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Fragrance 8-タビノカオリ-
第54話『妹と友達』
一昨日、昨日と海やプールでたくさん遊んだので、今日は部屋でゆっくりと過ごすことになった。といっても、紅茶を飲みながら色々とお喋りをするだけだけど。
昼食を6人で食べるときには、直人さんと彩花さんはすっかりと元のように仲良くなっていた。2人はもう大丈夫だと思う。
午後1時半過ぎ。
晴実さんと友人の加藤紬さんがホテルに到着したと相良さんから連絡があったので、私達はすぐに1階のロビーへと向かう。
ロビーには既に相良さんがいて、彼女の側には白いワンピースを着た黒髪のおさげの女性と、相良さんに似たような服装をした茶髪のワンサイドアップの女性が立っていた。美緒と渚にちょっと似ている。彼女達が、晴実さんと加藤紬さんなのかな。
「お待たせしました」
直人さんがそう言うと、相良さんがこちらを振り向いて軽く頭を下げた。
「皆様、こちらのワンピース姿の女性が水代晴実ちゃんで、パンツルックの女性が加藤紬ちゃんです」
「はじめまして、水代晴実です」
「加藤紬です、はじめまして。晴実とは同じ高校のクラスメイトで3年生です」
黒髪のおさげの方が晴実さんで、茶髪のワンサイドアップの方が紬さんね。2人とも、私よりも2学年先輩なんだ。それだけでも大人っぽいなぁ。あと、晴実さん、お姉さんよりも長く生きていることになるんだなぁ。
「じゃあ、俺達も自己紹介をしましょうか。まずは俺から。はじめまして、藍沢直人です。高校2年生です」
「宮原彩花です。直人先輩と同じ高校に通っている1年生で、先輩と付き合っています」
「坂井遥香です。直人さんや遥香さんとは違う高校に通っています。1年生です」
「原田絢です。遥香とはクラスメイトで、彼女と付き合っています」
「坂井隼人です。大学1年生です。遥香の兄です」
「香川奈央です。隼人と遥香ちゃんと幼なじみです。隼人とは学科まで一緒で、その……彼と付き合っています」
奈央ちゃんだけが若干顔を赤くし、照れた様子で自己紹介をした。お兄ちゃんと付き合い始めてから日が浅いからかな。
「自己紹介をした直後に混乱させてしまうかもしれませんが、実は彩花と遥香さんは、昨日の朝に体が入れ替わってしまったんですね」
「えええっ! そんなことって実際にあるの? 晴実は知ってた?」
さすがに、普通ならあり得なさそうなことが起きてしまったので、紬さんはとても驚いた様子を見せている。
「悠子さんから入れ替わりの話は聞いていましたけど、彩花さんと遥香さんのことだったんですね」
「聞いていたんだったら教えてくれたっていいじゃない」
「ごめんね、紬ちゃん。そんなに重要なことじゃないと思ってたから……」
そんなこと言いながらも、2人は笑っている。仲がいいんだな。
まあ、晴実さんにとっては、自分が生まれたきっかけとなった20年前のお姉さんの自殺に向き合うことが一番重要だもんね。もしかしたら、それができれば自然と私と彩花さんの体が戻ると相良さんから説明されていたのかもしれない。
「でもね、晴実ちゃん。今朝、分かったことなんだけれど……2人の体が入れ替わったのは円加がやったことだったの」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。信じてもらえないかもしれないけれど……円加が香川様の体に憑依して、彼女自身が入れ替えたって言ってくれたの」
「そうなんですか。お姉ちゃん、が……」
さすがに、水代さんの名前が出ると、晴実さんの表情がちょっと暗くなる。水代さんが香川さんの体に憑依したことが信じられないのかもしれない。
今、この瞬間にも水代さんが誰かの体に憑依してくれれば、晴実さんと紬さんにも相良さんの言ったことが本当だって言えるんだけれど。
「あっ……」
晴実さんはそう声を漏らすと、紬さんの方に体をよろめいた。
「晴実、大丈夫? 暑いし、体調でも悪くなった?」
「ううん、そうじゃないよ。特に何ともないし。ただ……一瞬だけだけど、意識がなくなったの。誰かに眠らされたような感じがして。それに、どこか懐かしく感じる女の人の声で晴実、って呼ばれた気がしたの」
「もしかしたら、円加が晴実ちゃんの体に一瞬だけ憑依したのかも。それで、晴実ちゃんの名前を呼んだんじゃないかな」
「……そうかもしれないです。私の名前を呼んだ女性の声……思い返したら、昔、家で見たホームビデオに映っていたお姉ちゃんの声でした」
「そっか」
これで、水代さんが晴実さんの体の中に一瞬憑依したって分かったかな。それにしても、晴実さん……水代さんが亡くなった後に生まれたけれど、ホームビデオを通して水代さんの姿は見たことがあったんだ。
「晴実ちゃん、紬ちゃん。氷高さんのことについて色々と話したいから、そっちのソファーに行こうか」
「分かりました、悠子さん」
私達は午前中に座ったソファーまで向かう。
ただ、ソファーに9人全員で座ることができないので、女性が座って、お兄ちゃんと直人さんはソファーの側で立つ形に。
「実は午前中に氷高さんのことについて藍沢さん達と話したの。それで……」
相良さんは自分と私達6人が協力して氷高さんと決着を付ける計画を、晴実さんと紬さんに伝えた。私と彩花さん、奈央ちゃんに憑依した水代さんの想いも含めて。
「そういうこと、ですか……」
晴実さんは俯きながらそう言った。さすがに、今の段階で私達に協力するかどうかは決めることはできない……よね。
「……晴実のお姉さん、晴実のことをなるべく巻き込みたくないんですね。自分の受けたいじめの中心人物と会わせたくないですから、それは当然ですよね。何か、ひどいことを言われてしまうかもしれないし。そう考えると、私もお姉さんの気持ちを尊重したいです」
紬さんは晴実さんが関わるようなことは避けたいと考えているようだ。
私も……やっぱり私達6人と相良さんだけで氷高さんと決着を付けることができるなら、晴実さんは関わらない方がいいと考えている。その考えは変わらない。
「晴実ちゃんはどうかな? どっちでも構わないよ」
「……今すぐには決められないです。ごめんなさい……」
相良さんの問いかけに対して、晴実さんは力なくそう答えた。やっぱり、今すぐに決断を下すことはできないよね。もしかしたら、辛い目に遭ってしまう可能性もあるし。
ただ、氷高さんはあと2時間ほどでこのホテルに戻ってくるとのこと。晴実さんには、なるべく早めに決断をしてほしいのが本音でもある。
「……藍沢さんに坂井さん。ええと、お兄さんの方です」
私の方じゃないんだ。何故かちょっぴりがっかり。
「俺の方ですか」
「何でしょうか、晴実さん」
「お2人だけに話したいことがあります。ちょっと離れたところで話したいのですが……よろしいでしょうか」
お兄ちゃんと直人さん……男性にだけ伝えたいことって何だろう。
「俺は構いませんが……藍沢さんは?」
「俺も大丈夫ですよ」
「相良さん、確か……2階にはカフェがありましたよね」
「はい、そうです」
へえ、2階にカフェがあったんだ。全然知らなかったよ。昨日のお昼ご飯は直人さんと一緒に、ホテルの近くにあるお蕎麦屋さんに行ったから。
「じゃあ、俺と藍沢さんは晴実さんと一緒に2階のカフェに行ってきます」
「分かりました。私達はここでお待ちしております」
「分かりました。では、藍沢さん、晴実さん……行きましょう」
「じゃあ、行ってくるね、紬ちゃん」
「……うん。いってらっしゃい」
紬さん、複雑な表情をしているな。お兄ちゃんと直人さんだけに話したいことがあると晴実さんが言ったから、色々と想うところがあるのかもしれない。
お兄ちゃん、直人さん、晴実さんはロビーを後にしたのであった。
昼食を6人で食べるときには、直人さんと彩花さんはすっかりと元のように仲良くなっていた。2人はもう大丈夫だと思う。
午後1時半過ぎ。
晴実さんと友人の加藤紬さんがホテルに到着したと相良さんから連絡があったので、私達はすぐに1階のロビーへと向かう。
ロビーには既に相良さんがいて、彼女の側には白いワンピースを着た黒髪のおさげの女性と、相良さんに似たような服装をした茶髪のワンサイドアップの女性が立っていた。美緒と渚にちょっと似ている。彼女達が、晴実さんと加藤紬さんなのかな。
「お待たせしました」
直人さんがそう言うと、相良さんがこちらを振り向いて軽く頭を下げた。
「皆様、こちらのワンピース姿の女性が水代晴実ちゃんで、パンツルックの女性が加藤紬ちゃんです」
「はじめまして、水代晴実です」
「加藤紬です、はじめまして。晴実とは同じ高校のクラスメイトで3年生です」
黒髪のおさげの方が晴実さんで、茶髪のワンサイドアップの方が紬さんね。2人とも、私よりも2学年先輩なんだ。それだけでも大人っぽいなぁ。あと、晴実さん、お姉さんよりも長く生きていることになるんだなぁ。
「じゃあ、俺達も自己紹介をしましょうか。まずは俺から。はじめまして、藍沢直人です。高校2年生です」
「宮原彩花です。直人先輩と同じ高校に通っている1年生で、先輩と付き合っています」
「坂井遥香です。直人さんや遥香さんとは違う高校に通っています。1年生です」
「原田絢です。遥香とはクラスメイトで、彼女と付き合っています」
「坂井隼人です。大学1年生です。遥香の兄です」
「香川奈央です。隼人と遥香ちゃんと幼なじみです。隼人とは学科まで一緒で、その……彼と付き合っています」
奈央ちゃんだけが若干顔を赤くし、照れた様子で自己紹介をした。お兄ちゃんと付き合い始めてから日が浅いからかな。
「自己紹介をした直後に混乱させてしまうかもしれませんが、実は彩花と遥香さんは、昨日の朝に体が入れ替わってしまったんですね」
「えええっ! そんなことって実際にあるの? 晴実は知ってた?」
さすがに、普通ならあり得なさそうなことが起きてしまったので、紬さんはとても驚いた様子を見せている。
「悠子さんから入れ替わりの話は聞いていましたけど、彩花さんと遥香さんのことだったんですね」
「聞いていたんだったら教えてくれたっていいじゃない」
「ごめんね、紬ちゃん。そんなに重要なことじゃないと思ってたから……」
そんなこと言いながらも、2人は笑っている。仲がいいんだな。
まあ、晴実さんにとっては、自分が生まれたきっかけとなった20年前のお姉さんの自殺に向き合うことが一番重要だもんね。もしかしたら、それができれば自然と私と彩花さんの体が戻ると相良さんから説明されていたのかもしれない。
「でもね、晴実ちゃん。今朝、分かったことなんだけれど……2人の体が入れ替わったのは円加がやったことだったの」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。信じてもらえないかもしれないけれど……円加が香川様の体に憑依して、彼女自身が入れ替えたって言ってくれたの」
「そうなんですか。お姉ちゃん、が……」
さすがに、水代さんの名前が出ると、晴実さんの表情がちょっと暗くなる。水代さんが香川さんの体に憑依したことが信じられないのかもしれない。
今、この瞬間にも水代さんが誰かの体に憑依してくれれば、晴実さんと紬さんにも相良さんの言ったことが本当だって言えるんだけれど。
「あっ……」
晴実さんはそう声を漏らすと、紬さんの方に体をよろめいた。
「晴実、大丈夫? 暑いし、体調でも悪くなった?」
「ううん、そうじゃないよ。特に何ともないし。ただ……一瞬だけだけど、意識がなくなったの。誰かに眠らされたような感じがして。それに、どこか懐かしく感じる女の人の声で晴実、って呼ばれた気がしたの」
「もしかしたら、円加が晴実ちゃんの体に一瞬だけ憑依したのかも。それで、晴実ちゃんの名前を呼んだんじゃないかな」
「……そうかもしれないです。私の名前を呼んだ女性の声……思い返したら、昔、家で見たホームビデオに映っていたお姉ちゃんの声でした」
「そっか」
これで、水代さんが晴実さんの体の中に一瞬憑依したって分かったかな。それにしても、晴実さん……水代さんが亡くなった後に生まれたけれど、ホームビデオを通して水代さんの姿は見たことがあったんだ。
「晴実ちゃん、紬ちゃん。氷高さんのことについて色々と話したいから、そっちのソファーに行こうか」
「分かりました、悠子さん」
私達は午前中に座ったソファーまで向かう。
ただ、ソファーに9人全員で座ることができないので、女性が座って、お兄ちゃんと直人さんはソファーの側で立つ形に。
「実は午前中に氷高さんのことについて藍沢さん達と話したの。それで……」
相良さんは自分と私達6人が協力して氷高さんと決着を付ける計画を、晴実さんと紬さんに伝えた。私と彩花さん、奈央ちゃんに憑依した水代さんの想いも含めて。
「そういうこと、ですか……」
晴実さんは俯きながらそう言った。さすがに、今の段階で私達に協力するかどうかは決めることはできない……よね。
「……晴実のお姉さん、晴実のことをなるべく巻き込みたくないんですね。自分の受けたいじめの中心人物と会わせたくないですから、それは当然ですよね。何か、ひどいことを言われてしまうかもしれないし。そう考えると、私もお姉さんの気持ちを尊重したいです」
紬さんは晴実さんが関わるようなことは避けたいと考えているようだ。
私も……やっぱり私達6人と相良さんだけで氷高さんと決着を付けることができるなら、晴実さんは関わらない方がいいと考えている。その考えは変わらない。
「晴実ちゃんはどうかな? どっちでも構わないよ」
「……今すぐには決められないです。ごめんなさい……」
相良さんの問いかけに対して、晴実さんは力なくそう答えた。やっぱり、今すぐに決断を下すことはできないよね。もしかしたら、辛い目に遭ってしまう可能性もあるし。
ただ、氷高さんはあと2時間ほどでこのホテルに戻ってくるとのこと。晴実さんには、なるべく早めに決断をしてほしいのが本音でもある。
「……藍沢さんに坂井さん。ええと、お兄さんの方です」
私の方じゃないんだ。何故かちょっぴりがっかり。
「俺の方ですか」
「何でしょうか、晴実さん」
「お2人だけに話したいことがあります。ちょっと離れたところで話したいのですが……よろしいでしょうか」
お兄ちゃんと直人さん……男性にだけ伝えたいことって何だろう。
「俺は構いませんが……藍沢さんは?」
「俺も大丈夫ですよ」
「相良さん、確か……2階にはカフェがありましたよね」
「はい、そうです」
へえ、2階にカフェがあったんだ。全然知らなかったよ。昨日のお昼ご飯は直人さんと一緒に、ホテルの近くにあるお蕎麦屋さんに行ったから。
「じゃあ、俺と藍沢さんは晴実さんと一緒に2階のカフェに行ってきます」
「分かりました。私達はここでお待ちしております」
「分かりました。では、藍沢さん、晴実さん……行きましょう」
「じゃあ、行ってくるね、紬ちゃん」
「……うん。いってらっしゃい」
紬さん、複雑な表情をしているな。お兄ちゃんと直人さんだけに話したいことがあると晴実さんが言ったから、色々と想うところがあるのかもしれない。
お兄ちゃん、直人さん、晴実さんはロビーを後にしたのであった。
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