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Fragrance 4-アメノカオリ-
プロローグ『梅雨』
Fragrance 4-アメノカオリ-
6月11日、火曜日。
昨日から梅雨入りした関東地方は、今日も雨が降っている。シトシトと降る雨に加え、暑さが体に纏わり付くようになるこの時期はどうしても好きになれない。早く梅雨明けしてくれないかな。例年通りなら、その頃には夏休み目前か突入しているし。
何となく気持ちが乗らないまま、午前中の授業が終わった。
昼休みになり、私はいつものように絢ちゃん、杏ちゃん、美咲ちゃんの4人でお昼ご飯を食べ始める。
絢ちゃんと付き合い始めて約2ヶ月。絢ちゃんと恋人宣言をしてからも1ヶ月以上経ったので、学校でも絢ちゃんと一緒にいるのが自然になった。
「遥香、卵焼き食べる? 私、作ってみたんだけど」
「うん」
「じゃあ、食べさせてあげる。あ~ん」
「あ、あ~ん……」
絢ちゃんに卵焼きを食べさせてもらう。
「美味しいよ。上手になったね」
「ありがとう、遥香」
そう言う絢ちゃんは、ほんのりと頬を赤くしながら笑っていた。
「相変わらずお熱いねぇ、お2人さんは。今日もやってるよ」
「そうですね、杏ちゃん。お隣はお熱いですねぇ」
と、杏ちゃんと美咲ちゃんは私達のことを面白がるように笑う。これが最近の定番になりつつある。他の人に見られるのはちょっと恥ずかしいけど、絢ちゃんが頑張って作ってきてくれるんだもん。それに、食べさせてくれるのはとても嬉しいし。
杏ちゃんは先月の一件があってからすぐに、卯月さんと付き合い始めた。天羽女子に受験をしようとしている卯月さんのために、彼女の家に毎日行って家庭教師をしているらしい。勉強も交際も共に順調。なので、卯月さんとの惚気話を聞くことも。
「どうかしたの、ハル。あたしの顔を見てニヤニヤしちゃって」
「ううん、何でもないよ」
「本当に? 何か考えていたんじゃないの?」
「……杏ちゃんの笑顔が可愛いなと思って」
卯月さんと付き合い始めてから、杏ちゃんの表情がより明るくなった気がする。恋人ができると、やっぱりいい方に変わっていくんだね。
「……むぅ」
「あ、絢ちゃん……もしかして、怒ってる?」
「別に怒ってないよ。ただ、ちょっと、その……」
と言いながら、絢ちゃんは頬を膨らまして私のことをチラチラと見ている。これは完全に嫉妬だね。
「絢ちゃんも可愛いよ」
よしよし、と絢ちゃんの頭を撫でると、絢ちゃんは微笑んだ。私と付き合い始めてから彼女の表情はとても豊かになった気がする。それまではかっこいい高嶺の花のような存在だったけど、今は本当に親しみやすい女の子。より魅力的になっていると思う。
「原田さんって意外と甘えん坊さんかもしれませんね」
「別に私は甘えん坊さんじゃ……」
「2人きりになったときはけっこう甘えてきてるじゃん。ほら、この前、私が風邪を引いたときなんて――」
「そ、その話はダメ! 恥ずかしいから……」
「原田さんがお見舞いに行ったのは知っていましたが、何かあったんですか?」
「なになに? 凄く気になるんだけど」
「ええとね……」
2人に風邪を引いたときの話をしようとしたときだった。
――ピンポンパンポーン。
突然、スピーカーから放送のチャイム音が鳴る。
『1年2組の坂井遥香さんと原田絢さん。至急、生徒会室まで来てください。繰り返します。1年2組の坂井遥香さんと原田絢さん。至急、生徒会室まで来てください』
女性の声で私と絢ちゃんが呼び出される。呼び出される場所が生徒会室だし、この声の主は教師じゃなくて生徒の可能性が高そうだ。
「私と遥香……か。生徒会室に呼ばれるなんて。何の用なんだろう?」
「分からないなぁ」
職員室ならまだしも、生徒会室って。それに、絢ちゃんと一緒に。呼び出される理由が全く分からない。
「行ってみれば分かることさ。行こう、遥香」
「そうだね、絢ちゃん。2人は私達のことは気にせずに食べちゃってて」
「うん、分かった」
「いってらっしゃい。遥香ちゃん、原田さん」
絢ちゃんと一緒に生徒会室というのは不安だけど、まずは行ってみないと話にならない。
私と絢ちゃんは急いで生徒会室に向かうのであった。
6月11日、火曜日。
昨日から梅雨入りした関東地方は、今日も雨が降っている。シトシトと降る雨に加え、暑さが体に纏わり付くようになるこの時期はどうしても好きになれない。早く梅雨明けしてくれないかな。例年通りなら、その頃には夏休み目前か突入しているし。
何となく気持ちが乗らないまま、午前中の授業が終わった。
昼休みになり、私はいつものように絢ちゃん、杏ちゃん、美咲ちゃんの4人でお昼ご飯を食べ始める。
絢ちゃんと付き合い始めて約2ヶ月。絢ちゃんと恋人宣言をしてからも1ヶ月以上経ったので、学校でも絢ちゃんと一緒にいるのが自然になった。
「遥香、卵焼き食べる? 私、作ってみたんだけど」
「うん」
「じゃあ、食べさせてあげる。あ~ん」
「あ、あ~ん……」
絢ちゃんに卵焼きを食べさせてもらう。
「美味しいよ。上手になったね」
「ありがとう、遥香」
そう言う絢ちゃんは、ほんのりと頬を赤くしながら笑っていた。
「相変わらずお熱いねぇ、お2人さんは。今日もやってるよ」
「そうですね、杏ちゃん。お隣はお熱いですねぇ」
と、杏ちゃんと美咲ちゃんは私達のことを面白がるように笑う。これが最近の定番になりつつある。他の人に見られるのはちょっと恥ずかしいけど、絢ちゃんが頑張って作ってきてくれるんだもん。それに、食べさせてくれるのはとても嬉しいし。
杏ちゃんは先月の一件があってからすぐに、卯月さんと付き合い始めた。天羽女子に受験をしようとしている卯月さんのために、彼女の家に毎日行って家庭教師をしているらしい。勉強も交際も共に順調。なので、卯月さんとの惚気話を聞くことも。
「どうかしたの、ハル。あたしの顔を見てニヤニヤしちゃって」
「ううん、何でもないよ」
「本当に? 何か考えていたんじゃないの?」
「……杏ちゃんの笑顔が可愛いなと思って」
卯月さんと付き合い始めてから、杏ちゃんの表情がより明るくなった気がする。恋人ができると、やっぱりいい方に変わっていくんだね。
「……むぅ」
「あ、絢ちゃん……もしかして、怒ってる?」
「別に怒ってないよ。ただ、ちょっと、その……」
と言いながら、絢ちゃんは頬を膨らまして私のことをチラチラと見ている。これは完全に嫉妬だね。
「絢ちゃんも可愛いよ」
よしよし、と絢ちゃんの頭を撫でると、絢ちゃんは微笑んだ。私と付き合い始めてから彼女の表情はとても豊かになった気がする。それまではかっこいい高嶺の花のような存在だったけど、今は本当に親しみやすい女の子。より魅力的になっていると思う。
「原田さんって意外と甘えん坊さんかもしれませんね」
「別に私は甘えん坊さんじゃ……」
「2人きりになったときはけっこう甘えてきてるじゃん。ほら、この前、私が風邪を引いたときなんて――」
「そ、その話はダメ! 恥ずかしいから……」
「原田さんがお見舞いに行ったのは知っていましたが、何かあったんですか?」
「なになに? 凄く気になるんだけど」
「ええとね……」
2人に風邪を引いたときの話をしようとしたときだった。
――ピンポンパンポーン。
突然、スピーカーから放送のチャイム音が鳴る。
『1年2組の坂井遥香さんと原田絢さん。至急、生徒会室まで来てください。繰り返します。1年2組の坂井遥香さんと原田絢さん。至急、生徒会室まで来てください』
女性の声で私と絢ちゃんが呼び出される。呼び出される場所が生徒会室だし、この声の主は教師じゃなくて生徒の可能性が高そうだ。
「私と遥香……か。生徒会室に呼ばれるなんて。何の用なんだろう?」
「分からないなぁ」
職員室ならまだしも、生徒会室って。それに、絢ちゃんと一緒に。呼び出される理由が全く分からない。
「行ってみれば分かることさ。行こう、遥香」
「そうだね、絢ちゃん。2人は私達のことは気にせずに食べちゃってて」
「うん、分かった」
「いってらっしゃい。遥香ちゃん、原田さん」
絢ちゃんと一緒に生徒会室というのは不安だけど、まずは行ってみないと話にならない。
私と絢ちゃんは急いで生徒会室に向かうのであった。
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