144 / 226
Fragrance 7-ナツノカオリ-
第27話『永遠に近くに』
優勝した私、準優勝した恩田さんにマスコミが続々とインタビューをしてきた。その対応に追われたので、自由になったのは夕方になってからだった。顧問の先生に許可をもらって、恩田さんと一緒に遥香と沙良さんが泊まっているホテルへと向かう。
ロビーの横にある休憩スペースで遥香に会うと、遥香はすぐに私の方へ駈け寄ってきて、
「絢ちゃん! 優勝おめでとう!」
ぎゅっ、と私のことを抱きしめてきた。
「ありがとう、遥香」
私も遥香のことを抱きしめる。遥香の温もりや匂いを感じると、今日の疲れが一気に抜けていく。
「本当に遥香と原田さんはラブラブなのね」
やれやれ、と言った感じで恩田さんは私達のことを見て笑っている。
「真紀ちゃん、準優勝おめでとう」
「……ありがとう、沙良。200mでは優勝できるように頑張るわ」
「うん。応援するね」
沙良さんが笑顔でそう言うものの、恩田さんは準優勝の悔しさもあるのか沙良さんのことをちらっと見る程度だ。
その後、お互いに何も離さない時間が続いて、
「……あのさ、沙良」
真剣な表情で恩田さんが沙良さんの名前を口にする。
「うん、何かな?」
「ちょっと早いんだけどさ、あたしの気持ちを聞いてくれないかな」
「……うん」
沙良さんは頬をほんのりと赤くする。
いよいよ……恩田さんが自分の本音を沙良さんに伝えるのか。私達がこんなに近くにいていいのだろうか。
恩田さんは沙良さんの手をぎゅっと掴む。
「あ、あのね……沙良」
「うん」
「あ、あたし……沙良のことが、す、す、す……」
す、まで言えているのにあと1文字がなかなか言えないようだ。あんなに強気な恩田さんも沙良さんにいざ告白しようとなると、本当に恋する女の子なんだな、と思う。その証拠に恩田さんの顔は真っ赤っか。
「……す?」
あまりにも「好き」という言葉が出ないことを見かねたのか、沙良さんは問いかけるようにして恩田さんに助け船を出す。
「……す、きです……」
今、小さな声で恩田さんが「好きです」って言ったように聞こえたんだけれど、それは気のせいだろうか。もし、本当にそうだとしたら、それが沙良さんに届いているのか――。
「もっと大きな声で言ってくれないと分からないよ」
「えっ、そ、そうなの……? 頑張って言ったのに……」
どうやら、好きだと言ったのに沙良さんには聞こえなかったようだ。もしくは、聞こえたけれどもっとはっきりと言ってほしいのか。
さあ、恩田さん。もう一度、沙良さんに想いを伝えるんだ!
「……あ、あううっ……」
恩田さんは涙目で私達の方を見てきた。まさか、さっきの告白で勇気を使い果たしてしまったのだろうか。私達に助けを求めているように見える。
「恩田さん、頑張って」
「頑張って、真紀ちゃん!」
私達が出ていい場面なのか分からないけれど、恩田さんに向けてエールを送る。気付かれないように遠くから見守っていたことはあったけれど、こうして本人達の目の前に立って、しかも告白のエールを送るなんて初めてだ。
「……よし」
覚悟を決めたのか、恩田さんは再び沙良さんと向き合う。
「すー、はー、すー、はー」
気持ちを落ち着かせているからか、恩田さんは何度も深呼吸をしている。
「沙良のことが好きです。あたしと付き合ってください!」
誰もが待っていたその言葉が、ようやく恩田さんから聞くことができた。それはとてもはっきりとした声で。
「……はい。よろしくお願いします」
「ありがとう、沙良」
沙良さんに感謝の気持ちを伝えると、告白できたことの達成感なのか、沙良さんと恋人同士になれた嬉しさなのか……恩田さんの眼からは涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「よく頑張ったね、真紀ちゃん」
「……緊張し過ぎて死ぬかと思った……」
「……実は最初に好きだっていう言葉も聞こえたんだけど、もっとはっきりと言ってほしかったの。ごめんね」
「……もう! 本当にもう!」
そう言うと、恩田さんは沙良さんのことを抱きしめて、彼女の胸に顔を埋めた。
これで、恩田さんは沙良さんと付き合うというゴールに辿り着くことができたわけだ。とても長い回り道をして。そして、これからは沙良さんと一緒に二人三脚で遥かに長い道を歩いて行くのだと思う。
「おめでとう、恩田さん、沙良さん」
「真紀ちゃんの告白を見てたら、私までドキドキしちゃったよ。絢ちゃんから告白されたことを思い出すよ」
遥香は私の手をギュッと握る。私の方から告白したんだよなぁ。今とは違って、観覧車の中で遙かと2人きりだったけど。遥香はあの時の私を重ねて、恩田さんの告白を見ていたのだろうか。
「……本当に、あ、ありがとう……」
泣いていることで、恩田さんの表情も崩れてしまっているけど……それだけ、沙良さんに告白できたことが嬉しいんだろう。
「ほらほら、真紀ちゃん。これ以上泣いていると、200mで優勝したときに泣けなくなっちゃうよ」
「……だって、沙良と付き合えることはインターハイで優勝することと同じくらい……ううん、それ以上に嬉しいんだもん……」
「……もう。恋人だけじゃなくてお姉ちゃんとしても真紀ちゃんを守っていかないといけないね」
沙良さんは優しい笑みを浮かべながら、恩田さんの頭を優しく撫でた。この様子なら2人で何とかやっていけるだろう。
ロビーの横にある休憩スペースで遥香に会うと、遥香はすぐに私の方へ駈け寄ってきて、
「絢ちゃん! 優勝おめでとう!」
ぎゅっ、と私のことを抱きしめてきた。
「ありがとう、遥香」
私も遥香のことを抱きしめる。遥香の温もりや匂いを感じると、今日の疲れが一気に抜けていく。
「本当に遥香と原田さんはラブラブなのね」
やれやれ、と言った感じで恩田さんは私達のことを見て笑っている。
「真紀ちゃん、準優勝おめでとう」
「……ありがとう、沙良。200mでは優勝できるように頑張るわ」
「うん。応援するね」
沙良さんが笑顔でそう言うものの、恩田さんは準優勝の悔しさもあるのか沙良さんのことをちらっと見る程度だ。
その後、お互いに何も離さない時間が続いて、
「……あのさ、沙良」
真剣な表情で恩田さんが沙良さんの名前を口にする。
「うん、何かな?」
「ちょっと早いんだけどさ、あたしの気持ちを聞いてくれないかな」
「……うん」
沙良さんは頬をほんのりと赤くする。
いよいよ……恩田さんが自分の本音を沙良さんに伝えるのか。私達がこんなに近くにいていいのだろうか。
恩田さんは沙良さんの手をぎゅっと掴む。
「あ、あのね……沙良」
「うん」
「あ、あたし……沙良のことが、す、す、す……」
す、まで言えているのにあと1文字がなかなか言えないようだ。あんなに強気な恩田さんも沙良さんにいざ告白しようとなると、本当に恋する女の子なんだな、と思う。その証拠に恩田さんの顔は真っ赤っか。
「……す?」
あまりにも「好き」という言葉が出ないことを見かねたのか、沙良さんは問いかけるようにして恩田さんに助け船を出す。
「……す、きです……」
今、小さな声で恩田さんが「好きです」って言ったように聞こえたんだけれど、それは気のせいだろうか。もし、本当にそうだとしたら、それが沙良さんに届いているのか――。
「もっと大きな声で言ってくれないと分からないよ」
「えっ、そ、そうなの……? 頑張って言ったのに……」
どうやら、好きだと言ったのに沙良さんには聞こえなかったようだ。もしくは、聞こえたけれどもっとはっきりと言ってほしいのか。
さあ、恩田さん。もう一度、沙良さんに想いを伝えるんだ!
「……あ、あううっ……」
恩田さんは涙目で私達の方を見てきた。まさか、さっきの告白で勇気を使い果たしてしまったのだろうか。私達に助けを求めているように見える。
「恩田さん、頑張って」
「頑張って、真紀ちゃん!」
私達が出ていい場面なのか分からないけれど、恩田さんに向けてエールを送る。気付かれないように遠くから見守っていたことはあったけれど、こうして本人達の目の前に立って、しかも告白のエールを送るなんて初めてだ。
「……よし」
覚悟を決めたのか、恩田さんは再び沙良さんと向き合う。
「すー、はー、すー、はー」
気持ちを落ち着かせているからか、恩田さんは何度も深呼吸をしている。
「沙良のことが好きです。あたしと付き合ってください!」
誰もが待っていたその言葉が、ようやく恩田さんから聞くことができた。それはとてもはっきりとした声で。
「……はい。よろしくお願いします」
「ありがとう、沙良」
沙良さんに感謝の気持ちを伝えると、告白できたことの達成感なのか、沙良さんと恋人同士になれた嬉しさなのか……恩田さんの眼からは涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「よく頑張ったね、真紀ちゃん」
「……緊張し過ぎて死ぬかと思った……」
「……実は最初に好きだっていう言葉も聞こえたんだけど、もっとはっきりと言ってほしかったの。ごめんね」
「……もう! 本当にもう!」
そう言うと、恩田さんは沙良さんのことを抱きしめて、彼女の胸に顔を埋めた。
これで、恩田さんは沙良さんと付き合うというゴールに辿り着くことができたわけだ。とても長い回り道をして。そして、これからは沙良さんと一緒に二人三脚で遥かに長い道を歩いて行くのだと思う。
「おめでとう、恩田さん、沙良さん」
「真紀ちゃんの告白を見てたら、私までドキドキしちゃったよ。絢ちゃんから告白されたことを思い出すよ」
遥香は私の手をギュッと握る。私の方から告白したんだよなぁ。今とは違って、観覧車の中で遙かと2人きりだったけど。遥香はあの時の私を重ねて、恩田さんの告白を見ていたのだろうか。
「……本当に、あ、ありがとう……」
泣いていることで、恩田さんの表情も崩れてしまっているけど……それだけ、沙良さんに告白できたことが嬉しいんだろう。
「ほらほら、真紀ちゃん。これ以上泣いていると、200mで優勝したときに泣けなくなっちゃうよ」
「……だって、沙良と付き合えることはインターハイで優勝することと同じくらい……ううん、それ以上に嬉しいんだもん……」
「……もう。恋人だけじゃなくてお姉ちゃんとしても真紀ちゃんを守っていかないといけないね」
沙良さんは優しい笑みを浮かべながら、恩田さんの頭を優しく撫でた。この様子なら2人で何とかやっていけるだろう。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。