137 / 226
Fragrance 7-ナツノカオリ-
第20話『最終日』
7月26日、金曜日。
合宿最終日。昨日から引き続き、今日も曇り。昼過ぎから所によってはゲリラ豪雨になる予報になっている。
今日は最終日なので昼過ぎまで練習をして、夕方には天羽女子に到着する予定となっている。
恩田さんについては、一晩経って熱は下がったものの、体調が優れないということで練習には参加しないことになった。
「恩田さん、体調が戻らなかったか」
「そうみたいですね」
「まあ、練習ができるくらいに体調が良くなっていても、これまでのことを考えると私達の前に顔を出したくないのかもしれないな……」
「私も恩田さんと同じ立場だったら、参加するのを躊躇ってしまうかもしれません」
「そうだな。それに、インターハイの直前だし、今の恩田さんには精神的に負担になるようなことはなるべく避けた方がいいだろうね」
と、黒崎先輩は恩田さんが今日の練習に参加しないことに対して、理解を示した。私も同じ意見だ。一緒に練習できないことは残念だけど。
そして、恩田さんがいない中で短距離走、そしてリレーの練習を行なった。
昼休みになり、恩田さんとちょっと話したいと思って彼女の部屋の前まで行くけれど、体調が回復していないからか、ドアをノックしても返事がなかった。
午後になり、合宿が終了したときの両校の挨拶でようやく恩田さんの顔を見ることができたけれど、彼女の顔色は悪く、終始俯いていた。
解散してバスに乗る前に恩田さんに一声掛けようと思ったけれど、彼女はすぐさまに八神高校のバスに乗ってしまったので、結局言葉を交わすことはできなかった。
インターハイ前の練習という意味では今回の合宿は充実していたけど、恩田さんのことを考えると心残りが生じてしまった合宿だった。
「絢、色々とあったけど、今はインターハイの方に気持ちを向けていこう」
「……そうですね」
恩田さんのことは頭から離れないけれど、徐々にインターハイの方へ気持ちを向けていかないと。勝てるレースも勝てなくなる。
帰りのバスも黒崎先輩の隣の席に座る。私が窓側なのも同じだ。
「そういえば、黒崎先輩は草薙さんに告白したんですか?」
「……そんなわけないだろう。付き合うことになったら、バスに乗る前にキスを一度くらいしているよ」
「そ、そうですか……」
「教室で堂々とキスをして、坂井さんの恋人宣言をした絢にそんな反応されたくないんだけれどな」
「それは……そうですね」
あのときはクラスメイトや同学年の生徒だけ見ていた前だったからであって、他校の生徒の前でキスなんてできない。
「まあ、絢は天羽女子に帰ったら坂井さんと思う存分キスしろ」
「……そのつもりですけどね」
そうだ、遥香に何時頃に天羽女子に着くかどうか連絡しておかないと。今は午後2時過ぎだから、多分……4時くらいまでには天羽女子に着くだろう。
『遥香。今、天羽女子に向かって出発したよ。天羽女子には4時くらいに着くと思うから』
よし、送信……っと。これで遥香が読めば大丈夫だろう。
そして、すぐに送ったメッセージに既読と表示され、
『分かったよ。待ってるね』
と、遥香からメッセージが返ってきた。
「いつ天羽女子へ帰るっていうメールを坂井さんに送っていたのかな?」
「どうして分かったんですか」
「坂井さんが話題に出ているタイミングでメールをするとしたら、その相手は彼女くらいしかいないだろう。それに、これから帰るんだから何時に帰るのか伝えているんじゃないかなぁ、って。行くときだって見送ってくれていたからね」
「凄いですね。先輩、頭いいなぁ……」
「……そう思える絢は頭が悪いんじゃないか」
「し、失礼ですね! 赤点は取りませんでしたよ!」
試験前に遥香に勉強を教えてもらったおかげ、なんだけれどね。赤点を一つでも取っていたら、インターハイが終わったら赤点課題に追われていたところだよ。遥香達と旅行に行けなくなっていたかもしれない。
「そっか。じゃあ、インターハイでも赤点を取らないように頑張りなよ」
「もちろんですよ。というか、目指すは優勝ですから」
「うん、いい心構えだね。今の絢の言葉を聞いて安心できたからか、何だか眠くなってきちゃったよ」
「そうですか。ゆっくりと休んでください」
私も眠くなってきた。5日間の練習の疲れが溜まったからかな。
「じゃあ、お言葉に甘えて。私は寝るよ。起きていたらでいいから、天羽女子の近くになったら起こしてね」
「はい、分かりました」
そう言って、黒崎先輩はジャージのポケットから取り出したアイマスクを付けて眠りに入ってしまった。
「……私も寝るか」
LINEで遥香とメッセージのやり取りをするのもありだけれど、2時間も経てば会えるんだから話す楽しみを取っておきたい。
黒崎先輩のようにアイマスクは持っていないので、カーテンを閉めて私もしばしの眠りにつくのであった。
合宿最終日。昨日から引き続き、今日も曇り。昼過ぎから所によってはゲリラ豪雨になる予報になっている。
今日は最終日なので昼過ぎまで練習をして、夕方には天羽女子に到着する予定となっている。
恩田さんについては、一晩経って熱は下がったものの、体調が優れないということで練習には参加しないことになった。
「恩田さん、体調が戻らなかったか」
「そうみたいですね」
「まあ、練習ができるくらいに体調が良くなっていても、これまでのことを考えると私達の前に顔を出したくないのかもしれないな……」
「私も恩田さんと同じ立場だったら、参加するのを躊躇ってしまうかもしれません」
「そうだな。それに、インターハイの直前だし、今の恩田さんには精神的に負担になるようなことはなるべく避けた方がいいだろうね」
と、黒崎先輩は恩田さんが今日の練習に参加しないことに対して、理解を示した。私も同じ意見だ。一緒に練習できないことは残念だけど。
そして、恩田さんがいない中で短距離走、そしてリレーの練習を行なった。
昼休みになり、恩田さんとちょっと話したいと思って彼女の部屋の前まで行くけれど、体調が回復していないからか、ドアをノックしても返事がなかった。
午後になり、合宿が終了したときの両校の挨拶でようやく恩田さんの顔を見ることができたけれど、彼女の顔色は悪く、終始俯いていた。
解散してバスに乗る前に恩田さんに一声掛けようと思ったけれど、彼女はすぐさまに八神高校のバスに乗ってしまったので、結局言葉を交わすことはできなかった。
インターハイ前の練習という意味では今回の合宿は充実していたけど、恩田さんのことを考えると心残りが生じてしまった合宿だった。
「絢、色々とあったけど、今はインターハイの方に気持ちを向けていこう」
「……そうですね」
恩田さんのことは頭から離れないけれど、徐々にインターハイの方へ気持ちを向けていかないと。勝てるレースも勝てなくなる。
帰りのバスも黒崎先輩の隣の席に座る。私が窓側なのも同じだ。
「そういえば、黒崎先輩は草薙さんに告白したんですか?」
「……そんなわけないだろう。付き合うことになったら、バスに乗る前にキスを一度くらいしているよ」
「そ、そうですか……」
「教室で堂々とキスをして、坂井さんの恋人宣言をした絢にそんな反応されたくないんだけれどな」
「それは……そうですね」
あのときはクラスメイトや同学年の生徒だけ見ていた前だったからであって、他校の生徒の前でキスなんてできない。
「まあ、絢は天羽女子に帰ったら坂井さんと思う存分キスしろ」
「……そのつもりですけどね」
そうだ、遥香に何時頃に天羽女子に着くかどうか連絡しておかないと。今は午後2時過ぎだから、多分……4時くらいまでには天羽女子に着くだろう。
『遥香。今、天羽女子に向かって出発したよ。天羽女子には4時くらいに着くと思うから』
よし、送信……っと。これで遥香が読めば大丈夫だろう。
そして、すぐに送ったメッセージに既読と表示され、
『分かったよ。待ってるね』
と、遥香からメッセージが返ってきた。
「いつ天羽女子へ帰るっていうメールを坂井さんに送っていたのかな?」
「どうして分かったんですか」
「坂井さんが話題に出ているタイミングでメールをするとしたら、その相手は彼女くらいしかいないだろう。それに、これから帰るんだから何時に帰るのか伝えているんじゃないかなぁ、って。行くときだって見送ってくれていたからね」
「凄いですね。先輩、頭いいなぁ……」
「……そう思える絢は頭が悪いんじゃないか」
「し、失礼ですね! 赤点は取りませんでしたよ!」
試験前に遥香に勉強を教えてもらったおかげ、なんだけれどね。赤点を一つでも取っていたら、インターハイが終わったら赤点課題に追われていたところだよ。遥香達と旅行に行けなくなっていたかもしれない。
「そっか。じゃあ、インターハイでも赤点を取らないように頑張りなよ」
「もちろんですよ。というか、目指すは優勝ですから」
「うん、いい心構えだね。今の絢の言葉を聞いて安心できたからか、何だか眠くなってきちゃったよ」
「そうですか。ゆっくりと休んでください」
私も眠くなってきた。5日間の練習の疲れが溜まったからかな。
「じゃあ、お言葉に甘えて。私は寝るよ。起きていたらでいいから、天羽女子の近くになったら起こしてね」
「はい、分かりました」
そう言って、黒崎先輩はジャージのポケットから取り出したアイマスクを付けて眠りに入ってしまった。
「……私も寝るか」
LINEで遥香とメッセージのやり取りをするのもありだけれど、2時間も経てば会えるんだから話す楽しみを取っておきたい。
黒崎先輩のようにアイマスクは持っていないので、カーテンを閉めて私もしばしの眠りにつくのであった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。