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Fragrance 1-コイノカオリ-
第28話『No Gender』
気づけば互いに向き合いながらベッドの上で横になっていた。4月の夜はまだまだ寒いので肩の辺りまでふとんをかける。
「……しちゃったね、遥香」
「勢いでしちゃったね。途中で止めるって思ってた」
「だって、遥香の喘ぐ声が可愛いから、つい……したくなっちゃって。それに、凄く気持ち良かったから」
「……私も同じ」
そして、再びキスを交わした。さっきのことに比べればキスなんて、全然えっちなことじゃないと思えてしまう。
「遥香と直に触れ合いたかったんだ。それで色々と考えたらこれしかなくて。いきなりで大丈夫だった?」
「ちょっと驚いたけど、嬉しかったよ。私のことそこまで好きになってくれていたんだって分かったから」
「……今度するときはもっと先のことまでしようか」
「そうだね。今よりも深い仲になってから、もっと先のことをしよう。お楽しみは先にとっておかなくちゃね」
「……遥香って結構えっちなんだね」
「絢ちゃんに言われたくないよ。ていうか、絢ちゃんから誘ってきたじゃない。妙にリードが上手かったし。本当は私より前に他の女の子としてたんじゃないの?」
物凄く人気のある絢ちゃんなら一度くらい経験があっても不思議じゃない。私が最初であることに越したことはないんだけど。
「言ったよね。観覧車でキスをしたとき、あれがファーストキスだったって。キスもしていない相手とさっきみたいなことはしないよ」
絢ちゃんは焦った表情を何一つ見せずに、いつも通りに微笑みながら言った。嘘をついていない何よりの証拠だ。
「……そっか。それを聞いて安心した。やっぱり絢ちゃんと恋人になったからには、私は絢ちゃんの色々な初めてと最後でありたいし、絢ちゃんには私の色々な初めてと最後であってほしいんだ。欲張りすぎだと思うけどね。上手く言えているか不安だな」
「……遥香の言いたいことは分かるよ。私も同じ気持ちだからね」
絢ちゃんはゆっくりと私のことを抱きしめた。ああ、この温もりと匂いが愛しくてたまらない。絢ちゃんの全てを盗みたいと思ってしまう。
しばらく時間が経って落ち着いたところで、私は絢ちゃんにあることを訊いてみる。
「そういえばさ、絢ちゃん。ずっと気になっていたことだけど」
「なに?」
「絢ちゃんって男の人は好きにならなかったの?」
絢ちゃんだって1人の可愛い女の子。女子から告白されてばかりだけど、好意を抱いた男子がいてもおかしくない。そんな男子がいたかどうかどうしても気になった。
「……かっこいい有名人は好きになることもあるけど、同級生とかそういうのでは好きになる男子はいなかったかな」
「そうなんだ……」
好きになった男子がいないと聞いて、ちょっと安心してしまう。
「でも、遥香のお兄さんみたいな人はタイプかもしれない。遥香を探しているとき、ついお兄さんに泣いて抱きついちゃったし……」
「え、えええっ!」
衝撃の事実が発覚した。
まさか、ここでお兄ちゃんが出てくるとは。しかも、泣いて抱きついたなんて。お兄ちゃんは大丈夫だったかな。
お兄ちゃんがタイプなら仕方ないと思えるけど、何とも言えない気分になる。兄じゃなかったら絶対にお兄ちゃんと結婚すると思ったくらいだから。
「遥香。もしかして嫉妬してる?」
「……当たり前だよ。ていうか、凄く複雑な気分……」
「大丈夫だよ、私には遥香しかいないって思っているから。だから、許して」
物凄い近距離で絢ちゃんに言われ、その直後にキスをされたら許す他はない。
「……許すよ。でも、お兄ちゃんには奈央ちゃんがいるんだからね」
「その人ってお兄さんと一緒にいた女の人だよね」
「そうそう。まだ、奈央ちゃんの片思い中だけど」
「……その人もいつか、想いを伝えられるといいね」
「そうだね」
「……あとさ、私を好きになることに躊躇とかそういうこと考えなかった?」
「どういうこと?」
「女子を好きになっちゃうことがおかしいとか、そういうこと」
女子校に入学したら、女子を好きになることもあるんじゃないかって夢や憧れのように思っていた時期もあった。
でも、実際に絢ちゃんを好きになって、一度落ち着いて考えてみたら……それって凄くおかしくて気持ち悪いことなんじゃないかと思ってしまった。
――相手が男でも女でも、人を好きになることに変わりはない。
お兄ちゃんのそんな一言で私は心の整理ができて、絢ちゃんと付き合えるように頑張ろうって思えた。絢ちゃんも私と同じことを感じたのか、私のことが好きだと知ってからそこが非常に気になっていた。
「私は一度でも戸惑ったから。絢ちゃんも同じことを思ったのかなって」
「……私は感じたことないなぁ。出会ってからずっと遥香のことが好きだし」
「そっか」
「だって、相手が男でも女でも、人を好きになることに変わりはないからね」
「……お兄ちゃんと全く同じこと言ってきた。やっぱり絢ちゃんは可愛くてかっこいい彼女だよ」
「女の子同士で結婚しちゃいけないけど、好きになって一緒にいることは別に悪いことじゃないよね。そう考えたら、好きなら相手が女子でもいいかなって」
私も最初からそういう風に考えられるようになれれば良かった。絢ちゃんの言うことはまさにその通りだと思う。
「でもさ、戸惑うこともいいことだよ。自分はそれでいいのかって考えることは凄く大切だと思うから。その上で今があるから、私はとても嬉しいよ」
今の話をして気分を悪くしちゃうかなって心配したけど、まさか嬉しいって言ってくれるなんて。彼女の優しさには特別な温かさがある。
「……じゃあ、そろそろパジャマを着て寝ようか。このままだと風邪引いちゃうし」
「ちょっと汗もかいちゃったしね。寝冷えしちゃう」
今の一言で現実に引き戻された感じがしたけど、風邪引いちゃ駄目だしね。
今日は一生忘れない思い出がたくさんできた。悲しいこともあったけど、それ以上に楽しいことや嬉しいことがあっていい1日だった。今日のことは忘れないんじゃなくて、忘れたくない。強くそう思った。
私と絢ちゃんはちゃんとパジャマに着替え、程なくして眠りに入るのであった。
「……しちゃったね、遥香」
「勢いでしちゃったね。途中で止めるって思ってた」
「だって、遥香の喘ぐ声が可愛いから、つい……したくなっちゃって。それに、凄く気持ち良かったから」
「……私も同じ」
そして、再びキスを交わした。さっきのことに比べればキスなんて、全然えっちなことじゃないと思えてしまう。
「遥香と直に触れ合いたかったんだ。それで色々と考えたらこれしかなくて。いきなりで大丈夫だった?」
「ちょっと驚いたけど、嬉しかったよ。私のことそこまで好きになってくれていたんだって分かったから」
「……今度するときはもっと先のことまでしようか」
「そうだね。今よりも深い仲になってから、もっと先のことをしよう。お楽しみは先にとっておかなくちゃね」
「……遥香って結構えっちなんだね」
「絢ちゃんに言われたくないよ。ていうか、絢ちゃんから誘ってきたじゃない。妙にリードが上手かったし。本当は私より前に他の女の子としてたんじゃないの?」
物凄く人気のある絢ちゃんなら一度くらい経験があっても不思議じゃない。私が最初であることに越したことはないんだけど。
「言ったよね。観覧車でキスをしたとき、あれがファーストキスだったって。キスもしていない相手とさっきみたいなことはしないよ」
絢ちゃんは焦った表情を何一つ見せずに、いつも通りに微笑みながら言った。嘘をついていない何よりの証拠だ。
「……そっか。それを聞いて安心した。やっぱり絢ちゃんと恋人になったからには、私は絢ちゃんの色々な初めてと最後でありたいし、絢ちゃんには私の色々な初めてと最後であってほしいんだ。欲張りすぎだと思うけどね。上手く言えているか不安だな」
「……遥香の言いたいことは分かるよ。私も同じ気持ちだからね」
絢ちゃんはゆっくりと私のことを抱きしめた。ああ、この温もりと匂いが愛しくてたまらない。絢ちゃんの全てを盗みたいと思ってしまう。
しばらく時間が経って落ち着いたところで、私は絢ちゃんにあることを訊いてみる。
「そういえばさ、絢ちゃん。ずっと気になっていたことだけど」
「なに?」
「絢ちゃんって男の人は好きにならなかったの?」
絢ちゃんだって1人の可愛い女の子。女子から告白されてばかりだけど、好意を抱いた男子がいてもおかしくない。そんな男子がいたかどうかどうしても気になった。
「……かっこいい有名人は好きになることもあるけど、同級生とかそういうのでは好きになる男子はいなかったかな」
「そうなんだ……」
好きになった男子がいないと聞いて、ちょっと安心してしまう。
「でも、遥香のお兄さんみたいな人はタイプかもしれない。遥香を探しているとき、ついお兄さんに泣いて抱きついちゃったし……」
「え、えええっ!」
衝撃の事実が発覚した。
まさか、ここでお兄ちゃんが出てくるとは。しかも、泣いて抱きついたなんて。お兄ちゃんは大丈夫だったかな。
お兄ちゃんがタイプなら仕方ないと思えるけど、何とも言えない気分になる。兄じゃなかったら絶対にお兄ちゃんと結婚すると思ったくらいだから。
「遥香。もしかして嫉妬してる?」
「……当たり前だよ。ていうか、凄く複雑な気分……」
「大丈夫だよ、私には遥香しかいないって思っているから。だから、許して」
物凄い近距離で絢ちゃんに言われ、その直後にキスをされたら許す他はない。
「……許すよ。でも、お兄ちゃんには奈央ちゃんがいるんだからね」
「その人ってお兄さんと一緒にいた女の人だよね」
「そうそう。まだ、奈央ちゃんの片思い中だけど」
「……その人もいつか、想いを伝えられるといいね」
「そうだね」
「……あとさ、私を好きになることに躊躇とかそういうこと考えなかった?」
「どういうこと?」
「女子を好きになっちゃうことがおかしいとか、そういうこと」
女子校に入学したら、女子を好きになることもあるんじゃないかって夢や憧れのように思っていた時期もあった。
でも、実際に絢ちゃんを好きになって、一度落ち着いて考えてみたら……それって凄くおかしくて気持ち悪いことなんじゃないかと思ってしまった。
――相手が男でも女でも、人を好きになることに変わりはない。
お兄ちゃんのそんな一言で私は心の整理ができて、絢ちゃんと付き合えるように頑張ろうって思えた。絢ちゃんも私と同じことを感じたのか、私のことが好きだと知ってからそこが非常に気になっていた。
「私は一度でも戸惑ったから。絢ちゃんも同じことを思ったのかなって」
「……私は感じたことないなぁ。出会ってからずっと遥香のことが好きだし」
「そっか」
「だって、相手が男でも女でも、人を好きになることに変わりはないからね」
「……お兄ちゃんと全く同じこと言ってきた。やっぱり絢ちゃんは可愛くてかっこいい彼女だよ」
「女の子同士で結婚しちゃいけないけど、好きになって一緒にいることは別に悪いことじゃないよね。そう考えたら、好きなら相手が女子でもいいかなって」
私も最初からそういう風に考えられるようになれれば良かった。絢ちゃんの言うことはまさにその通りだと思う。
「でもさ、戸惑うこともいいことだよ。自分はそれでいいのかって考えることは凄く大切だと思うから。その上で今があるから、私はとても嬉しいよ」
今の話をして気分を悪くしちゃうかなって心配したけど、まさか嬉しいって言ってくれるなんて。彼女の優しさには特別な温かさがある。
「……じゃあ、そろそろパジャマを着て寝ようか。このままだと風邪引いちゃうし」
「ちょっと汗もかいちゃったしね。寝冷えしちゃう」
今の一言で現実に引き戻された感じがしたけど、風邪引いちゃ駄目だしね。
今日は一生忘れない思い出がたくさんできた。悲しいこともあったけど、それ以上に楽しいことや嬉しいことがあっていい1日だった。今日のことは忘れないんじゃなくて、忘れたくない。強くそう思った。
私と絢ちゃんはちゃんとパジャマに着替え、程なくして眠りに入るのであった。
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