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Fragrance 5-ミヤビナカオリ-
第6話『嵐の前』
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7月2日、火曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、そこには薄暗い天井が見えていた。
「寝ていたのか……」
雅先輩が寝てからも、万が一のことを考えて眠らないように頑張っていたんだけれど、やっぱり睡魔には勝てなかったみたいだ。
隣を見てみると雅先輩の姿がない。彼女は3限からだと言っていたので、大学に1人で行ってしまったということはないだろう。
スマートフォンで時刻を確認すると、午前8時過ぎ。家でも2限からならもう少し寝ていても大丈夫な時間だ。ここは学校から徒歩10分だし、二度寝でもしようかな……。
「あっ、起きたね」
桃色のエプロン姿の雅先輩が寝室の中に入ってきた。エプロンの下もTシャツにミニスカートというかなりシンプルな恰好。
雅先輩はベッドで横になっている俺の側まで近づいてくる。
「隼人君の寝顔、可愛かったよ」
「……俺が起きるまでの間に何か変なことをしてないですよね?」
俺がそう訊くと、笑顔だった雅先輩は少し不機嫌そうに頬を膨らませる。
「心外だなぁ。私はただ朝ご飯を作っていただけだよ。それに、隼人君の寝ている間にえっちなことしても全然気持ち良くないもん」
まるで経験者のような言い方だなぁ。まあ、昨晩もそういうことをするときは起こしてと言っていたくらいだし。
一応、俺の体をくまなくチェックしてみるが、どこにも変なところはない。雅先輩はただ俺の隣で寝てくれたみたいだ。
「隼人君の匂いを堪能して幸せな気分になってたかな」
そう言う雅先輩はうっとりとした表情になっている。この人、匂いフェチなのか?
「何だかいいね。お家で好きな人と一緒に朝を迎えられるなんて」
「……そうですか」
この言い方だと、雅先輩は好きな人と一緒に寝た経験は一度もなさそうだ。
思いの外ぐっすりと眠ってしまったので、気分は悪くない。あと、一晩中冷房がかかっていて涼しいのが良かったのかも。今日も蒸し暑いだろうし。
雅先輩の家は角なので、寝室にも窓が付いている。カーテンを開けて外の様子を見ると、空は曇天で小雨が降っている。まさに、梅雨の空模様だ。
「昨日は晴れていたのに、今日は雨ですか」
「きっと、昨日は梅雨の間の青空だったんだよ」
「こういう日ってじめじめしているんでしょうね。まだ、昨日のような暑さの方が我慢できますね」
「私も。どうせ暑いなら晴れてくれた方が良いよ。梅雨のこの時期が1年の中で一番嫌いかもしれない」
「俺も同じです」
こういう普通の話をしているときはいい人だと思えるんだけどな。嫌なことでも気が合うし。
「さっ、朝ご飯もできたから一緒に食べよう」
「……はい」
その後、俺は雅先輩と一緒に彼女の作った朝食を食べる。
意外にも和食だった。一つ一つに雅先輩の頑張りが込められているのが分かって、どれも美味しかった。今回の背景はさっぱり分からないけれど、雅先輩が俺とのこの関係を真剣に深めようとしていることは分かった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様です。どう、だった?」
雅先輩はちょっと不安げに訊いてくる。
「美味しかったですよ。雅先輩って料理がお上手なんですね」
「そ、そんなことないよ」
と言いながらも、雅先輩は笑みを隠すことはできない。照れくさそうに、嬉しそうに彼女は笑う。こういう反応は本当に可愛く思える。
「ねえ、隼人君」
「何ですか?」
「……今日は雨だからさ、一緒の傘に入って大学に行こうよ。ね?」
相合い傘で行きたいのか。雨ということが分かってから、このことについては想定していた。一晩、一緒のベッドで寝たことで少し耐性ができたおかげか、10分ぐらいの相合い傘くらいならマシだと思えてきた。
「いいですよ、雅先輩」
「……ありがと、隼人君。私、傘持っていかないからね」
今日は一日中雨らしい。傘を持っていかないってことは、帰りも俺と相合い傘をする期満々ってことか。そういうことをさりげなく決めてしまうところが雅先輩の凄さかな。
その後、朝のコーヒーでゆっくりしてから、俺と雅先輩は相合い傘をして潮浜国立大学に行くのであった。
午前11時。
雅先輩と一緒に登校するだけで、周りの学生から注目を浴びる。相合い傘で雅先輩に腕を組まれているから、この時点で俺達が付き合っていると認識されるだろう。これも雅先輩の作戦の一つなんだろうな。
経済学部の授業が行われる建物に行くと、更に注目が集まる。あの2人、付き合ってるのという声が俺の耳にも入ってきた。もう、これで学部中に、いずれはキャンパス中に俺達が付き合っているのが広まっていくだろう。
そして、俺が2時限目に受ける講義が行われる教室の前に到着する。
「じゃあ、俺は講義を受けるので雅先輩は――」
「何言ってるの。私も一緒に行くよ」
「ど、どうしてですか。この講義、先輩は単位取ったんじゃないですか? それ以前に、今日は3限目からだって……」
「別にこの授業は選択科目だし、2年生がいてもおかしくないでしょ? それにこの講義の単位は取ったけど、再度受けるっていうのは勉強の意欲があっていいんじゃない?」
そう言われると1人にしておくのも悪い気がしてくるな。まあ、実際は俺の隣にいたいだけなんだろうけど。
雅先輩がいなかったら、水澤や岩坂に本当のことを話そうかと思っていたんだけど、それはまた後にするか。3限になれば必然的にそうなるし。
「……じゃあ、一緒に講義を受けましょうか」
「うん、そうしよう。分からなかったら私が横から教えてあげるから」
「ありがとうございます」
こうなったら今の状況を少しでもいい方に捉えないと。去年、単位を取得している雅先輩という心強い味方が隣にいると思えばいい。
教室の中に入ると、雅先輩がいるせいか静かだったのが、急にざわつき始める。大半は1年生で俺のことを知っている人も多いせいか、そのざわめきは留まるどころか大きくなっていくばかりだ。
そんな中、俺は水澤と岩坂の姿を発見する。2人も俺達に気付いたみたいだけれど、驚いているのか目を見開いている。
「隣、いいか?」
「あ、ああ……いいけれど」
俺は水澤の隣に座る。そして、雅先輩は俺の隣に座る。すっかりと俺の彼女というポジションを周りに認識させている。
「なあ、坂井。神崎先輩と付き合っているのか」
「……ま、まあな」
「昨日から私と同棲しているの。だから、今日は一緒に来たんだよね」
少し大きめの声で雅先輩が言うので、また周りがざわめく。どうやら、雅先輩は周りを固めてきているみたいだ。そういう空気にして、俺が本当のことを言えないようにしている。言ったとしても、雅先輩の評判は高いからそんなことしないと信じない人が大半。それを計算しているんだろう。
ただ、水澤と岩坂は周りの学生とは違って、俺達のことを懐疑的に見ている。それはおそらく女性恐怖症のことを知っているからだろう。
「……へえ、そうなのか」
「意外だね、坂井君が神崎先輩と付き合うなんて」
「じゃあ、昨日の昼に呼び出されたとき、坂井は……」
「私が好きだって告白して、付き合うことになったの。坂井君、意外と恥ずかしがり屋さんだから、みんなに本当のことをなかなか言えなかったんだって」
雅先輩は嬉しそうに2人に話す。
「そうだったんですか。岩坂の言うとおり、俺も意外だなって思います」
2人の言う意外だな、と言うのは俺の女性恐怖症からだろう。全然面識のない雅先輩からいきなり告白され、付き合ってしまうという過程が信じられないのかもしれない。
そして、数分後に講義をする先生が教室の中に入ってくると、このざわめきは自然と収まっていくのであった。
講義中も雅先輩がいるためか、常に誰かからこっちのことを見ている学生がいた。また、講義をしている先生も何でここにいるんだ、と言わんばかりの表情で雅先輩のことを数回見ていた。
午後12時40分。
2時限目の講義が終わり、これから食堂に行って昼食を食べる予定だ。3時限目が空いているのでそこからマルチユーススペースに行く流れだ。
「これからどうするの? 隼人君」
「食堂に行って昼食を食べるつもりですけど」
「そっか。じゃあ、一緒に行こうか。2人のお友達も一緒に行こうよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうだね」
水澤と岩坂は雅
先輩の提案を渋々受け入れる。
雅先輩が2人を誘うのは俺の友人だからなのか。それとも、周りの生徒とは違って全然騒がないからだろうか。
そして、教室を出て食堂に向かおうとしたときだった。
「……隼人」
奈央が俺達のことを鋭い目つきで見ていた。この1時間半ほどの間に、奈央にも俺達が付き合っているという話が流れてきたんだな。
「この状況について話を聞かせてくれないかな」
「……あ、ああ……」
ついに、一番の正念場がやってきた。このときがいつか必ず訪れるとは分かっていたけれど。
「修羅場だね、これは」
「……そういうことをこの場ではっきり言うなよ、お前。坂井、俺と岩坂は先に食堂に行ってるから」
「ああ、そうしてくれると有り難い」
まあ、修羅場なのは確かなんだけど。
このただならない雰囲気に周りの学生もさすがにざわつかない。きっと、岩坂と同じように修羅場だと思っているからだろう。
誰もが緊張している中、雅先輩だけは穏やかに笑っていた。
「ここで話すのも何だし、人のいない場所で話そうか」
雅先輩はそう言うと俺の手を引いて歩き始める。
俺達についていく奈央の表情は、怒りと悲しみが混ざり合っているように見えるのであった。
ゆっくりと目を覚ますと、そこには薄暗い天井が見えていた。
「寝ていたのか……」
雅先輩が寝てからも、万が一のことを考えて眠らないように頑張っていたんだけれど、やっぱり睡魔には勝てなかったみたいだ。
隣を見てみると雅先輩の姿がない。彼女は3限からだと言っていたので、大学に1人で行ってしまったということはないだろう。
スマートフォンで時刻を確認すると、午前8時過ぎ。家でも2限からならもう少し寝ていても大丈夫な時間だ。ここは学校から徒歩10分だし、二度寝でもしようかな……。
「あっ、起きたね」
桃色のエプロン姿の雅先輩が寝室の中に入ってきた。エプロンの下もTシャツにミニスカートというかなりシンプルな恰好。
雅先輩はベッドで横になっている俺の側まで近づいてくる。
「隼人君の寝顔、可愛かったよ」
「……俺が起きるまでの間に何か変なことをしてないですよね?」
俺がそう訊くと、笑顔だった雅先輩は少し不機嫌そうに頬を膨らませる。
「心外だなぁ。私はただ朝ご飯を作っていただけだよ。それに、隼人君の寝ている間にえっちなことしても全然気持ち良くないもん」
まるで経験者のような言い方だなぁ。まあ、昨晩もそういうことをするときは起こしてと言っていたくらいだし。
一応、俺の体をくまなくチェックしてみるが、どこにも変なところはない。雅先輩はただ俺の隣で寝てくれたみたいだ。
「隼人君の匂いを堪能して幸せな気分になってたかな」
そう言う雅先輩はうっとりとした表情になっている。この人、匂いフェチなのか?
「何だかいいね。お家で好きな人と一緒に朝を迎えられるなんて」
「……そうですか」
この言い方だと、雅先輩は好きな人と一緒に寝た経験は一度もなさそうだ。
思いの外ぐっすりと眠ってしまったので、気分は悪くない。あと、一晩中冷房がかかっていて涼しいのが良かったのかも。今日も蒸し暑いだろうし。
雅先輩の家は角なので、寝室にも窓が付いている。カーテンを開けて外の様子を見ると、空は曇天で小雨が降っている。まさに、梅雨の空模様だ。
「昨日は晴れていたのに、今日は雨ですか」
「きっと、昨日は梅雨の間の青空だったんだよ」
「こういう日ってじめじめしているんでしょうね。まだ、昨日のような暑さの方が我慢できますね」
「私も。どうせ暑いなら晴れてくれた方が良いよ。梅雨のこの時期が1年の中で一番嫌いかもしれない」
「俺も同じです」
こういう普通の話をしているときはいい人だと思えるんだけどな。嫌なことでも気が合うし。
「さっ、朝ご飯もできたから一緒に食べよう」
「……はい」
その後、俺は雅先輩と一緒に彼女の作った朝食を食べる。
意外にも和食だった。一つ一つに雅先輩の頑張りが込められているのが分かって、どれも美味しかった。今回の背景はさっぱり分からないけれど、雅先輩が俺とのこの関係を真剣に深めようとしていることは分かった。
「ご馳走様でした」
「お粗末様です。どう、だった?」
雅先輩はちょっと不安げに訊いてくる。
「美味しかったですよ。雅先輩って料理がお上手なんですね」
「そ、そんなことないよ」
と言いながらも、雅先輩は笑みを隠すことはできない。照れくさそうに、嬉しそうに彼女は笑う。こういう反応は本当に可愛く思える。
「ねえ、隼人君」
「何ですか?」
「……今日は雨だからさ、一緒の傘に入って大学に行こうよ。ね?」
相合い傘で行きたいのか。雨ということが分かってから、このことについては想定していた。一晩、一緒のベッドで寝たことで少し耐性ができたおかげか、10分ぐらいの相合い傘くらいならマシだと思えてきた。
「いいですよ、雅先輩」
「……ありがと、隼人君。私、傘持っていかないからね」
今日は一日中雨らしい。傘を持っていかないってことは、帰りも俺と相合い傘をする期満々ってことか。そういうことをさりげなく決めてしまうところが雅先輩の凄さかな。
その後、朝のコーヒーでゆっくりしてから、俺と雅先輩は相合い傘をして潮浜国立大学に行くのであった。
午前11時。
雅先輩と一緒に登校するだけで、周りの学生から注目を浴びる。相合い傘で雅先輩に腕を組まれているから、この時点で俺達が付き合っていると認識されるだろう。これも雅先輩の作戦の一つなんだろうな。
経済学部の授業が行われる建物に行くと、更に注目が集まる。あの2人、付き合ってるのという声が俺の耳にも入ってきた。もう、これで学部中に、いずれはキャンパス中に俺達が付き合っているのが広まっていくだろう。
そして、俺が2時限目に受ける講義が行われる教室の前に到着する。
「じゃあ、俺は講義を受けるので雅先輩は――」
「何言ってるの。私も一緒に行くよ」
「ど、どうしてですか。この講義、先輩は単位取ったんじゃないですか? それ以前に、今日は3限目からだって……」
「別にこの授業は選択科目だし、2年生がいてもおかしくないでしょ? それにこの講義の単位は取ったけど、再度受けるっていうのは勉強の意欲があっていいんじゃない?」
そう言われると1人にしておくのも悪い気がしてくるな。まあ、実際は俺の隣にいたいだけなんだろうけど。
雅先輩がいなかったら、水澤や岩坂に本当のことを話そうかと思っていたんだけど、それはまた後にするか。3限になれば必然的にそうなるし。
「……じゃあ、一緒に講義を受けましょうか」
「うん、そうしよう。分からなかったら私が横から教えてあげるから」
「ありがとうございます」
こうなったら今の状況を少しでもいい方に捉えないと。去年、単位を取得している雅先輩という心強い味方が隣にいると思えばいい。
教室の中に入ると、雅先輩がいるせいか静かだったのが、急にざわつき始める。大半は1年生で俺のことを知っている人も多いせいか、そのざわめきは留まるどころか大きくなっていくばかりだ。
そんな中、俺は水澤と岩坂の姿を発見する。2人も俺達に気付いたみたいだけれど、驚いているのか目を見開いている。
「隣、いいか?」
「あ、ああ……いいけれど」
俺は水澤の隣に座る。そして、雅先輩は俺の隣に座る。すっかりと俺の彼女というポジションを周りに認識させている。
「なあ、坂井。神崎先輩と付き合っているのか」
「……ま、まあな」
「昨日から私と同棲しているの。だから、今日は一緒に来たんだよね」
少し大きめの声で雅先輩が言うので、また周りがざわめく。どうやら、雅先輩は周りを固めてきているみたいだ。そういう空気にして、俺が本当のことを言えないようにしている。言ったとしても、雅先輩の評判は高いからそんなことしないと信じない人が大半。それを計算しているんだろう。
ただ、水澤と岩坂は周りの学生とは違って、俺達のことを懐疑的に見ている。それはおそらく女性恐怖症のことを知っているからだろう。
「……へえ、そうなのか」
「意外だね、坂井君が神崎先輩と付き合うなんて」
「じゃあ、昨日の昼に呼び出されたとき、坂井は……」
「私が好きだって告白して、付き合うことになったの。坂井君、意外と恥ずかしがり屋さんだから、みんなに本当のことをなかなか言えなかったんだって」
雅先輩は嬉しそうに2人に話す。
「そうだったんですか。岩坂の言うとおり、俺も意外だなって思います」
2人の言う意外だな、と言うのは俺の女性恐怖症からだろう。全然面識のない雅先輩からいきなり告白され、付き合ってしまうという過程が信じられないのかもしれない。
そして、数分後に講義をする先生が教室の中に入ってくると、このざわめきは自然と収まっていくのであった。
講義中も雅先輩がいるためか、常に誰かからこっちのことを見ている学生がいた。また、講義をしている先生も何でここにいるんだ、と言わんばかりの表情で雅先輩のことを数回見ていた。
午後12時40分。
2時限目の講義が終わり、これから食堂に行って昼食を食べる予定だ。3時限目が空いているのでそこからマルチユーススペースに行く流れだ。
「これからどうするの? 隼人君」
「食堂に行って昼食を食べるつもりですけど」
「そっか。じゃあ、一緒に行こうか。2人のお友達も一緒に行こうよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうだね」
水澤と岩坂は雅
先輩の提案を渋々受け入れる。
雅先輩が2人を誘うのは俺の友人だからなのか。それとも、周りの生徒とは違って全然騒がないからだろうか。
そして、教室を出て食堂に向かおうとしたときだった。
「……隼人」
奈央が俺達のことを鋭い目つきで見ていた。この1時間半ほどの間に、奈央にも俺達が付き合っているという話が流れてきたんだな。
「この状況について話を聞かせてくれないかな」
「……あ、ああ……」
ついに、一番の正念場がやってきた。このときがいつか必ず訪れるとは分かっていたけれど。
「修羅場だね、これは」
「……そういうことをこの場ではっきり言うなよ、お前。坂井、俺と岩坂は先に食堂に行ってるから」
「ああ、そうしてくれると有り難い」
まあ、修羅場なのは確かなんだけど。
このただならない雰囲気に周りの学生もさすがにざわつかない。きっと、岩坂と同じように修羅場だと思っているからだろう。
誰もが緊張している中、雅先輩だけは穏やかに笑っていた。
「ここで話すのも何だし、人のいない場所で話そうか」
雅先輩はそう言うと俺の手を引いて歩き始める。
俺達についていく奈央の表情は、怒りと悲しみが混ざり合っているように見えるのであった。
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