向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

文字の大きさ
15 / 41

第14話『ラーメンいかがですか』

しおりを挟む
 午後1時過ぎ。
 名探偵クリスの映画が終了し、スクリーンの照明が点く。集中して見ていたから、明るくなると同時に現実へ帰ってきた気分だ。あと、集中して観ている時間が長かったから目が疲れた。

「今年もクリス面白かったわ!」
「面白かったね、向日葵。それにしても、まさか、あの地味そうなキャラが犯人だったなんて」
「あたし達の予想が見事に外れたわ。ただ、地味な感じだった人が、真実を明かされた途端に豹変すると『この人ヤバい。この人ならやっちゃうよ』って思うわよね」
「凄く分かる。あと、そういうタイプの犯人って印象に残る」
「あたしも!」

 クリスが面白かったのか、向日葵はとても楽しそうに話してくれる。映画が終わってすぐに感想を語り合うのは、誰かと一緒に行ったときの醍醐味だよな。
 つい先日まで、僕にツンツンとした態度ばかり取っていた向日葵とこういう話ができるとは。感慨深くて嬉しい気持ちに。ただ、そんなことを思った矢先、

「ら、来年のクリスも期待できそうね」

 そう言い、向日葵は頬中心に顔を赤くして、僕から視線を逸らしてしまった。僕に笑顔を見せるのが恥ずかしくなってしまったのだろうか。こういうところも可愛いが。

「豹変するタイプの犯人なので、初登場したときから『穏やかな顔を浮かべているなぁ。内心ではあの人を殺したくて仕方ないんだなぁ』って思いながら観てました。そういう楽しみ方ができたので、2度目でも楽しかったです」
「なでちゃんに犯人の名前とラストに表情が変わることを教えてもらったから、私もそういうことを考えながら観てたよ。結構楽しかった」
「良かったわね」

 今まで、推理系の作品については事前のネタバレを避けてきていた。でも、今の2人の話を聞いていると、犯人を知ってから観てみるのもいいかもしれないと思えてくる。来年公開予定の次回作では、犯人を知ってから観てみようかな。
 あと、福山さんはいつの間にか撫子のことを『なでちゃん』って呼ぶようになっているな。撫子を撫でたくなるあだ名だ。もし、僕にあだ名をつけてくれるとしたらどんな感じなんだろう? 『きょうくん』とか? ちなみに、あだ名で一番呼ばれたのはそれだった。

「人が少なくなってきましたね。私達もそろそろ出ましょうか」
「そうね」

 僕らは館内からフロントへと戻る。
 お手洗いに行きたくなったので、僕は男性用のお手洗いへ。撫子達もお手洗いに行くとのこと。僕はコーヒーを買って飲んだけど、映画に集中して観ている時間が多かったから、上映中は一度も行かなかったな。
 待ち合わせ場所の売店に戻り、クリスのグッズを観る。主人公のクリス君と、今作のキーパーソンの青井あおいさんという警察官のキャラクターのグッズが多い。青井さんは女性中心に人気が高いからなぁ。映画公開でさらに人気が高まったのか、クリス君よりもグッズが売れている。

「お待たせ、兄さん」

 撫子達がお手洗いから戻ってきた。撫子と福山さんは僕に手を振ってくれる。

「おかえり。今は……1時過ぎか。お昼ご飯を食べるにはいい時間だな。あと、映画を一緒に観たけど、向日葵と福山さんはこれからも一緒に過ごすか? それとも、ここでお別れするか?」
「お手洗いでそのことを3人で話していたの。武蔵栄駅で会えたのは何かの縁だと思うし、今日は4人で行動しようって結論になったわ。少なくとも、花宮にいる間は。桔梗はそれでもいい?」
「僕はもちろんいいよ」

 4人で一緒に楽しく映画を観られたんだ。これからも向日葵と福山さんと一緒にいても楽しい時間を送ることができるだろう。

「決まりね。それで、お昼のことも3人で話して……桔梗の行きたいお店に行こうって話になったの」
「えっ? どうして?」
「11時の上映回に観られたのは、加瀬君が予約してくれたおかげだからそのお礼に……って、ひまちゃんが提案したんだよ」
「……か、借りを作ったままにしたくないからね」

 頬を赤くしてそう言うと、向日葵は腕を組む。照れくさいのか、僕のことをチラチラと見ている。そんな向日葵の頭を福山さんが撫でる。

「非常に向日葵らしい理由だ。分かった。もし、嫌だったら遠慮なく言ってくれ。花宮に映画を観に来たときは、結構な割合で北口近くにあるラーメン屋に行っているんだ。撫子も僕もラーメンが好きだからな。どうだろう?」

 撫子はいいと言ってくれそうだけど、向日葵と福山さんがどう反応するか。ちょっと不安な気持ちも胸に抱いていると、

『ふふっ……』

 撫子達は急に笑い始めたのだ。バカにしている感じはなく、楽しそうに笑っている。

「ごめんごめん。撫子ちゃんの言う通りだなって」
「『花宮にいるならラーメン屋がいいな』って、なでちゃんが言っていたから」
「兄さんはラーメンが大好きだからね」
「……そこまでお手洗いで話していたのか」

 ちょっと恥ずかしくなってきた。
 ラーメン屋でいいか、と改めて訊くと3人とも「いいよ」と返事をしてくれた。なので、お昼ご飯はラーメン屋に決定。
 僕らは映画館を後にして、ラーメン屋に向かって歩き始める。映画館に行くときよりも人の数が多いな。だから、行くときと同じで4人で手を繋ぎながら歩く。

「あの手を繋いでいる女の子達、可愛くね?」
「そうだな。端にいる男は……見た感じ、手を繋いでいる子のお兄さんか?」
「そうかもな」

 美少女3人と一緒に歩いているから、男性中心に視線が集まる。ただ、撫子と一緒に手を繋いでいるのが功を奏してか、僕に嫉妬や嫌悪の眼差しを向ける人はいない。
 撫子は今のような状況には慣れているので平然としている。向日葵と福山さんも同じなのか、特に周りを気にしていないようだ。映画について楽しく話している。
 3人が自然体にしているのもあってか、ラーメン屋に着くまで彼女達に視線を向ける人が絶えなかった。

「ここだよ」

 映画館を出発してから数分。
 僕らは目的のラーメン屋『花宮拉麺』に到着する。美味しくて、スープのバリエーションが豊富。それに加えて、値段がリーズナブルなため、花宮に来たときはこのラーメン屋でお昼を食べることが多い。近くに学校も多いからか、学生証を見せると麺大盛りかトッピング1品が無料になる。
 昼過ぎの時間帯になったからか、お店に入るとすぐに4人用のテーブル席へと案内される。
 僕と撫子、向日葵と福山さんがそれぞれ隣同士に座る。ちなみに、僕は向日葵とテーブルを介して向かい合っている状態だ。
 僕は味噌ラーメン、撫子は塩ラーメン、向日葵は醤油ラーメン、福山さんは豚骨ラーメンを注文。僕は麺を大盛にし、撫子と向日葵、福山さんは味付け玉子をトッピングで付けた。

「花宮にこういうラーメン屋があるとは」
「知らなかったよね、ひまちゃん」
「2人は花宮に来るとどういうお店でご飯を食べるんだ?? あと、ラーメン屋って行くのか?」
「花宮には飲食店がたくさんあるからね。その中でも喫茶店やパスタ専門店が多いわよね、愛華」
「うん。私達はパスタや洋食系が大好きだからね」

 そういえば、この前、2人はサカエカフェに来て、ナポリタンやオムライスを美味しそうに食べていたっけ。あのときの2人の笑顔を思い出すと、気持ちがほっこりとする。

「ラーメンは……ひまちゃんと2人きりのときには行くよね」
「そうね。あたしも愛華もラーメンは普通に食べるし。でも、愛華以外の友達と一緒だとあんまり行かないわね」
「そうなのか。ラーメン屋に行きたいって言ってみて良かったよ」

 向日葵と福山さんがラーメンを食べるイメージがあまりなかった。でも、普通に食べると分かって親近感が湧く。ラーメン好きだから、2人がラーメンを食べるときにどんな顔をするのかが楽しみだ。
 それから10分ほどで僕らの注文したラーメンが運ばれてくる。どのラーメンも美味しそうだ。みんな自分の注文したラーメンをスマホで撮っているので、僕も真似をする。

「みんな写真を撮ったし、そろそろ食べましょ」
「そうだな。じゃあ、いただきます」
『いただきます!』

 レンゲで味噌味のスープを一口飲む。……あぁ、味噌が濃厚で美味しい。あと、スープの温かさが全身に染み渡っていく。ほっとするなぁ。
 茹で野菜と一緒に麺を一口すする。

「……美味しい」
「醤油ラーメン美味しいわ!」
「豚骨ラーメンも濃厚な味で美味しい」
「塩ラーメンもさっぱりしていて美味しいですよ」

 ラーメン好きの撫子はもちろんのこと、向日葵と福山さんもラーメンを食べていい笑顔を浮かべている。自分が行きたいと行ったお店で、美味しそうに食べてくれるのは凄く嬉しい。

「みんながそう言ってくれて良かったよ。特に向日葵と福山さん」
「花宮に来ると、桔梗が好んでこのお店で食事するのが分かる気がするわ」
「美味しいし、値段もお手頃だもんね。学生証を見せればサービスしてくれるし。いいお店に連れてきてくれてありがとう、加瀬君」
「……ありがと、桔梗」
「いえいえ」
「気に入ってくれたみたいで良かったですね、兄さん」
「ああ、嬉しいよ」

 それからは、今日観たクリスの映画の話をしながら、4人でラーメンを楽しむ。
 あと、僕は撫子と、女子3人はお互いのラーメンを一口ずつ交換し合った。それもあってか向日葵と福山さんはとても満足そうにしていた。
 地元の武蔵栄駅周辺にもいくつかラーメン屋があるから、いつかこの4人で行ってみたいな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

処理中です...