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第一幕

日曜日⑦

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「待て~」由貴は僕を追いかけてきた。僕は神社の階段を降りて駐車場へ逃げ、駐車場で車のタイヤの影に隠れて息を潜めた。視界に由貴が映らないが、階段を降りる音がした。その音は徐々に確実に大きくなり、由貴は僕に近づいてきていた。車の下から覗き込んで由貴が来ていないか見ると、由貴の足元が見えこちらに近づいてきているのがわかった。僕は音を立てないように体勢を整え、いつでも逃げれる準備をした。足元が死角に入り、逃げるタイミングを測って今だと由貴の向かう方向と反対に走りだすとそこに由貴が居た。
「え⁉︎」僕は驚きのあまり立ち止まってしまった。由貴は勝ち誇った顔で
「はい、タッチ。君が鬼だよ。10数えてね」と僕の肩に触れた。
「何でそこに居たの?」
「君が車の影に隠れているのが分かって、反対方向に逃げるかなと思ってフェイントかけてみたの」
「何で分かったの?」
「丁度私が神社の階段降りる時に君が車の影に隠れているの見えてたんだもの」由貴はふふっと笑った。
「ほら、数えてね」
「ちょっと待って」僕は逃げようとする由貴を止めた。
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