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第32話『夏の予定』
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土日は明日香や咲希と一緒に受験勉強をした。
咲希は前からだけど、明日香も僕に想いを伝えたこともあってか、これまでと比べると僕のすぐ側で勉強するようになった気がする。そんな明日香の変化に気付いたのか、咲希はとても楽しそうな様子で僕らのことを見ることが何度もあった。
親しい幼なじみという感覚は残ってはいるけど、僕にとって今の2人は僕に好いている素敵な女性になっているということをこの週末で改めて思った。
週が明けると、予告通り羽村は元気になって登校してきた。本人曰く、土日はずっと三宅さんが看病してくれたらしく、あっという間に体調が良くなったという。明日香も前に言っていたけれど、恋人の力って偉大だと思う。
曜日の関係もあって、今週の金曜日で高校最後の1学期は終わる。よって、今週は文字通りの最終週だ。
そんな最終週の授業は復習や受験対策中心の内容であるため、普段とは違った雰囲気で進んでいった。ただ、羽村のいなかった先週よりかは日常を味わっているような感じがした。
そして、1学期最後の日にはもちろん通知表が。
体育だけは平均的だったけど、他の教科は軒並み成績が良かったので一安心。通知表には各教科の成績の他に、クラスでの順位と3年の文系クラス全員の順位も記載される。今回も両方2位だった。ということは、クラスと文系全員の1位はやっぱりアイツか。
「蓮見、どうだった?」
「体育だけが平均的なのも含めていつも通りだった。もちろん、クラスと学年順位もいつも通りの2位」
「そうか。俺もいつも通りだったぞ。先週は3日連続で休んだから多少は成績に響くかと思ったんだが、どうやら問題はなかったようだ。クラスと学年共に1位だったよ」
「……やっぱり1位はお前だったか。まあ、これもいつも通りだよな」
「2年までと変わらずだな。俺はてっきり蓮見が1位だと思っていたよ」
「……期末試験全教科100点を取ったくせによく言うよ。さすがだな、おめでとう」
「ああ。高校最後の夏休みも気持ち良く過ごせそうだ」
僕も……まあ、普段と変わらない成績だったのでいい夏休みを過ごせそうな気がする。今年は受験勉強をしなきゃいけないけど。ちなみに夏休み中は、駅前にある学習塾が開催する大学受験向けの夏期講習に参加するつもりだ。
明日香や常盤さんも普段通りまずまずの成績。そして、桜海高校に転入してから初めての通知表である咲希は教科によって波があるものの赤点教科はなし。そのことに咲希はとても安心しているようだった。
こうして無事に1学期も終わり、いよいよ高校最後の夏休みが始まった。
7月21日、土曜日。
午後2時。僕は明日香や咲希、芽依と一緒にシー・ブロッサムに来ている。どうしてここにいるのかというと、昨日の夜、羽村が毎年恒例となっている夏の旅行について話し合いたいとメッセージを送ってきたからだ。
もちろん、僕ら4人や羽村だけではなく、常盤さんや三宅さんも来ていた。バイト上がりの鈴音さんも同席し合計8人に。マスターに頼んでテーブルをくっつけるのを許可してもらった。
「みんなに集まってもらったのは、昨日伝えたように毎年恒例の夏の旅行について話すためです」
「そういえば、去年よりも大分増えたな、羽村」
「ああ、去年参加したメンバーに加えて陽乃に有村、宮代さんの3人が加わったからな」
前に話したときに行きたいと言っていた咲希。羽村と付き合うようになった三宅さん。今年度になって僕らの繋がりができた鈴音さんの3人か。去年は5人だったので、1.5倍以上の人数になるのか。
「8人になっても、いつもの常盤さんの別荘なら大丈夫そうか」
別荘というよりは、ちょっとしたホテルとも言えるくらいの大きさだもんな。一昨年、去年と5人で旅行に行ったけど、5人じゃもったいないくらいの広さだったもん。まあ、常盤さんにとってはあまり広くないそうだけど。
「常盤、昨日頼んだ件……どうだった?」
「うん。お父さんに訊いたら、8月は10日以降ならいつでも大丈夫だってさ」
「そうか。一昨年、去年と8月に常盤の別荘に旅行へ行っているんだが、今年はどうしようか。俺を含めて受験生も何人かいるけど、個人的にはリフレッシュするのもいいと思うし、勉強合宿という名目で行くのもいいと思っているが」
今の言い方だと、羽村は旅行に行くことを前向きに考えているのか。そういえば、前に学校でも同じように言っていたっけ。
「宗久会長がもし行くのであれば、私も一緒に行きたいです!」
「あたしも、来月の10日以降なら夏休みもスタートしているし行こうかな。日にちが決まったらシフトを調整してもらうよ」
「去年は高校受験だったけど行ったし、今年も行きたいって思っているから私も行きたい!」
受験生ではない三宅さん、鈴音さん、芽依は行きたいと即答。3人ならそう言うと思っていた。
「あたしも行きたい! 美波の家の別荘がどんなところか気になるし。それに、参考書とか問題集を持っていって勉強もするつもり!」
「俺も有村と同じように、問題集とかを持っていって勉強するつもりだ」
咲希と羽村も行く気満々のようだ。ツアーとかはなく、個人的に行く旅行だし勉強道具を持っていって、向こうで勉強会を開けばいいのかな。
「あたしは別荘を持つ家の人間だし、それに……今、制作している例の作品の参考に、またあの景色を実際に見たくて。あとは、勉強もそうだけど風景画やデッサンを一つでも描いてみたいなって思ってる」
「別荘の周りの風景いいよね、みなみん。私も美術系と迷ってもいるし、勉強だけじゃなくてデッサンしてみようかな」
「うん! 一緒にやろうよ、明日香」
常盤さん、とても楽しそうな笑みを浮かべている。美大志望の常盤さんと、美大が選択肢にある明日香にとって好きな風景を見るというのはとてもためになるんだろうな。
目的は少しずつ違うけど、みんな旅行に行きたいと思っているんだな。
「つーちゃんはどうする?」
「僕も行くよ。問題集とかも持っていって、勉強する時間も作ろうかなと思ってる。夏期講習は講座単位で申込できるし、日にちさえ決まればそこは調整できるから」
「蓮見も来てくれるか。お前がいると俺も楽しいぞ。男も2人になるし。よし、この8人で行くことで決定だな」
今年は大学受験もあるので遊ぶためだけではない。ただ、咲希、三宅さん、鈴音さんも加わって……どんな旅行になるのかが楽しみだな。
「はーい、9人目で私も参加したいでーす! あっ、マスター、アイスコーヒー1つお願いします」
「かしこまりました」
気付けば、ワイシャツ姿の松雪先生が芽依の隣に座っていた。
「松雪先生、どうしたんですか」
「たまには、大学じゃない場所でお昼ご飯もいいかなと思って。夏休みになると蓮見君達が旅行に行くことは知っているから、もしかしたら今年もそのことについて話しているのかなと思って」
「それで、先生も旅行に行ってみたいと思ったわけですか」
「うん。3年連続で面倒見た生徒達との思い出を作りたいというか。まあ、ぶっちゃけ、特に何の予定もないし……お邪魔でなければ。もし、勉強をするつもりだったら、現代文と古典はもちろん教えるし、英語や日本史くらいならサポートできると思うよ。旅行中の飲食代もいくらか出してあげるし」
僕達と一緒に旅行に行きたいのか、自分の存在価値をアピールしているぞ。先生と一緒なのは特に嫌だとは思っていないし、明日香達も見たところ嫌そうな素振りを見せる人はいない。
「あたしは里奈先生と一緒に行ってみたいです。修学旅行みたいで楽しそうだなと思いますし。6月に転入してきたので憧れもあって。それに、先生がいるなんて勉強するときに心強いですよ」
「咲希ちゃん……!」
咲希の今の言葉がとても嬉しかったのか、松雪先生は可愛らしい笑みを浮かべながら咲希を後ろから抱きしめる。
「さっちゃんの言う通りかもね。私達と学年の違う子もいるけれど、修学旅行みたいで楽しいかも」
「有村や朝霧からそんな意見が出ているけど、松雪先生が行くことに賛成の人は挙手を」
羽村がそう言うと、全員が手を挙げた。
「じゃあ、満場一致で松雪先生も加わって9人で旅行に行こう。先生、旅行中は色々とお世話になるかと思いますがよろしくお願いします」
「ううん、気にしないで。先生のわがままを受け入れてくれてみんなありがとう。勉強とかできるだけ協力するね」
松雪先生も加わったことで勉強合宿の色が強くなりそうな気がするけれど、先生がいることが心強いのは事実。有意義な夏の旅行にできればいいなと思う。
それからも、主にスケジュールついてメッセージを何度もやり取りし、今年の夏の旅行は8月11日からの4日間に決まったのであった。
咲希は前からだけど、明日香も僕に想いを伝えたこともあってか、これまでと比べると僕のすぐ側で勉強するようになった気がする。そんな明日香の変化に気付いたのか、咲希はとても楽しそうな様子で僕らのことを見ることが何度もあった。
親しい幼なじみという感覚は残ってはいるけど、僕にとって今の2人は僕に好いている素敵な女性になっているということをこの週末で改めて思った。
週が明けると、予告通り羽村は元気になって登校してきた。本人曰く、土日はずっと三宅さんが看病してくれたらしく、あっという間に体調が良くなったという。明日香も前に言っていたけれど、恋人の力って偉大だと思う。
曜日の関係もあって、今週の金曜日で高校最後の1学期は終わる。よって、今週は文字通りの最終週だ。
そんな最終週の授業は復習や受験対策中心の内容であるため、普段とは違った雰囲気で進んでいった。ただ、羽村のいなかった先週よりかは日常を味わっているような感じがした。
そして、1学期最後の日にはもちろん通知表が。
体育だけは平均的だったけど、他の教科は軒並み成績が良かったので一安心。通知表には各教科の成績の他に、クラスでの順位と3年の文系クラス全員の順位も記載される。今回も両方2位だった。ということは、クラスと文系全員の1位はやっぱりアイツか。
「蓮見、どうだった?」
「体育だけが平均的なのも含めていつも通りだった。もちろん、クラスと学年順位もいつも通りの2位」
「そうか。俺もいつも通りだったぞ。先週は3日連続で休んだから多少は成績に響くかと思ったんだが、どうやら問題はなかったようだ。クラスと学年共に1位だったよ」
「……やっぱり1位はお前だったか。まあ、これもいつも通りだよな」
「2年までと変わらずだな。俺はてっきり蓮見が1位だと思っていたよ」
「……期末試験全教科100点を取ったくせによく言うよ。さすがだな、おめでとう」
「ああ。高校最後の夏休みも気持ち良く過ごせそうだ」
僕も……まあ、普段と変わらない成績だったのでいい夏休みを過ごせそうな気がする。今年は受験勉強をしなきゃいけないけど。ちなみに夏休み中は、駅前にある学習塾が開催する大学受験向けの夏期講習に参加するつもりだ。
明日香や常盤さんも普段通りまずまずの成績。そして、桜海高校に転入してから初めての通知表である咲希は教科によって波があるものの赤点教科はなし。そのことに咲希はとても安心しているようだった。
こうして無事に1学期も終わり、いよいよ高校最後の夏休みが始まった。
7月21日、土曜日。
午後2時。僕は明日香や咲希、芽依と一緒にシー・ブロッサムに来ている。どうしてここにいるのかというと、昨日の夜、羽村が毎年恒例となっている夏の旅行について話し合いたいとメッセージを送ってきたからだ。
もちろん、僕ら4人や羽村だけではなく、常盤さんや三宅さんも来ていた。バイト上がりの鈴音さんも同席し合計8人に。マスターに頼んでテーブルをくっつけるのを許可してもらった。
「みんなに集まってもらったのは、昨日伝えたように毎年恒例の夏の旅行について話すためです」
「そういえば、去年よりも大分増えたな、羽村」
「ああ、去年参加したメンバーに加えて陽乃に有村、宮代さんの3人が加わったからな」
前に話したときに行きたいと言っていた咲希。羽村と付き合うようになった三宅さん。今年度になって僕らの繋がりができた鈴音さんの3人か。去年は5人だったので、1.5倍以上の人数になるのか。
「8人になっても、いつもの常盤さんの別荘なら大丈夫そうか」
別荘というよりは、ちょっとしたホテルとも言えるくらいの大きさだもんな。一昨年、去年と5人で旅行に行ったけど、5人じゃもったいないくらいの広さだったもん。まあ、常盤さんにとってはあまり広くないそうだけど。
「常盤、昨日頼んだ件……どうだった?」
「うん。お父さんに訊いたら、8月は10日以降ならいつでも大丈夫だってさ」
「そうか。一昨年、去年と8月に常盤の別荘に旅行へ行っているんだが、今年はどうしようか。俺を含めて受験生も何人かいるけど、個人的にはリフレッシュするのもいいと思うし、勉強合宿という名目で行くのもいいと思っているが」
今の言い方だと、羽村は旅行に行くことを前向きに考えているのか。そういえば、前に学校でも同じように言っていたっけ。
「宗久会長がもし行くのであれば、私も一緒に行きたいです!」
「あたしも、来月の10日以降なら夏休みもスタートしているし行こうかな。日にちが決まったらシフトを調整してもらうよ」
「去年は高校受験だったけど行ったし、今年も行きたいって思っているから私も行きたい!」
受験生ではない三宅さん、鈴音さん、芽依は行きたいと即答。3人ならそう言うと思っていた。
「あたしも行きたい! 美波の家の別荘がどんなところか気になるし。それに、参考書とか問題集を持っていって勉強もするつもり!」
「俺も有村と同じように、問題集とかを持っていって勉強するつもりだ」
咲希と羽村も行く気満々のようだ。ツアーとかはなく、個人的に行く旅行だし勉強道具を持っていって、向こうで勉強会を開けばいいのかな。
「あたしは別荘を持つ家の人間だし、それに……今、制作している例の作品の参考に、またあの景色を実際に見たくて。あとは、勉強もそうだけど風景画やデッサンを一つでも描いてみたいなって思ってる」
「別荘の周りの風景いいよね、みなみん。私も美術系と迷ってもいるし、勉強だけじゃなくてデッサンしてみようかな」
「うん! 一緒にやろうよ、明日香」
常盤さん、とても楽しそうな笑みを浮かべている。美大志望の常盤さんと、美大が選択肢にある明日香にとって好きな風景を見るというのはとてもためになるんだろうな。
目的は少しずつ違うけど、みんな旅行に行きたいと思っているんだな。
「つーちゃんはどうする?」
「僕も行くよ。問題集とかも持っていって、勉強する時間も作ろうかなと思ってる。夏期講習は講座単位で申込できるし、日にちさえ決まればそこは調整できるから」
「蓮見も来てくれるか。お前がいると俺も楽しいぞ。男も2人になるし。よし、この8人で行くことで決定だな」
今年は大学受験もあるので遊ぶためだけではない。ただ、咲希、三宅さん、鈴音さんも加わって……どんな旅行になるのかが楽しみだな。
「はーい、9人目で私も参加したいでーす! あっ、マスター、アイスコーヒー1つお願いします」
「かしこまりました」
気付けば、ワイシャツ姿の松雪先生が芽依の隣に座っていた。
「松雪先生、どうしたんですか」
「たまには、大学じゃない場所でお昼ご飯もいいかなと思って。夏休みになると蓮見君達が旅行に行くことは知っているから、もしかしたら今年もそのことについて話しているのかなと思って」
「それで、先生も旅行に行ってみたいと思ったわけですか」
「うん。3年連続で面倒見た生徒達との思い出を作りたいというか。まあ、ぶっちゃけ、特に何の予定もないし……お邪魔でなければ。もし、勉強をするつもりだったら、現代文と古典はもちろん教えるし、英語や日本史くらいならサポートできると思うよ。旅行中の飲食代もいくらか出してあげるし」
僕達と一緒に旅行に行きたいのか、自分の存在価値をアピールしているぞ。先生と一緒なのは特に嫌だとは思っていないし、明日香達も見たところ嫌そうな素振りを見せる人はいない。
「あたしは里奈先生と一緒に行ってみたいです。修学旅行みたいで楽しそうだなと思いますし。6月に転入してきたので憧れもあって。それに、先生がいるなんて勉強するときに心強いですよ」
「咲希ちゃん……!」
咲希の今の言葉がとても嬉しかったのか、松雪先生は可愛らしい笑みを浮かべながら咲希を後ろから抱きしめる。
「さっちゃんの言う通りかもね。私達と学年の違う子もいるけれど、修学旅行みたいで楽しいかも」
「有村や朝霧からそんな意見が出ているけど、松雪先生が行くことに賛成の人は挙手を」
羽村がそう言うと、全員が手を挙げた。
「じゃあ、満場一致で松雪先生も加わって9人で旅行に行こう。先生、旅行中は色々とお世話になるかと思いますがよろしくお願いします」
「ううん、気にしないで。先生のわがままを受け入れてくれてみんなありがとう。勉強とかできるだけ協力するね」
松雪先生も加わったことで勉強合宿の色が強くなりそうな気がするけれど、先生がいることが心強いのは事実。有意義な夏の旅行にできればいいなと思う。
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