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Fragrance 8-タビノカオリ-
エピローグ『君はここにいる』
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午後0時半。
私達が乗っている車は、最寄りのインターチェンジから高速道路に乗り、渋滞に巻き込まれることもなく家に向かって走っている。
「もう、こんな時間か。そろそろ昼ご飯をどうするか決めて欲しいな。10kmくらい先に、大きなサービスエリアがあるからそこに行こうと思ってる。俺は何でもいいから、3人で何を食べたいか決めてくれるかな」
確かに、もうお昼時だし、何を食べるか考えた方がいいかも。
これから行こうとするサービスエリアについて調べていると、和風、洋風、中華……もちろん、その地域のグルメのお店もある。迷っちゃうなぁ。
「どれにする? 遥香」
「そうだねぇ、たくさんあるから迷っちゃうね」
「実際に行ってみてから決めてみるっていうのもありなんじゃない?」
「奈央さんの言うことにも一理ありますね」
確かに、実際に行ってみると気分が変わることもあるよね。通路から見える店の雰囲気とか、食欲をそそる美味しそうな匂いとか。
――プルルッ。
そんなことを考えていると、彩花さんからLINEで写真が送られてくる。この旅行中に作った6人のグループトークのところだ。
見てみると、そこには美味しそうな駅弁の写真が2枚。1枚は幕の内弁当で、もう1枚は魚介類がたくさん入ったお弁当だ。
「うわぁ、美味しそうだね、遥香」
「うん。お腹空いてきちゃったよ」
これがいわゆる「飯テロ」っていうのかな。うううっ、お弁当の写真を見たらより一層食欲が増してきた。早くサービスエリアに着かないかな。
『美味しそうですね! 私達は今、車の中で何を食べるか話し合っていて。そうだ、さっきの2人の写真を送っておきますね!』
そんなメッセージを送る。あっ、そうだ。駅で撮影したツーショット写真も送っておこうっと。
2人とはさっき駅で別れたけれど、こういったSNS、メールや電話で離れている人とも繋がり続けることができる。それはとてもいいことだけれど、今回の旅行を経験して人とは会って話すのが一番いいのかなって思った。
そんなことを考えていると、
『素敵ですね。大切にします! こっちも、駅での4人の写真を送りますね!』
というメッセージが遥香さんから届き、その直後に私達4人の写真が送信された。
「おっ、いい写真だね、これは」
「そうだね、絢ちゃん」
彩花さんにお礼のメッセージを送っておかないと。
『ありがとうございます! 大切にします』
『待ち受けにしたいね、これ』
絢ちゃん、待ち受けにしたいって。
でも、絢ちゃんの言うように……待ち受けにするにはいい写真かもしれない。今、待ち受けにしている絢ちゃんとのツーショット写真といい勝負かも。
「……この写真からも、すっかりと遥香は元に戻ったように見えるよ」
「絢ちゃん……」
「もう一度、キスしてもいいかな。遥香が遥香であることをまた確かめたいんだ。もちろん、遥香が私の隣に座っているのは分かっているんだけどね」
「……いいよ。じゃあ、絢ちゃんからしてくれる?」
「うん」
絢ちゃんの方を向いて、私はゆっくりと目を瞑る。
すると、程なくして私の唇には温かくて、柔らかくて、優しい感触が。それが絢ちゃんの唇であるのは分かるけれど、絢ちゃんの方は私のことをちゃんと感じてくれているかな。
「……やっぱり、遥香はここにいるね」
絢ちゃんにそう言われたので、ゆっくりと目を開けると、そこには爽やかに笑っている絢ちゃんがいた。
「絢ちゃんも目の前にいるよ」
それが、とても嬉しかった。今回の旅行で一番得たものは絢ちゃんなんじゃないかなって彼女の笑顔を見ながら思った。
「私と隼人が2人のすぐ側にいるんだけどね」
私達の方に振り返り、奈央ちゃんはニヤニヤとした表情を浮かべながらそう言った。
そうだ、ここは絢ちゃんと2人きりの空間じゃなくて、お兄ちゃんと奈央ちゃんもいたんだった。ううっ、恥ずかしいよ。
「そこは黙って見守るか、知らない振りでもしておいてやれよ……」
お兄ちゃんの言う通りだと思うけれど、車の中だからいずれは絶対に2人がいることは分かっちゃうし。ううん。
「だって、2人が後部座席でキスしてるんだよ? バックミラー越しでそれが見えちゃうんだよ? 気になっちゃうよ……」
「まあ、奈央のその気持ちも分からなくはない」
「……何だか、私達もキスしたくなっちゃったね。……する?」
「するんだったら、せめてサービスエリアに着いてからにしてくれよ」
「じゃあ、そのときは私と絢ちゃんがいるところで……」
「えええっ! そんなの恥ずかしいよ!」
「奈央ちゃんだって、さっきの私達のキス……気になって見ていたんでしょ? 奈央ちゃんとお兄ちゃんのキスは気になるよ……ね? 絢ちゃん」
「そ、そうだね……」
絢ちゃん、どうして顔を赤くしているんだろう。もしかして、男女のキスは見たことがないからかな。それにしても、顔を赤くしている絢ちゃんは可愛いな。
入れ替わりという普通ならあり得ないことも体験した今回の旅行は、私と絢ちゃんに色々なものをもたらしてくれたような気がする。そして、この5日間は輝かしい思い出として、私達の中にいつまでも在り続けることだろう。
Fragrance 8-タビノカオリ- おわり
(ひとまずはここで本作品は終了です。ここまで読んでいただきありがとうございました。)
私達が乗っている車は、最寄りのインターチェンジから高速道路に乗り、渋滞に巻き込まれることもなく家に向かって走っている。
「もう、こんな時間か。そろそろ昼ご飯をどうするか決めて欲しいな。10kmくらい先に、大きなサービスエリアがあるからそこに行こうと思ってる。俺は何でもいいから、3人で何を食べたいか決めてくれるかな」
確かに、もうお昼時だし、何を食べるか考えた方がいいかも。
これから行こうとするサービスエリアについて調べていると、和風、洋風、中華……もちろん、その地域のグルメのお店もある。迷っちゃうなぁ。
「どれにする? 遥香」
「そうだねぇ、たくさんあるから迷っちゃうね」
「実際に行ってみてから決めてみるっていうのもありなんじゃない?」
「奈央さんの言うことにも一理ありますね」
確かに、実際に行ってみると気分が変わることもあるよね。通路から見える店の雰囲気とか、食欲をそそる美味しそうな匂いとか。
――プルルッ。
そんなことを考えていると、彩花さんからLINEで写真が送られてくる。この旅行中に作った6人のグループトークのところだ。
見てみると、そこには美味しそうな駅弁の写真が2枚。1枚は幕の内弁当で、もう1枚は魚介類がたくさん入ったお弁当だ。
「うわぁ、美味しそうだね、遥香」
「うん。お腹空いてきちゃったよ」
これがいわゆる「飯テロ」っていうのかな。うううっ、お弁当の写真を見たらより一層食欲が増してきた。早くサービスエリアに着かないかな。
『美味しそうですね! 私達は今、車の中で何を食べるか話し合っていて。そうだ、さっきの2人の写真を送っておきますね!』
そんなメッセージを送る。あっ、そうだ。駅で撮影したツーショット写真も送っておこうっと。
2人とはさっき駅で別れたけれど、こういったSNS、メールや電話で離れている人とも繋がり続けることができる。それはとてもいいことだけれど、今回の旅行を経験して人とは会って話すのが一番いいのかなって思った。
そんなことを考えていると、
『素敵ですね。大切にします! こっちも、駅での4人の写真を送りますね!』
というメッセージが遥香さんから届き、その直後に私達4人の写真が送信された。
「おっ、いい写真だね、これは」
「そうだね、絢ちゃん」
彩花さんにお礼のメッセージを送っておかないと。
『ありがとうございます! 大切にします』
『待ち受けにしたいね、これ』
絢ちゃん、待ち受けにしたいって。
でも、絢ちゃんの言うように……待ち受けにするにはいい写真かもしれない。今、待ち受けにしている絢ちゃんとのツーショット写真といい勝負かも。
「……この写真からも、すっかりと遥香は元に戻ったように見えるよ」
「絢ちゃん……」
「もう一度、キスしてもいいかな。遥香が遥香であることをまた確かめたいんだ。もちろん、遥香が私の隣に座っているのは分かっているんだけどね」
「……いいよ。じゃあ、絢ちゃんからしてくれる?」
「うん」
絢ちゃんの方を向いて、私はゆっくりと目を瞑る。
すると、程なくして私の唇には温かくて、柔らかくて、優しい感触が。それが絢ちゃんの唇であるのは分かるけれど、絢ちゃんの方は私のことをちゃんと感じてくれているかな。
「……やっぱり、遥香はここにいるね」
絢ちゃんにそう言われたので、ゆっくりと目を開けると、そこには爽やかに笑っている絢ちゃんがいた。
「絢ちゃんも目の前にいるよ」
それが、とても嬉しかった。今回の旅行で一番得たものは絢ちゃんなんじゃないかなって彼女の笑顔を見ながら思った。
「私と隼人が2人のすぐ側にいるんだけどね」
私達の方に振り返り、奈央ちゃんはニヤニヤとした表情を浮かべながらそう言った。
そうだ、ここは絢ちゃんと2人きりの空間じゃなくて、お兄ちゃんと奈央ちゃんもいたんだった。ううっ、恥ずかしいよ。
「そこは黙って見守るか、知らない振りでもしておいてやれよ……」
お兄ちゃんの言う通りだと思うけれど、車の中だからいずれは絶対に2人がいることは分かっちゃうし。ううん。
「だって、2人が後部座席でキスしてるんだよ? バックミラー越しでそれが見えちゃうんだよ? 気になっちゃうよ……」
「まあ、奈央のその気持ちも分からなくはない」
「……何だか、私達もキスしたくなっちゃったね。……する?」
「するんだったら、せめてサービスエリアに着いてからにしてくれよ」
「じゃあ、そのときは私と絢ちゃんがいるところで……」
「えええっ! そんなの恥ずかしいよ!」
「奈央ちゃんだって、さっきの私達のキス……気になって見ていたんでしょ? 奈央ちゃんとお兄ちゃんのキスは気になるよ……ね? 絢ちゃん」
「そ、そうだね……」
絢ちゃん、どうして顔を赤くしているんだろう。もしかして、男女のキスは見たことがないからかな。それにしても、顔を赤くしている絢ちゃんは可愛いな。
入れ替わりという普通ならあり得ないことも体験した今回の旅行は、私と絢ちゃんに色々なものをもたらしてくれたような気がする。そして、この5日間は輝かしい思い出として、私達の中にいつまでも在り続けることだろう。
Fragrance 8-タビノカオリ- おわり
(ひとまずはここで本作品は終了です。ここまで読んでいただきありがとうございました。)
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