向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

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第11話『メーデー』

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 5月1日、金曜日。
 朝からよく晴れており、日光を直接浴びると結構暑く感じる。あと1ヶ月で、季節が春から夏へと変わるのも納得だ。
 1年のときのクラスと比べ、このクラスは金曜日になると雰囲気は明るくなる傾向がある。ただ、明日から5連休となる今日はいつも以上に明るくなっていた。向日葵も福山さんと話すとき以外も機嫌が良さそう。
 あと、今日はメーデーなんだから、今日も休みにして6連休にしてくれればいいのに。でも、メーデーは労働者の祭典だから、学生には関係ないのかな。職員のために学校をお休みにしたら、大半の生徒は喜ぶと思う。
 そういえば、サカエカフェもメーデーに関係なく普通に営業している。僕も放課後にシフトが入っているし。ちなみに、明日からの5連休中も全て営業予定。
 そんなどうしようもない思考をたまに巡らせ、今日も授業を受けていくのであった。



 放課後。
 今週の授業も終わり、いよいよ5連休に突入する。だからか、終礼が終わった瞬間に「休みだー!」とか「遊ぶぞー!」と大喜びするクラスメイトが何人もいて。もしかしたら、今から連休モードになっているのかも。

「冴島さん、今日も撫子のことをよろしく。連休中の部活でも」

 バッグを持った僕は、クラス委員長の冴島和花さんのところへ行き、そう言った。彼女は撫子が入部した園芸部の先輩だから。
 園芸部の活動日は毎週月、水、金曜日。来週の月曜日と水曜日は連休中だけど、園芸部の活動はあるそうだ。
 冴島さんはクスクスと笑う。彼女の笑みから、呆れも混じっていると感じるのは気のせいだろうか。

「ほぼ毎回、部活のある日は私にそう言ってきますよね。連絡先も交換したのに」
「大切な妹がお世話になっているからね」
「はいはい。今日も連休中も撫子さんのことは任せてください」
「よろしくね。あと、冴島さんのおかげで撫子も部活を楽しめているみたいだ。ありがとう。冴島さんみたいなしっかりして優しい女の子が園芸部にいて、撫子も心強いと思うよ」
「……そうだと嬉しいですね」

 ほんのりと頬を赤らめながらそう言う冴島さん。視線がちらつき、ハーフアップにまとめた濃い茶色の髪を右手でいじっている。
 クラス委員に立候補するだけあって、冴島さんは真面目でしっかりとした女子生徒だ。そんな人のいる部活に撫子が入部したから、兄としても安心できる。

「こういうところでもシスコンが発揮されているのね、桔梗は」

 呆れ気味に笑いながら、向日葵は僕らのところにやってくる。
 今の向日葵の言葉がツボにはまったのか、冴島さんは声に出して笑う。

「……やっぱり、加瀬君はシスコンなんですね」
「シスコンだよ。あと……『やっぱり』なんだね」

 部活のある日はいつも「撫子をよろしく」と言っていたら、冴島さんにシスコンと思われても仕方ないか。

「そういえば、撫子ちゃんは冴島さんのいる園芸部に入部していたわね。どんなお花を育てているの?」

 向日葵がそんなことを問いかけると、冴島さんは「ふふっ」と楽しそうに笑う。

「色々なお花を育てていますよ。私、1年生から撫子の花を育てているので、撫子さんが入部したときは運命かと思いましたよ。校内には何カ所か花壇があって、私は撫子さんと一緒に教室B棟の側にある花壇でお花を育てています。2人さえよければ見に来ますか?」
「行きたいわ。どんな雰囲気なのか気になるし」
「僕も……行くか。バイトがあるけど、少し遅めの時間からのシフトだし」

 それに、部活をする撫子の姿を見たいし。そうすれば、今日のバイトもより頑張れそうだし。

「分かりました。私は部室に行ってから撫子さんと一緒に来ますので、2人は先にB棟の花壇へ行ってくれますか。3月に種まきした撫子の淡いピンク色の花が咲いていますから、たぶん分かるかと思います」
「そうなのね。昨日、家に帰って調べたし、すぐに分かると思う」

 撫子と初めて会ったから、どんな花なのか調べたのかな。
 僕は向日葵と冴島さんと一緒に教室を後にする。この3人で歩くのは今までになかったので新鮮だ。
 1階に辿り着くと、園芸部の部室に行く冴島さんとは一旦お別れ。向日葵と一緒に昇降口へと向かう。

「そういえば、撫子の花以外にはどんな花が植えられているんだろうね。撫子ちゃんから話は聞いていない?」
「入部してすぐの頃に、桔梗の種を蒔いたって言っていたな。あと、向日葵の種も蒔いたとも言っていた気が……」
「へえ、そうなの。桔梗があるなら、向日葵もあるんじゃない? 冴島さんも手がけている花壇だし。それに、向日葵は桔梗よりもメジャーだと思うし」

 そう言うと、向日葵は僕に対してドヤ顔を向けてくる。メジャーだと「思う」とは言っているけど、心の中では「桔梗より向日葵がメジャーだから」って思っていそう。
 お互いに花の名前だからって、実際の花のことでマウントを取ってくるとは。まったく、お可愛いこと。

「桔梗よりも向日葵の花の方が知名度は高いだろうな。両方知っている人でも、向日葵が好きな人の方が多いイメージはある。全ての花の中でも、向日葵の花は屈指の人気があるんじゃないか。まるで、うちの高校での向日葵みたいだ」
「はあっ? な、何言ってるのよばかっ」

 頬中心に顔を赤くした向日葵は、右手を拳にして僕の脇腹に一突き。音はあまり出なかったけど地味に痛い。それまで僕の隣に歩いていた向日葵は、早足で先に昇降口へと向かってしまった。照れくさかったのかな。
 靴に履き替え、教室A棟を出た僕らは、撫子と冴島さんの花壇がある教室B棟の方へと向かうことに。

「A棟とB棟の間にも花壇があるわね。桔梗、あの黄色い花は何て言うの?」
「それはマリーゴールド」
「じゃあ、その隣に咲いている白い花は?」
「ええと……ジャスミンだったかな」
「そうなんだ。桔梗って結構花に詳しいのね」
「それほどじゃないさ。小さい頃に撫子と母さんと一緒に花の図鑑を見たり、家の庭で花を育てたりしたからな。撫子と母さんに比べれば全然」

 僕は一部の花について名前や咲く季節を知っているくらいで、撫子や母さんのように花言葉や栽培方法とかは全然知らないし。
 B棟の昇降口近くにも花壇がいくつもある。入り口に一番近い花壇には淡いピンクの花が咲いている。

「撫子の花があったわ!」

 向日葵は小走りで撫子の花の前まで向かう。短めに穿いているスカートがちょっとめくれるけど、彼女の下着が見えてしまうことはなかった。
 僕も花壇の前に到着。向日葵の隣に立つ。

「写真で見る撫子の花も綺麗でいいけど、実際に見るとより綺麗ね」
「そうだな」

 撫子の花も綺麗だけど、花を見ている向日葵の横顔も負けていない。それを言ったら、さっきみたいに叩かれるかもしれないので心に留めておこう。
 この花壇に植えられている植物で、花が咲いているのは撫子だけか。他の植物は発芽しているものの、まだ花が咲いていない。
 花壇には白いフラワーラベルが刺さっている。撫子の花のところには黒く『撫子』と書かれている。この字は……撫子ではないのは確かだ。冴島さんかな。

「他に植えられているものって何なのかしら? 花がないと見当もつかないわ」
「撫子の隣は桔梗だね。その隣は……分からないな。フラワーラベルがあるから、それを見てみよう」
「そうだね」

 まずは撫子の隣の花壇の植物を見てみる。フラワーラベルには『桔梗』と書かれている。この文字は撫子の字だな。何だか嬉しくなっちゃう。
 桔梗の隣の植物を見てみる。そこに刺さっているフラワーラベルには、

「へえ、『ミニ向日葵』なんてあるんだ。あたし、知らなかったよ」

 撫子の字で『ミニ向日葵』と書かれていた。

「その名の通り、小さいサイズの向日葵のことですよ。宝来さん」

 気づけば、僕らのすぐ近くに冴島さんと撫子の姿が。そんな2人は上履きではなく、カジュアルなシューズを履いていた。園芸部のものだろうか。

「兄さん、向日葵先輩。授業お疲れ様です」
「お疲れ様、撫子」
「お疲れ様、撫子ちゃん。……小さいサイズの向日葵があるのね。どうしてこのサイズの花にしたの?」
「普通の向日葵だと開花の時期が7月中旬から9月あたり。満開の時期は7月末から8月と夏休み中になってしまいます。ただ、ミニ向日葵は6月頃から咲き始めるので、より多くの生徒に楽しんでもらえると思いまして。それに、小さいのは可愛いですからね」
「なるほど」

 僕や向日葵のように部活に入っていない生徒は、夏休み期間中は学校に来ないのが普通だからな。

「それで、桔梗と向日葵の花を植えようって考えたのは、やっぱり冴島さん?」
「そうです。ただ、きっかけは撫子さんで。彼女が入部した直後、この花壇に桔梗の花を植えたいと言ったことなんです」
「撫子の花が植えられているので、隣の花壇には兄さんの名前の桔梗の花がいいなと思いまして。お花でも撫子と桔梗が隣同士にあるといいなって。……兄さんの前で言うとちょっと恥ずかしいですね」

 はにかみながら撫子は僕のことをチラチラと見てくる。桔梗の花を植えたいと言った理由が可愛すぎるよ。とても嬉しいので、僕は撫子の頭を優しく撫でる。
 撫子はゆっくりと僕の方を見て柔らかく笑う。

「……撫子の花の隣で、桔梗の花が咲くのが楽しみだ。桔梗も6月頃から咲き始めるんだよね」
「うん。早いと5月中から咲き始めるよ、兄さん」
「そうなんだ」
「撫子さんの提案で、桔梗の花を撫子の隣の花壇に植えると決めました。残り1つの花壇に何を植えようか考えたとき、すぐに宝来さんのことが頭に思い浮かびました。当時は宝来さんが加瀬君を嫌っているように見えましたけど、花なら隣同士に植えてもいいんじゃないかと思いまして。桔梗と向日葵なら開花時期が被りますから。もちろん、撫子とも」
「色々な花が咲いていた方が花壇もより綺麗だし、見ている方も楽しいものね」
「向日葵の言う通りだな」
「お二人がそう言ってくれて良かったです。特に宝来さん」

 ほっとした様子の冴島さんは向日葵に視線を向ける。僕を睨んだり、舌打ちしていたりしていたときの向日葵だったら、桔梗の花と向日葵の花が隣同士に植えられているのを嫌がったかもしれない。

「……成績のことで桔梗をライバルだとは思っているけど、今はもう鬱陶しいとか思っていないわ。撫子、桔梗、向日葵と並んで植えられているのはいいと思う」

 向日葵は微笑んでそう言った。

「嬉しいです。まだ、桔梗と向日葵の花は咲いていませんけど、2人一緒にこの花壇のことを話せて良かったです。6月になればどちらの花も咲くと思いますから、楽しみにしていてください」
「ええ、楽しみにしているわ。この花壇のこと、教えてくれてありがとう」
「僕も楽しみにしているよ」

 そのときはまたこの4人で花壇を見るのもいいかもしれない。
 バイトのシフトまではまだ少し時間があったので、向日葵と一緒に雑草を抜いたり、水やりしたりするのであった。
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