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Fragrance 1-コイノカオリ-
第16話『甘く危険な香り』
お化け屋敷を出ても、絢ちゃんは私と腕を絡ませていた。
「絢ちゃん、もう終わったんだから大丈夫だって」
「……だって、凄く怖かったから」
「お化け、集中的に絢ちゃんばかり驚かせていたもんね……」
「……もう、暫くの間はお化け屋敷には行かない」
絢ちゃんの顔をよく見ると、目元が赤くなっていた。暗くて気づかなかったけど、あまりにも怖くて泣いていたんだ。
何か普段見ることのできない絢ちゃんが見られて嬉しい。
「でも、私はまた絢ちゃんと行きたいな。お化け屋敷」
「遥香のいじわる……」
「別に嫌な思いをさせるためじゃないよ。ただ、可愛い素の部分がたくさん見られて良かったなって」
「遥香……」
「学校での絢ちゃんが自然体だったらそれはそれでいいけれど、もし……今の方が自然体なら、もう少し普段から素の部分を見せていってもいいんじゃないかな。可愛い絢ちゃんもきっとみんなも受け入れてくれると思うよ」
今のお化け屋敷を通して私の抱いていたとある推測は、確信に変わった。
今の絢ちゃんは学校にいるときの絢ちゃんと振る舞い方が全く違うということ。
学校での絢ちゃんは王子様のようにかっこいいけれど、今の絢ちゃんは可愛い女の子になっている。そうしている理由はまだ分からないけど。
私に指摘されて恥ずかしいのか、頬を赤くして絢ちゃんは何も話そうとしない。
「とりあえず、お昼ご飯にしようか。もう1時過ぎてるから」
スマホを見ると時刻は午後1時20分になっていた。
私達のすぐ目の前には大きな広場があり、設置されているテーブルとイスには多くの客が利用している。お昼過ぎだけれど、昼食を取っている人も多い。
私達は空いているテーブルのイスに座る。
「絢ちゃん、お昼ご飯……食べられそう?」
「……うん」
「じゃあ、私が何か買ってくるから、絢ちゃんはここで待っててよ」
「ちょっと待って!」
絢ちゃんは私が離そうとしたぎゅっと手を掴んできた。
どうしたんだろう? さっきまであまり元気がなさそうだったのに、今度は血相を変えて……何か慌てているようにも見える。
「わ、私も一緒に……」
「絢ちゃんはここでゆっくりしていて。さっきのお化け屋敷で相当驚かされて、いっぱい叫んで体力も結構使っちゃっただろうし」
「で、でも……」
「眠気はもう飛んだよ。絢ちゃんがたくさん叫んだからかな。大丈夫だよ、買ったらすぐに戻ってくるから」
絢ちゃんは私をここに連れてきてくれて。絶叫マシンで意識が飛びそうになった私をずっと側で介抱してくれて。ずっと手を離さないでいてくれて。間違っているかもしれないけど、1人の時間を作って絢ちゃんをゆっくりさせてあげたい。
「何か食べたいものはある?」
「……焼きそば」
「分かった。焼きそば買ってくるから。絢ちゃんはゆっくり休んでて」
「うん。……それと、遥香」
「どうかした?」
「遥香に大事な話があるんだ。昼食を食べたらゆっくりと話したい」
「うん、分かったよ」
真剣な表情をしながら、大事な話があると言われるとドキドキしちゃうよ。
「……あと、何かあったらすぐに連絡して。絶対だからね」
「そんなこと言われなくても、そのつもりだよ」
「気をつけて行ってきてね」
「うん」
私は絢ちゃんに手を振って、広場から離れる。
絢ちゃんの話したい大切な話が気になって仕方ない。その内容を知るためにも、早く焼きそばを買わなきゃ。
パンフレットを頼りに飲食店の並ぶエリアまで辿り着く。様々な料理の匂いが混ざっているけれど、どれも美味しそうな匂いなので嫌な気には全くならない。
端の店から順番にメニューを見ていき、半分くらい来たところにやっとメニューに焼きそばのあるお店を見つけた。
「よし、さっそく――」
その店の待機列に並ぼうとしたときだった。
「んんんっ!」
誰かによって薬を染みこませた布を嗅がされてしまう。何も抵抗できないまま意識が次第に薄れていく。そして、意識の失う直前に感じたものは――。
最近、どこかで知った甘い香りだった。
「絢ちゃん、もう終わったんだから大丈夫だって」
「……だって、凄く怖かったから」
「お化け、集中的に絢ちゃんばかり驚かせていたもんね……」
「……もう、暫くの間はお化け屋敷には行かない」
絢ちゃんの顔をよく見ると、目元が赤くなっていた。暗くて気づかなかったけど、あまりにも怖くて泣いていたんだ。
何か普段見ることのできない絢ちゃんが見られて嬉しい。
「でも、私はまた絢ちゃんと行きたいな。お化け屋敷」
「遥香のいじわる……」
「別に嫌な思いをさせるためじゃないよ。ただ、可愛い素の部分がたくさん見られて良かったなって」
「遥香……」
「学校での絢ちゃんが自然体だったらそれはそれでいいけれど、もし……今の方が自然体なら、もう少し普段から素の部分を見せていってもいいんじゃないかな。可愛い絢ちゃんもきっとみんなも受け入れてくれると思うよ」
今のお化け屋敷を通して私の抱いていたとある推測は、確信に変わった。
今の絢ちゃんは学校にいるときの絢ちゃんと振る舞い方が全く違うということ。
学校での絢ちゃんは王子様のようにかっこいいけれど、今の絢ちゃんは可愛い女の子になっている。そうしている理由はまだ分からないけど。
私に指摘されて恥ずかしいのか、頬を赤くして絢ちゃんは何も話そうとしない。
「とりあえず、お昼ご飯にしようか。もう1時過ぎてるから」
スマホを見ると時刻は午後1時20分になっていた。
私達のすぐ目の前には大きな広場があり、設置されているテーブルとイスには多くの客が利用している。お昼過ぎだけれど、昼食を取っている人も多い。
私達は空いているテーブルのイスに座る。
「絢ちゃん、お昼ご飯……食べられそう?」
「……うん」
「じゃあ、私が何か買ってくるから、絢ちゃんはここで待っててよ」
「ちょっと待って!」
絢ちゃんは私が離そうとしたぎゅっと手を掴んできた。
どうしたんだろう? さっきまであまり元気がなさそうだったのに、今度は血相を変えて……何か慌てているようにも見える。
「わ、私も一緒に……」
「絢ちゃんはここでゆっくりしていて。さっきのお化け屋敷で相当驚かされて、いっぱい叫んで体力も結構使っちゃっただろうし」
「で、でも……」
「眠気はもう飛んだよ。絢ちゃんがたくさん叫んだからかな。大丈夫だよ、買ったらすぐに戻ってくるから」
絢ちゃんは私をここに連れてきてくれて。絶叫マシンで意識が飛びそうになった私をずっと側で介抱してくれて。ずっと手を離さないでいてくれて。間違っているかもしれないけど、1人の時間を作って絢ちゃんをゆっくりさせてあげたい。
「何か食べたいものはある?」
「……焼きそば」
「分かった。焼きそば買ってくるから。絢ちゃんはゆっくり休んでて」
「うん。……それと、遥香」
「どうかした?」
「遥香に大事な話があるんだ。昼食を食べたらゆっくりと話したい」
「うん、分かったよ」
真剣な表情をしながら、大事な話があると言われるとドキドキしちゃうよ。
「……あと、何かあったらすぐに連絡して。絶対だからね」
「そんなこと言われなくても、そのつもりだよ」
「気をつけて行ってきてね」
「うん」
私は絢ちゃんに手を振って、広場から離れる。
絢ちゃんの話したい大切な話が気になって仕方ない。その内容を知るためにも、早く焼きそばを買わなきゃ。
パンフレットを頼りに飲食店の並ぶエリアまで辿り着く。様々な料理の匂いが混ざっているけれど、どれも美味しそうな匂いなので嫌な気には全くならない。
端の店から順番にメニューを見ていき、半分くらい来たところにやっとメニューに焼きそばのあるお店を見つけた。
「よし、さっそく――」
その店の待機列に並ぼうとしたときだった。
「んんんっ!」
誰かによって薬を染みこませた布を嗅がされてしまう。何も抵抗できないまま意識が次第に薄れていく。そして、意識の失う直前に感じたものは――。
最近、どこかで知った甘い香りだった。
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