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Fragrance 7-ナツノカオリ-
第24話『真紀の本音-後編-』
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――沙良のことが好き。
真紀ちゃんからようやく聞けた本音は、私達が予想していたとおり、双子の姉である沙良ちゃんへの好意だった。
私のことを抱きしめながら泣く真紀ちゃん。その時に感じた真紀ちゃんの匂いは何だか懐かしかった。
「遥香、あたし、どうすればいいのか分からないよ……」
「真紀ちゃん……」
「あたしは沙良のことが好き。でも、沙良は女の子だし、姉妹だから沙良とは恋愛関係になっちゃいけない。だから、その想いを無くすために遥香と付き合おうと思ったの」
「そうだったんだ……」
一番近くにいる沙良ちゃんを、お姉さんとしてだけでなく1人の女の子として好きになってしまった。それが悪いことなんだと思い込んでいるんだ。
「ねえ、遥香」
「なに?」
「嘘の彼女でもいい。沙良のことを好きな気持ちが消えるまで、あたしと付き合って。好きでいさせて……?」
そう言うと、真紀ちゃんは抱きしめている私の体を自分の方に引き寄せ、ベッドの上に倒れ込む。
「ほら、このままキスをしてもいいし、その先のことだってしてもいいんだよ? 遥香になら、あたしの体を預けてもいい」
本音は言ったけれど、沙良ちゃんのことを気遣っているからか、今でも沙良ちゃんへの好意を無理矢理にでも殺そうとしている。
「真紀ちゃん、それはできないよ」
「どうしてなの? あたしがしてもいいって言っているんだよ!」
「私がしても、それは真紀ちゃんを傷付けるだけになるからね。それに、真紀ちゃんは私よりもそういうことをしてほしい人がいるでしょう? それが分かっているから、私はするつもりはないよ」
本当に愛する人とするなら至福の行為かもしれないけれど、そうではない人とするならそれは最悪の行為になりかねないのだ。そのことで、真紀ちゃんに大きな傷跡を残してしまうかもしれないから、絶対にしない。
「……遥香ならあたしのことを受け入れてくれると思ったのに」
「ごめんね、真紀ちゃん。私には絢ちゃんっていう彼女がいるんだよ。その立場上、できることとできないことがあるの」
「じゃあ、原田さんと付き合っていなければしてくれたの?」
「……ううん、しなかったよ。言ったじゃない、私よりもしたい相手が真紀ちゃんにはいるんじゃないのか、って。そう、沙良ちゃんだよ」
ここで、キスやキスよりも先のことをしてしまったら、絢ちゃんや沙良ちゃんの心まで傷つけてしまうかもしれない。もしかしたら、もっと多くの人を。その行為によって生じた波は私達の想像できないところまで広がっていくこともあり得る。
「真紀ちゃん。真紀ちゃんが今やろうとしていることは……何もせずに最初から沙良ちゃんを諦めることなんだよ。真紀ちゃん、沙良ちゃんに好きだっていう気持ちを伝えることがそんなに恐いのかな」
「そ、それは……」
「人を好きになることは自由だよ。その相手が女の子であっても、姉妹であってもね。真紀ちゃんは沙良ちゃんを好きになることの何が恐いのかな?」
その恐さは真紀ちゃん自身にあることなのか。それとも、沙良ちゃんにあるのか。それを知り、取り除くことで真紀ちゃんの想いを沙良ちゃんに伝えることができるかもしれない。そうすれば、2人が幸せになると信じているから。
「真紀ちゃん、教えてくれるかな」
「……沙良に告白したら、姉妹という関係でもいられなくなるかもしれない。沙良が離れていってしまうかもしれない。沙良と気持ちが重なっていてもあたしと付き合うことで、沙良が苦しんでしまうかもしれない。あたしが告白したら、必ず沙良が苦しむようになっているんだよ! 一番近くにいるからこそ、告白できないんだよ! 遥香はいいよね、仮に原田さんに振られても離れればいい! 他人なんだから!」
「ふざけないで! 沙良ちゃんや絢ちゃんのことを馬鹿にしてるの?」
真紀ちゃんのことを抱きしめていた手を解いて、力の限りベッドを叩いた。
「仮に絢ちゃんが双子の姉妹だったとしても、私の好きな人、大切な人であることに変わりはない! 想いを伝えられなかったときは、本当に苦しかった。でも、伝えたときにどんな結果が待っていても、そこに後悔はないと思うの」
真紀ちゃんと同じように、相手が女の子だからって告白することが恐くなって。絢ちゃんが人気者だから、いつ、誰かの彼女になっちゃうんじゃないかといつも恐れていて。
「沙良ちゃんが苦しんでしまうかもしれないと恐れる気持ちは分かるよ。それなら、沙良ちゃんを支える覚悟を持てばいいんだと思うよ。実際、私もそうだった。私は絢ちゃんに支えられて、私も絢ちゃんを支えている。恋人同士になって、ずっと一緒にいるっていうのはそういうことなんじゃないかな」
絢ちゃんと付き合ってから色々なことがあったから。絢ちゃんが苦しんだときもあれば、私が苦しんだときもあった。それでも、今……絢ちゃんとは強く結ばれている。
「私は絢ちゃんのことを信頼しているからね。真紀ちゃんは沙良ちゃんのことを信頼できるのかな」
「あ、あたしは……」
「……ちなみに、沙良ちゃんは真紀ちゃんのことを信頼していると思うし、何があっても支えていく覚悟はできていると思うよ」
「ど、どういうこと……? ま、まさか……」
どうやら、真紀ちゃんは沙良ちゃんの想いにようやく気付いたようで。真紀ちゃんは顔を真っ赤にして、視線をちらつかせている。
「……真紀ちゃんの想像通りだよ。ちなみに、真紀ちゃんが合宿に行っているときに、沙良ちゃんが1人で私の家に遊びに来て。その時に教えてもらったんだよ」
「そう、だったんだ……」
「……あとは真紀ちゃん次第だと思うよ。真紀ちゃんが告白する勇気と、沙良ちゃんを支えていく覚悟」
それさえ心に決まれば、その先の未来はきっと明るいものになるんじゃないかな。
「色々と偉そうに言っちゃったね。ごめん。ただ、苦しかったら私や絢ちゃんとか……周りの人に相談すればいいと思うんだ。私や絢ちゃんもそうだったから」
「……そう、なのかもね。ははっ……」
すると、涙を流しながらも真紀ちゃんから笑みが生まれる。それは私の知っている彼女らしい眩しく、真っ直ぐな笑み。
「……やっぱり、遥香は凄いなぁ。遥香のことを好きになったよ、本当にさ」
「……そっか」
「あたしは……凄くいい友人を持ったと思った。ありがとね、遥香」
「……どういたしまして」
これ以上、私が介入する必要はなさそうだ。真紀ちゃんと沙良ちゃんのことを絢ちゃんと一緒に見守っていくことにしよう。
「それで、外には沙良ちゃんがいるけれど、今すぐに告白するの?」
「……そんな勇気はまだないわ。それに、今は……インターハイもあるし。そっちに集中したい。原田さんと全力で戦いたいの。彼女には色々と迷惑を掛けちゃったからね」
「そっか。……でも、そういうことを言えるようになったんだね。小学生の時なんて、自分の気持ちなんて素直に言えなかったじゃん」
その性格は今でも変わってないか。
「う、うるさいわね! あたしだって色々とあるんだから!」
「あははっ。まあ、後悔しないようにね」
「分かっているわよ。それで、もし……上手くいったらさ、小学生の時みたいに沙良と一緒に遥香の家で遊ぼう?」
「……待ってるよ」
その時が来ることを楽しみにしておこう。
これで、真紀ちゃんの気持ちをインターハイに向けさせることができた。絢ちゃんと同じ種目に出るんだよね。とても楽しみになってきたのであった。
真紀ちゃんからようやく聞けた本音は、私達が予想していたとおり、双子の姉である沙良ちゃんへの好意だった。
私のことを抱きしめながら泣く真紀ちゃん。その時に感じた真紀ちゃんの匂いは何だか懐かしかった。
「遥香、あたし、どうすればいいのか分からないよ……」
「真紀ちゃん……」
「あたしは沙良のことが好き。でも、沙良は女の子だし、姉妹だから沙良とは恋愛関係になっちゃいけない。だから、その想いを無くすために遥香と付き合おうと思ったの」
「そうだったんだ……」
一番近くにいる沙良ちゃんを、お姉さんとしてだけでなく1人の女の子として好きになってしまった。それが悪いことなんだと思い込んでいるんだ。
「ねえ、遥香」
「なに?」
「嘘の彼女でもいい。沙良のことを好きな気持ちが消えるまで、あたしと付き合って。好きでいさせて……?」
そう言うと、真紀ちゃんは抱きしめている私の体を自分の方に引き寄せ、ベッドの上に倒れ込む。
「ほら、このままキスをしてもいいし、その先のことだってしてもいいんだよ? 遥香になら、あたしの体を預けてもいい」
本音は言ったけれど、沙良ちゃんのことを気遣っているからか、今でも沙良ちゃんへの好意を無理矢理にでも殺そうとしている。
「真紀ちゃん、それはできないよ」
「どうしてなの? あたしがしてもいいって言っているんだよ!」
「私がしても、それは真紀ちゃんを傷付けるだけになるからね。それに、真紀ちゃんは私よりもそういうことをしてほしい人がいるでしょう? それが分かっているから、私はするつもりはないよ」
本当に愛する人とするなら至福の行為かもしれないけれど、そうではない人とするならそれは最悪の行為になりかねないのだ。そのことで、真紀ちゃんに大きな傷跡を残してしまうかもしれないから、絶対にしない。
「……遥香ならあたしのことを受け入れてくれると思ったのに」
「ごめんね、真紀ちゃん。私には絢ちゃんっていう彼女がいるんだよ。その立場上、できることとできないことがあるの」
「じゃあ、原田さんと付き合っていなければしてくれたの?」
「……ううん、しなかったよ。言ったじゃない、私よりもしたい相手が真紀ちゃんにはいるんじゃないのか、って。そう、沙良ちゃんだよ」
ここで、キスやキスよりも先のことをしてしまったら、絢ちゃんや沙良ちゃんの心まで傷つけてしまうかもしれない。もしかしたら、もっと多くの人を。その行為によって生じた波は私達の想像できないところまで広がっていくこともあり得る。
「真紀ちゃん。真紀ちゃんが今やろうとしていることは……何もせずに最初から沙良ちゃんを諦めることなんだよ。真紀ちゃん、沙良ちゃんに好きだっていう気持ちを伝えることがそんなに恐いのかな」
「そ、それは……」
「人を好きになることは自由だよ。その相手が女の子であっても、姉妹であってもね。真紀ちゃんは沙良ちゃんを好きになることの何が恐いのかな?」
その恐さは真紀ちゃん自身にあることなのか。それとも、沙良ちゃんにあるのか。それを知り、取り除くことで真紀ちゃんの想いを沙良ちゃんに伝えることができるかもしれない。そうすれば、2人が幸せになると信じているから。
「真紀ちゃん、教えてくれるかな」
「……沙良に告白したら、姉妹という関係でもいられなくなるかもしれない。沙良が離れていってしまうかもしれない。沙良と気持ちが重なっていてもあたしと付き合うことで、沙良が苦しんでしまうかもしれない。あたしが告白したら、必ず沙良が苦しむようになっているんだよ! 一番近くにいるからこそ、告白できないんだよ! 遥香はいいよね、仮に原田さんに振られても離れればいい! 他人なんだから!」
「ふざけないで! 沙良ちゃんや絢ちゃんのことを馬鹿にしてるの?」
真紀ちゃんのことを抱きしめていた手を解いて、力の限りベッドを叩いた。
「仮に絢ちゃんが双子の姉妹だったとしても、私の好きな人、大切な人であることに変わりはない! 想いを伝えられなかったときは、本当に苦しかった。でも、伝えたときにどんな結果が待っていても、そこに後悔はないと思うの」
真紀ちゃんと同じように、相手が女の子だからって告白することが恐くなって。絢ちゃんが人気者だから、いつ、誰かの彼女になっちゃうんじゃないかといつも恐れていて。
「沙良ちゃんが苦しんでしまうかもしれないと恐れる気持ちは分かるよ。それなら、沙良ちゃんを支える覚悟を持てばいいんだと思うよ。実際、私もそうだった。私は絢ちゃんに支えられて、私も絢ちゃんを支えている。恋人同士になって、ずっと一緒にいるっていうのはそういうことなんじゃないかな」
絢ちゃんと付き合ってから色々なことがあったから。絢ちゃんが苦しんだときもあれば、私が苦しんだときもあった。それでも、今……絢ちゃんとは強く結ばれている。
「私は絢ちゃんのことを信頼しているからね。真紀ちゃんは沙良ちゃんのことを信頼できるのかな」
「あ、あたしは……」
「……ちなみに、沙良ちゃんは真紀ちゃんのことを信頼していると思うし、何があっても支えていく覚悟はできていると思うよ」
「ど、どういうこと……? ま、まさか……」
どうやら、真紀ちゃんは沙良ちゃんの想いにようやく気付いたようで。真紀ちゃんは顔を真っ赤にして、視線をちらつかせている。
「……真紀ちゃんの想像通りだよ。ちなみに、真紀ちゃんが合宿に行っているときに、沙良ちゃんが1人で私の家に遊びに来て。その時に教えてもらったんだよ」
「そう、だったんだ……」
「……あとは真紀ちゃん次第だと思うよ。真紀ちゃんが告白する勇気と、沙良ちゃんを支えていく覚悟」
それさえ心に決まれば、その先の未来はきっと明るいものになるんじゃないかな。
「色々と偉そうに言っちゃったね。ごめん。ただ、苦しかったら私や絢ちゃんとか……周りの人に相談すればいいと思うんだ。私や絢ちゃんもそうだったから」
「……そう、なのかもね。ははっ……」
すると、涙を流しながらも真紀ちゃんから笑みが生まれる。それは私の知っている彼女らしい眩しく、真っ直ぐな笑み。
「……やっぱり、遥香は凄いなぁ。遥香のことを好きになったよ、本当にさ」
「……そっか」
「あたしは……凄くいい友人を持ったと思った。ありがとね、遥香」
「……どういたしまして」
これ以上、私が介入する必要はなさそうだ。真紀ちゃんと沙良ちゃんのことを絢ちゃんと一緒に見守っていくことにしよう。
「それで、外には沙良ちゃんがいるけれど、今すぐに告白するの?」
「……そんな勇気はまだないわ。それに、今は……インターハイもあるし。そっちに集中したい。原田さんと全力で戦いたいの。彼女には色々と迷惑を掛けちゃったからね」
「そっか。……でも、そういうことを言えるようになったんだね。小学生の時なんて、自分の気持ちなんて素直に言えなかったじゃん」
その性格は今でも変わってないか。
「う、うるさいわね! あたしだって色々とあるんだから!」
「あははっ。まあ、後悔しないようにね」
「分かっているわよ。それで、もし……上手くいったらさ、小学生の時みたいに沙良と一緒に遥香の家で遊ぼう?」
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