見てくる。
「……何か変なことはしていないでしょうね?」
「してないよ。敷いて言えば、ウトウトしていた向日葵を見て可愛いなと思ったくらいだ」
「そ、そう。……ところで、桔梗が抱いているモフモフした物体がかぐやちゃん?」
「そうだよ。かぐや、向日葵だよ」
ポンポン、とかぐやの背中を軽く叩くと、かぐやは僕の胸から顔を離し、向日葵の方に振り向いた。その瞬間、
「きゃあっ! かわいい!」
興奮した向日葵は大きな声を上げ、すっと立ち上がって僕の目の前まで近づいてくる。しかし、向日葵のそんな言動に驚いてしまったのか、床の上に降りて、僕の後ろに隠れてしまったのであった。
当の本人の向日葵は……撫子と楽しそうに話しているけど、どこか緊張しているようにも見える。
「向日葵。もうすぐ家に着くよ。あと……大丈夫か? 緊張しているみたいだけど」
「し、親戚以外の男子の家に行くのは小学生以来だから。そのときも女子何人かで行ったし……」
「そうなんだ。意外だな。向日葵なら……彼氏の家とかに行ったことがあるのかと」
「……中学時代に付き合った男子はいるけど、元カレの家は一度も行ったことないわ。そもそも、1週間くらいしか付き合わなかったし」
向日葵は少し俯く。
向日葵には元カレがいたのか。今もたくさん告白されているし、元カレとも告白されたのがきっかけで付き合うことになったのかな。
ただ、1週間で別れてしまうとは。何があったのだろうか。今の向日葵を見ていると、彼女が嫌だと思うことがあったと窺える。
「そうだったんだ。ごめん。失礼なことを言って。向日葵が告白されるところは何度も見ているし、これまで一度くらいは誰かと付き合ったことがあるのかな……と思ってさ」
「私も同じようなことを思いました。それに、向日葵先輩は美人で可愛らしいですし」
「なるほどね。別に謝るほどじゃないわ。それに、元カレは別の高校に進学したから、中学を卒業してからは何度か姿を見かけたくらいで。もう全然関わりないし」
そう言うと、向日葵は口角を少し上げた。今後、元カレのことについては話題に挙げないように気をつけよう。
向日葵と撫子と話していたこともあって、あっという間に自宅に到着。ここが自宅だと伝えると、向日葵は「素敵な雰囲気の家ね」と言った。
父さんは仕事だけど、母さんはパートのシフトが入っていないので家にいるはず。撫子も一緒だけど、向日葵と会って変な勘違いをされそうな気がする。
僕が玄関を開け、撫子と向日葵の後に家の中に入る。
「お母さん、ただいま」
「ただいま」
「2人ともおかえり~」
リビングから母さんの声が聞こえてきた。
「お、お邪魔します」
「あら、お友達? 初めて聞く声ね」
そう言うと、母さんはリビングから姿を現す。その瞬間に向日葵が「綺麗……」と呟く。
向日葵の姿が目に入ったからか、母さんは明るい笑みを浮かべてこちらにやってくる。
「あら~、とっても綺麗で可愛い女の子。撫子のお友達? それとも桔梗の彼女?」
「か、彼女じゃありません! 桔梗……君のええと……ク、クラスメイトですっ! あと、撫子ちゃんの高校の先輩ですっ!」
向日葵は今までで一番と言っていいほどに顔を真っ赤にして、とっても大きな声でそう言う。
あと、僕のクラスメイトなんだから、必然的に撫子の先輩なんだけどな。思わず笑ってしまう。ただ、向日葵に笑い声が聞こえないようにとっさに右手で口を押さえた。撫子は「ふふっ」と声に出して笑っているが。
やっぱり、母さんに変な勘違いをされてしまったか。前にバイトの先輩方を連れてきたときも、なずなさんのことを彼女かと勘違いしたし。
「彼女は僕のクラスメイトの宝来向日葵さん。今年から同じクラスになったんだ。ほら、前に話したバイト中にナンパから助けたクラスメイトの女子生徒だよ」
「そうなのね。初めまして。加瀬桔梗と撫子の母の萌子といいます」
「宝来向日葵です。初めまして。桔梗君には……ナンパから助けてもらったり、クレーンゲームでぬいぐるみを取ってもらったりしてお世話になってます。とてもお綺麗ですね。若々しいと言いますか」
「どうもありがとう。現役女子高生にそう言われると、お母さん本当に若返る気がするわ~」
うふふっ、と母さんはとても嬉しそうに笑っている。息子から見ても若々しい見た目の母親だなとは思う。昔から何度も年の離れたお姉さんとか従姉なのかって言われるくらいだし。中身は基本的に落ち着いているけど。
「今日、向日葵はかぐやに会いに来たんだ。彼女、猫好きで。かぐやは今、リビングにいるのか?」
「ううん、いないわ。多分、お父さんと私の寝室にいると思う」
「分かった。……とりあえず上に行くか。向日葵。撫子と僕の部屋、どっちに行く?」
一応訊いてみたけど、女の子だし撫子の部屋がいいって言いそうだな。そもそも、こんなことを訊くのが間違いだったのかも。
向日葵はチラチラと僕のことを見て、
「……き、桔梗の部屋がいい」
「僕の部屋?」
意外な返答だったので食い気味に聞き返してしまった。ただ、そんな僕の言葉に向日葵は「うん」と言って頷く。
「部屋の中に、学年1位を取る秘密があるかもしれないから」
「秘密って」
男子高校生として普通の部屋だと思うけどな。ただ、向日葵は僕が普段どういう環境で勉強をしているのか知って、何か参考にしたいのかもしれない。
「もちろん、撫子ちゃんの部屋に行きたくないってわけじゃないからね」
「分かっていますよ。では、兄さんの部屋に行きましょうか」
「そうだな」
部屋は散らかっていないし、今すぐに僕の部屋に連れて行っても大丈夫だろう。
向日葵と撫子を連れて、2階にある僕の部屋へと向かう。
「ここが僕の部屋だよ」
「へえ……」
向日葵は部屋の中を見渡す。成績が良くなる秘密があると思っているのか興味ありげな様子だ。
今日もよく晴れたからか、部屋の中が結構温かくなっている。涼しい空気を入れるために窓を少し開ける。
「いい部屋ね。数少ないけど、今まで行った男子の部屋の中では一番綺麗だよ。あたしの部屋よりも綺麗……」
「兄さんの部屋って散らかっていることはあまりないよね。勉強机やテーブルの上に本とかが何冊か置かれているくらいで」
「そうだね。ゴミが出たら、すぐにゴミ箱へ入れるようにしているし。……それで、僕の部屋を見て、成績アップの参考になりそうなことはあったか?」
「……綺麗に片付いているところかな。あたし、部屋の片付けに夢中になって、勉強する気力がなくなることが何度もあるし」
「なるほど」
そういえば、テスト勉強を始めようとすると、片付けをしたくなる友達は何人かいるな。中には片付けで疲れて勉強しなかったっていう友達も。僕はそういうことは全然ない。
僕の部屋を見て向日葵の成績アップに繋がったら幸いだ。
「さてと、部屋にかぐやを連れてくるか。あとは飲み物も持ってくるよ。向日葵は何が飲みたい?」
「えっと……お茶系だと嬉しいわ。あたし、コーヒーはカフェオレくらいしか飲めなくて」
「そうなのか」
そういえば、昨日サカエカフェに来たとき、向日葵はアイスティーを頼んでいたな。
「じゃあ、私がアイスティーを用意するよ。兄さんはかぐやを探して連れてきて」
「了解。向日葵は適当にくつろいでて。本棚にある漫画や小説を読んでくれてもかまわないよ。バッグは……部屋の端にでも置いてくれ」
「分かったわ」
僕は撫子と一緒に部屋を出る。撫子は自分のバッグを持っていたので、僕は1人で1階に降りた。
リビングにいる母さんに一言言って、両親の寝室へ。寝室の扉が少し開いていたので、かぐやが入った可能性は高そうだな。
「にゃぉ~ん」
「……いた」
母さんの使っているドレッサーの椅子に、かぐやがのんびりとしていた。かぐやは母さんのことも好きだからな。母さんの匂いが感じられるドレッサーの椅子に乗ったのかも。あとはサイズ感がいいのかな。
「かぐや。僕の部屋へ一緒に行こう。かぐやに会わせたい人がいるんだ」
「にゃん」
そっとかぐやを抱き上げると、かぐやは僕の腕の中に収まり、顔を埋めてくる。この姿を向日葵が見たら、羨ましがって「あたしも抱きたい!」とか言いそうだ。
かぐやと一緒に僕は自分の部屋に戻る。
「向日葵。かぐやを連れて――」
「んっ……」
向日葵は僕のベッドにもたれる形でクッションに座っている。そんな彼女は目を瞑ってコクコクとしている。窓から入ってくる涼しくて穏やかな風が気持ちいいので、そのせいで眠気が襲ってきたのだろうか。
適当にくつろいでくれとは言ったけど……まさか、ベッドに寄りかかってウトウトしているとは。撫子の部屋ならまだしも僕の部屋で。少しは警戒心を持った方がいいのでは。僕が向日葵に何かしようとは露程も思っていないが。
「ただ、向日葵のこういう姿も可愛いな」
「うんっ……」
そんな可愛い声を漏らすと、向日葵はゆっくりと目を開ける。僕に視線を向けると、彼女の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「えっと、その……風が気持ちよかったから眠くなってきちゃって。それで、背もたれにベッドを借りたといいますか。他意はないんだからね」
「そんなことだと思ったよ。ただ、撫子の部屋ならまだしも、僕の部屋でウトウトするなんて。風が相当気持ちよかったんだな」
「うん。あとは学校の授業の疲れもあったから」
向日葵はそう言うと、少し目を細めて僕のことを見てくる。
「……何か変なことはしていないでしょうね?」
「してないよ。敷いて言えば、ウトウトしていた向日葵を見て可愛いなと思ったくらいだ」
「そ、そう。……ところで、桔梗が抱いているモフモフした物体がかぐやちゃん?」
「そうだよ。かぐや、向日葵だよ」
ポンポン、とかぐやの背中を軽く叩くと、かぐやは僕の胸から顔を離し、向日葵の方に振り向いた。その瞬間、
「きゃあっ! かわいい!」
興奮した向日葵は大きな声を上げ、すっと立ち上がって僕の目の前まで近づいてくる。しかし、向日葵のそんな言動に驚いてしまったのか、床の上に降りて、僕の後ろに隠れてしまったのであった。
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