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Fragrance 8-タビノカオリ-
第41話『はざま』
大浴場からは真っ直ぐ部屋に戻った。ただ、彩花ちゃんは15階のエレベーターホールにあった自動販売機で冷たい紅茶を買ったけれど。
「温泉、気持ち良かったね」
「そうですね。今日の疲れが取れた気がしました」
遥香の体に慣れてきたのか。それとも温泉が気持ち良かったのか。
彩花ちゃんはさっき買った冷たい紅茶を飲んでいる。
「ふぅ」
私も何か冷たい飲み物でも買えば良かったかな。温泉に長く浸かっていたせいか、今もちょっと熱い。
「うわっ」
すると、突然、私は彩花ちゃんにベッドへと押し倒される。
「突然だったから驚いちゃったよ」
「……ごめんなさい。浴衣姿の絢さんを見たら、つい。あと、このくらいしないと……温泉での続きをしてくれないような気がして」
もしかしたら、彩花ちゃんは私の今の気持ちに気付き始めているかもしれない。
「……理由無しに続きをしない、なんてことはないよ」
「絢さん……」
「その……部屋に戻っても、彩花ちゃんが温泉の時と同じ気持ちだったらしてもいいかな、って思っていたんだ。一番大事なのは目の前にいる彩花ちゃんの気持ちだと思うから」
本当に……私は酷い女だ。遥香という恋人がいるのに、彩花ちゃんの気持ちに応えたいと思っているのだから。
「それで、彩花ちゃん……イチャイチャしたいの?」
彩花ちゃんにそう問いかける。彩花ちゃんにも藍沢直人さんという素敵な恋人がいるからだ。
少しの間、彩花ちゃんは何も言わなかった。色々なことを想っているんだろう。そして、どうしたいのかを考えていることだろう。
「……んっ」
温泉に入っているときと同じように、彩花ちゃんは私に熱いキスをする。
「……今夜だけでいいですから、絢さんと続きがしたいです。女の子同士のイチャイチャを……私に教えてくれませんか」
彩花ちゃんははっきりとそう言った。そのときに私を見てくる彼女の視線は、私の体の中にグイグイと入り込もうとしているように思えた。
「も、もちろん……絢さんがしてもいいって思えるところまででいいですから。これは私の我が儘ですし……」
どうやら、彩花ちゃんは私のことを気遣ってくれているようだ。
「……分かった。私のできる範囲で……しよっか」
「……ありがとうございます」
そもそも、彩花ちゃんとえっちなことをしようとしている時点でダメなような気もするけれど。
「それにしても、彩花ちゃんは普段から押し倒すタイプなの? 直人さんは……受け入れるタイプにも見えるけれど」
「え、ええと……」
さっき押し倒されたので、いつも彩花ちゃんから直人さんを誘っているように思ってしまう。
「……私から誘ってました」
「ははっ、やっぱり」
「絢さんはどうなんですか? 遥香さんとそういうことをするときは……」
遥香から誘ったときもあれば、私から誘ったこともある。
「……半々かな」
「半々なんですね」
「……うん。じゃあ……イチャイチャしよう」
そして、私達は浴衣姿でイチャイチャする。
「……明日、目が覚めたらどうなっているんだろう」
小さな声で彩花ちゃんはそう言う。
「水代さんのことがまだ解決できないから、このままなんじゃないかな」
遥香と彩花ちゃんの体が入れ替わったのは、水代さんが意図的に行なったことだから。彼女が元に戻そうと考えてくれない限りこのままだろう。
「やっぱり、そうなんでしょうね」
「でも、いつかは絶対に元の体に戻った方がいいよ。仮に遥香が直人さんのことが好きになっていても。私の恋人は遥香だけだし、直人さんだって恋人は彩花ちゃんだけだと思っているはずだから」
「そう、ですよね……」
彩花ちゃんに元の体に戻る気持ちを強く抱かせるためにそう言ったけれど、この状況で私の恋人が遥香だけだなんてよく言えたと思った。心の中で自分自身に嘲笑する。
ただ、元の体に戻って彩花ちゃんと直人さんが少しでも早く元の関係に戻れるように、私もサポートしなきゃ。
「でも、元の体に戻るまでは彩花ちゃんの側にいるし、彩花ちゃんのことを守る。それが直人さんとの約束だからね。だから、今夜は安心して眠っていいんだよ」
「……側で笑っていてくれる絢さんがいれば、安心して眠れそうです。だから、キスをしてもらってもいいですか?」
「ふふっ、彩花ちゃんならそう言うと思ったよ」
「私なら、ですか」
私の方からそっとおやすみのキスをする。すると、彩花ちゃんは眠たそうな表情になる。
「……本当に眠くなってきちゃいました。もっとお話ししたいのに」
「気持ちは嬉しいな。でも、明日はきっとみんなで頑張らないといけないと思うから、今日はもう寝ようか」
「……はい」
そういえば、夕方……相良さんは今後の対策を考えてみると言っていた。何か良い方法は思いついたのかな。それは明日になったら聞いてみることにしよう。
「絢さん、おやすみなさい」
「おやすみ、彩花ちゃん」
彩花ちゃんはゆっくりと目を閉じる。眠っている姿は……遥香そのものだな。
「……ごめんね、遥香」
私、遥香に嫌なことをしちゃってるね。直人さんには嫌なことをしなければいいって言ったのにね。
今、遥香はどうしているんだろう。私と彩花ちゃんがイチャイチャしたように、直人さんとイチャイチャしているのだろうか。もし、そうだとしたら複雑だけれど、責めることはしない。責めるつもりもない。責める……気持ちが湧くこともないと思う。絶対に。
「……私も寝よう」
明日以降、何が待ち受けているか分からない。きちんと眠って、今日の疲れを取っておかないと。
それから程なくして、私も眠りにつくのであった。
「温泉、気持ち良かったね」
「そうですね。今日の疲れが取れた気がしました」
遥香の体に慣れてきたのか。それとも温泉が気持ち良かったのか。
彩花ちゃんはさっき買った冷たい紅茶を飲んでいる。
「ふぅ」
私も何か冷たい飲み物でも買えば良かったかな。温泉に長く浸かっていたせいか、今もちょっと熱い。
「うわっ」
すると、突然、私は彩花ちゃんにベッドへと押し倒される。
「突然だったから驚いちゃったよ」
「……ごめんなさい。浴衣姿の絢さんを見たら、つい。あと、このくらいしないと……温泉での続きをしてくれないような気がして」
もしかしたら、彩花ちゃんは私の今の気持ちに気付き始めているかもしれない。
「……理由無しに続きをしない、なんてことはないよ」
「絢さん……」
「その……部屋に戻っても、彩花ちゃんが温泉の時と同じ気持ちだったらしてもいいかな、って思っていたんだ。一番大事なのは目の前にいる彩花ちゃんの気持ちだと思うから」
本当に……私は酷い女だ。遥香という恋人がいるのに、彩花ちゃんの気持ちに応えたいと思っているのだから。
「それで、彩花ちゃん……イチャイチャしたいの?」
彩花ちゃんにそう問いかける。彩花ちゃんにも藍沢直人さんという素敵な恋人がいるからだ。
少しの間、彩花ちゃんは何も言わなかった。色々なことを想っているんだろう。そして、どうしたいのかを考えていることだろう。
「……んっ」
温泉に入っているときと同じように、彩花ちゃんは私に熱いキスをする。
「……今夜だけでいいですから、絢さんと続きがしたいです。女の子同士のイチャイチャを……私に教えてくれませんか」
彩花ちゃんははっきりとそう言った。そのときに私を見てくる彼女の視線は、私の体の中にグイグイと入り込もうとしているように思えた。
「も、もちろん……絢さんがしてもいいって思えるところまででいいですから。これは私の我が儘ですし……」
どうやら、彩花ちゃんは私のことを気遣ってくれているようだ。
「……分かった。私のできる範囲で……しよっか」
「……ありがとうございます」
そもそも、彩花ちゃんとえっちなことをしようとしている時点でダメなような気もするけれど。
「それにしても、彩花ちゃんは普段から押し倒すタイプなの? 直人さんは……受け入れるタイプにも見えるけれど」
「え、ええと……」
さっき押し倒されたので、いつも彩花ちゃんから直人さんを誘っているように思ってしまう。
「……私から誘ってました」
「ははっ、やっぱり」
「絢さんはどうなんですか? 遥香さんとそういうことをするときは……」
遥香から誘ったときもあれば、私から誘ったこともある。
「……半々かな」
「半々なんですね」
「……うん。じゃあ……イチャイチャしよう」
そして、私達は浴衣姿でイチャイチャする。
「……明日、目が覚めたらどうなっているんだろう」
小さな声で彩花ちゃんはそう言う。
「水代さんのことがまだ解決できないから、このままなんじゃないかな」
遥香と彩花ちゃんの体が入れ替わったのは、水代さんが意図的に行なったことだから。彼女が元に戻そうと考えてくれない限りこのままだろう。
「やっぱり、そうなんでしょうね」
「でも、いつかは絶対に元の体に戻った方がいいよ。仮に遥香が直人さんのことが好きになっていても。私の恋人は遥香だけだし、直人さんだって恋人は彩花ちゃんだけだと思っているはずだから」
「そう、ですよね……」
彩花ちゃんに元の体に戻る気持ちを強く抱かせるためにそう言ったけれど、この状況で私の恋人が遥香だけだなんてよく言えたと思った。心の中で自分自身に嘲笑する。
ただ、元の体に戻って彩花ちゃんと直人さんが少しでも早く元の関係に戻れるように、私もサポートしなきゃ。
「でも、元の体に戻るまでは彩花ちゃんの側にいるし、彩花ちゃんのことを守る。それが直人さんとの約束だからね。だから、今夜は安心して眠っていいんだよ」
「……側で笑っていてくれる絢さんがいれば、安心して眠れそうです。だから、キスをしてもらってもいいですか?」
「ふふっ、彩花ちゃんならそう言うと思ったよ」
「私なら、ですか」
私の方からそっとおやすみのキスをする。すると、彩花ちゃんは眠たそうな表情になる。
「……本当に眠くなってきちゃいました。もっとお話ししたいのに」
「気持ちは嬉しいな。でも、明日はきっとみんなで頑張らないといけないと思うから、今日はもう寝ようか」
「……はい」
そういえば、夕方……相良さんは今後の対策を考えてみると言っていた。何か良い方法は思いついたのかな。それは明日になったら聞いてみることにしよう。
「絢さん、おやすみなさい」
「おやすみ、彩花ちゃん」
彩花ちゃんはゆっくりと目を閉じる。眠っている姿は……遥香そのものだな。
「……ごめんね、遥香」
私、遥香に嫌なことをしちゃってるね。直人さんには嫌なことをしなければいいって言ったのにね。
今、遥香はどうしているんだろう。私と彩花ちゃんがイチャイチャしたように、直人さんとイチャイチャしているのだろうか。もし、そうだとしたら複雑だけれど、責めることはしない。責めるつもりもない。責める……気持ちが湧くこともないと思う。絶対に。
「……私も寝よう」
明日以降、何が待ち受けているか分からない。きちんと眠って、今日の疲れを取っておかないと。
それから程なくして、私も眠りにつくのであった。
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