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Fragrance 8-タビノカオリ-
第39話『Girls Love so sweet』
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しばらくして彩花ちゃんが目を覚ましたので、彼女が意識を失ってからのことを話す。
「そういうことがあったんだよ、彩花ちゃん」
「なるほど。私が眠っている間に、色々とあったんですね。とにかく、氷高さんを殺害したいという水代さんの気持ちを抑えることができて良かったです」
と、彩花ちゃんは嬉しそうな笑みを見せる。
「でも、ごめんなさい。私が絢さんにキスをしてしまったせいで、絢さんと遥香さんに悲しい想いをさせてしまって。直人先輩もきっと……」
複雑な心境を抱いているに違いない、って思っているのかも。そして、私達がキスをしてしまったように、向こうもキスくらいまでしていると思っているのかも。
「……少なくとも、私は大丈夫だよ」
そう言って、私は彩花ちゃんの頭をそっと撫でる。
「それに、遥香のことは直人さんが守ってくれると言ったんだ。だから、私も彩花ちゃんのことをしっかりと守るよ。それに……彩花ちゃんの想いに応えてあげてほしいって直人さんに頼まれたから」
「そう、なんですか……」
仮に遥香が直人さんのことが好きになってしまっても……それは入れ替わった特殊な状況だからと割り切らないと。それに、私は……遥香の姿をした彩花ちゃんが気になり始めているし。彩花ちゃんには「宮原彩花」だと思って接すると言ったのに、何やっているんだろう、私は。
「遥香はともかく、藍沢さんはしっかりと受け答えをしていたよ。遥香のことは藍沢さんに任せて大丈夫だと俺も思ってる」
「色々と複雑な想いを抱くと思うけれど、甘えられる相手がいるんだから甘えていいと思うよ。藍沢君はそれを許していたし。絢ちゃんに甘えられないなら、私に甘えてくれたっていいし。大学生のお姉さんだからね」
「……お気持ちありがとうございます。ただ……今は絢さんに甘えたい気分で。きっと、遥香さんも直人先輩に甘えているでしょうから、先輩の言うとおり……これはお互い様ですよ」
確かに直人さんはお互い様、と言っていた。その言葉に甘えてしまいそうな自分がちょっと恐い。
「……分かった。じゃあ、彩花さんのことは絢さんに任せるよ」
「分かりました。彩花ちゃんのことは……私が守ります」
私は彩花ちゃんのことを抱きしめる。そうだ、直人さんの恋人である彩花ちゃんのことを守るんだ。そのためにも普段通りに接しないと。
「宜しく頼むね、絢さん。じゃあ、俺と奈央は隣の部屋に戻るけれど……何かあったらいつでも来てね」
「……はい」
「じゃあ、戻るか、奈央」
「そうだね。じゃあ……おやすみ。絢ちゃん、彩花ちゃん」
お兄さんと奈央さんは隣の部屋へと戻っていった。
カチャ、と隣の部屋へと繋がる扉が閉まった音が聞こえた後、彩花ちゃんは私のことを抱きしめ、じっと見つめてくる。姿は遥香だから、可愛く見えてしまうな。
「……私のことを守ると言ってくれてとても嬉しいです」
「当然だよ。直人さんに何も言われなかったとしても、そのつもりだった」
「……ありがとうございます」
そう言うと、彩花ちゃんは頬を赤くする。
「絢さん。……キス、してもいいですか?」
彩花ちゃんは笑顔でそんなことを言ってくる。
まったく、困らせないでほしい。気持ちを切り替えて……彼女のことを守っていこうと決意したのに。
ただ、彩花ちゃんの笑顔の前でキスを断ることはできなかった。
「……いいよ、彩花ちゃんとなら」
「えっ?」
キスしてもいい、というのが予想外だったのかな。
「ははっ、自分から言ったのに驚くなんて。可愛いね」
「……もう、からかわないでください」
すると、彩花ちゃんは可愛らしくはにかんだ。
「じゃあ、しますね」
「……うん」
そして、彩花ちゃんの方からキスをしてくる。唇は遥香のものなのに、いつもと違う気がして。でも、それが不思議と心地よくて。そう思ってしまうことに後ろめたさがあった。
「……絢さん。あなたのことがとても好きになってしまいました」
唇を離すと、彩花ちゃんはそんなことを口にする。彩花ちゃんが私を好きになってくれることは嬉しい。
「……そっか。ありがとう、彩花ちゃん」
「……はい」
そう言うことしかできなかった。迷いに迷って、好きになってくれたことのお礼を言うことしかできなかった。
「彩花ちゃん、やっと……いつもの可愛い笑顔に戻ったね」
「絢さんこそ……いつもの素敵な笑顔にようやく戻った気がします」
いつもの笑顔に……か。彩花ちゃんのキスで戻っちゃうなんて。
「ははっ、そっか。彩花ちゃんとキスをしたらどうなるか正直不安だったんだ。体は遥香だし、彩花ちゃんって可愛いからさ……私の我が儘で彩花ちゃんを傷つけちゃうかもしれないって。でも、実際にしてみると……不思議と心が落ち着いたよ。こうなるのは遥香だけだと思ったのにね。彩花ちゃんが魅力的だからなのかな」
見た目は遥香だし、彩花ちゃんはいい子だし。彼女が魅力的だというのは紛れもない事実だった。
「これなら、彩花ちゃんと楽しく夜を過ごせそうだよ」
「……そう思ってくれるなら、今度は……絢さんの方からキスをして欲しいです。まだ、絢さんからはしてもらってないから……」
魅力的だと口にしてしまったから、彩花ちゃんが普通の女の子以上の存在に思えてきてしまって。
「いいよ」
もう、遥香との関係を元には戻せないかもしれない。戻ってはいけないのかもしれない。ただ、今は目の前にいる女の子の想いに応えたかった。
彩花ちゃんと再びキスをすると……不思議と体が熱くなっていった。
「ねえ、彩花ちゃん。今のキスで体が熱くなって、ちょっと汗掻いちゃった。今から大浴場に行かない?」
「いいですね。私、昨日は部屋のお風呂で先輩と一緒に入っていたんですよ。ですから、一度行ってみたかったんです」
「じゃあ、決まりだね」
2日連続で大浴場か。姿は同じだけれど、昨日は遥香で、今日は彩花ちゃん。
「どうしたの、彩花ちゃん。顔が赤くなっているけれど」
「な、何でもありませんよ。さあ、行きましょう!」
「ははっ、そんなに入りたいんだね。じゃあ、浴衣を着ていこうか」
「そうですね」
そして、必要なものを準備して、彩花ちゃんと手を繋いで大浴場へと向かうのであった。
「そういうことがあったんだよ、彩花ちゃん」
「なるほど。私が眠っている間に、色々とあったんですね。とにかく、氷高さんを殺害したいという水代さんの気持ちを抑えることができて良かったです」
と、彩花ちゃんは嬉しそうな笑みを見せる。
「でも、ごめんなさい。私が絢さんにキスをしてしまったせいで、絢さんと遥香さんに悲しい想いをさせてしまって。直人先輩もきっと……」
複雑な心境を抱いているに違いない、って思っているのかも。そして、私達がキスをしてしまったように、向こうもキスくらいまでしていると思っているのかも。
「……少なくとも、私は大丈夫だよ」
そう言って、私は彩花ちゃんの頭をそっと撫でる。
「それに、遥香のことは直人さんが守ってくれると言ったんだ。だから、私も彩花ちゃんのことをしっかりと守るよ。それに……彩花ちゃんの想いに応えてあげてほしいって直人さんに頼まれたから」
「そう、なんですか……」
仮に遥香が直人さんのことが好きになってしまっても……それは入れ替わった特殊な状況だからと割り切らないと。それに、私は……遥香の姿をした彩花ちゃんが気になり始めているし。彩花ちゃんには「宮原彩花」だと思って接すると言ったのに、何やっているんだろう、私は。
「遥香はともかく、藍沢さんはしっかりと受け答えをしていたよ。遥香のことは藍沢さんに任せて大丈夫だと俺も思ってる」
「色々と複雑な想いを抱くと思うけれど、甘えられる相手がいるんだから甘えていいと思うよ。藍沢君はそれを許していたし。絢ちゃんに甘えられないなら、私に甘えてくれたっていいし。大学生のお姉さんだからね」
「……お気持ちありがとうございます。ただ……今は絢さんに甘えたい気分で。きっと、遥香さんも直人先輩に甘えているでしょうから、先輩の言うとおり……これはお互い様ですよ」
確かに直人さんはお互い様、と言っていた。その言葉に甘えてしまいそうな自分がちょっと恐い。
「……分かった。じゃあ、彩花さんのことは絢さんに任せるよ」
「分かりました。彩花ちゃんのことは……私が守ります」
私は彩花ちゃんのことを抱きしめる。そうだ、直人さんの恋人である彩花ちゃんのことを守るんだ。そのためにも普段通りに接しないと。
「宜しく頼むね、絢さん。じゃあ、俺と奈央は隣の部屋に戻るけれど……何かあったらいつでも来てね」
「……はい」
「じゃあ、戻るか、奈央」
「そうだね。じゃあ……おやすみ。絢ちゃん、彩花ちゃん」
お兄さんと奈央さんは隣の部屋へと戻っていった。
カチャ、と隣の部屋へと繋がる扉が閉まった音が聞こえた後、彩花ちゃんは私のことを抱きしめ、じっと見つめてくる。姿は遥香だから、可愛く見えてしまうな。
「……私のことを守ると言ってくれてとても嬉しいです」
「当然だよ。直人さんに何も言われなかったとしても、そのつもりだった」
「……ありがとうございます」
そう言うと、彩花ちゃんは頬を赤くする。
「絢さん。……キス、してもいいですか?」
彩花ちゃんは笑顔でそんなことを言ってくる。
まったく、困らせないでほしい。気持ちを切り替えて……彼女のことを守っていこうと決意したのに。
ただ、彩花ちゃんの笑顔の前でキスを断ることはできなかった。
「……いいよ、彩花ちゃんとなら」
「えっ?」
キスしてもいい、というのが予想外だったのかな。
「ははっ、自分から言ったのに驚くなんて。可愛いね」
「……もう、からかわないでください」
すると、彩花ちゃんは可愛らしくはにかんだ。
「じゃあ、しますね」
「……うん」
そして、彩花ちゃんの方からキスをしてくる。唇は遥香のものなのに、いつもと違う気がして。でも、それが不思議と心地よくて。そう思ってしまうことに後ろめたさがあった。
「……絢さん。あなたのことがとても好きになってしまいました」
唇を離すと、彩花ちゃんはそんなことを口にする。彩花ちゃんが私を好きになってくれることは嬉しい。
「……そっか。ありがとう、彩花ちゃん」
「……はい」
そう言うことしかできなかった。迷いに迷って、好きになってくれたことのお礼を言うことしかできなかった。
「彩花ちゃん、やっと……いつもの可愛い笑顔に戻ったね」
「絢さんこそ……いつもの素敵な笑顔にようやく戻った気がします」
いつもの笑顔に……か。彩花ちゃんのキスで戻っちゃうなんて。
「ははっ、そっか。彩花ちゃんとキスをしたらどうなるか正直不安だったんだ。体は遥香だし、彩花ちゃんって可愛いからさ……私の我が儘で彩花ちゃんを傷つけちゃうかもしれないって。でも、実際にしてみると……不思議と心が落ち着いたよ。こうなるのは遥香だけだと思ったのにね。彩花ちゃんが魅力的だからなのかな」
見た目は遥香だし、彩花ちゃんはいい子だし。彼女が魅力的だというのは紛れもない事実だった。
「これなら、彩花ちゃんと楽しく夜を過ごせそうだよ」
「……そう思ってくれるなら、今度は……絢さんの方からキスをして欲しいです。まだ、絢さんからはしてもらってないから……」
魅力的だと口にしてしまったから、彩花ちゃんが普通の女の子以上の存在に思えてきてしまって。
「いいよ」
もう、遥香との関係を元には戻せないかもしれない。戻ってはいけないのかもしれない。ただ、今は目の前にいる女の子の想いに応えたかった。
彩花ちゃんと再びキスをすると……不思議と体が熱くなっていった。
「ねえ、彩花ちゃん。今のキスで体が熱くなって、ちょっと汗掻いちゃった。今から大浴場に行かない?」
「いいですね。私、昨日は部屋のお風呂で先輩と一緒に入っていたんですよ。ですから、一度行ってみたかったんです」
「じゃあ、決まりだね」
2日連続で大浴場か。姿は同じだけれど、昨日は遥香で、今日は彩花ちゃん。
「どうしたの、彩花ちゃん。顔が赤くなっているけれど」
「な、何でもありませんよ。さあ、行きましょう!」
「ははっ、そんなに入りたいんだね。じゃあ、浴衣を着ていこうか」
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そして、必要なものを準備して、彩花ちゃんと手を繋いで大浴場へと向かうのであった。
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