破滅へGO

菫川ヒイロ

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「ごめんなさい。私が悪いの……」


「いや、違う。俺が悪いんだ! 彼女は何も悪くない、だから……」


 ビルソンはこの湧き上がる感情を一体何処へぶつければいいのかが分からなく
 なってしまった。
 
 
 彼女の告白。
 親友の裏切り。
 
 
 どちらも彼には許し難い事である。
 
 
 ビルソンにとってはどちらも大切な人だったのに、なのにどうしてこうなった?
 俺が一体何をしたというのだろうか? こんな仕打ちを受けないといけない事を
 何かしたとでもいうのだろうか?
 
 
 親友のワツリは子供の頃からの付き合いだ。
 何時だって、何だって、二人でやって来た。
 だから俺達はいつも一緒に怒られては、二人で笑い合っていた。
 
 
 そんな親友がまさか、自分の婚約者となんて信じられなかった。
 
 
 俺がスリーダと婚約する事にしたのは彼女が俺にとって特別だと分かったから。
 運命の相手だって思っていたし、彼女もそうだったはずだ。
 なのにどうして、よりによって俺の親友となんて。
 
 
 彼女がそんな事をするような女だとは思えなかった。
 
 
 でも、ダメだ。
 
 
 俺は親友と婚約者を同時に失った。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 『なんて事をしてしまったんだ! 』
 
 
 ワツリはそう思いながらも、これからの事を考えていた。
 
 
 大切な親友を失った悲しみはあるが、それは全て自分が招いた事だった。
 だからそれはこれから一生背負って行くつもりだ。
 そして何よりも、これからは彼女の一生を背負うと決めた。
 
 
 スリーダをビルソンから紹介された時はただただ祝福した。
 親友が一番に自分に紹介してくれたという事実がとても嬉しかったから。
 
 
 でも、どうしてだろうか?
 俺は彼女から目が離せなくなってしまったのは。
 
 
 親友の彼女、婚約者だとは分かっていてもそれでも俺は……
 
 
 結局親友を裏切る事にはなってしまった。
 
 
 だから彼女だけは必ず幸せにしようと思っていたのに、彼女は首を縦には
 振らなかった。
 
 
 どうしてだ?
 
 
 俺は親友と彼女を傷つけただけの奴になってしまった。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 スリーダには子供の頃から何となく分かっていた。
 どうやら私は他の人達とは違うようだと。
 
 
 誰かが積み上げた積み木を崩すのが好きだった。
 誰かが作った砂山を壊すのが好きだった。
 だからトランプタワーを作っては壊す遊びがお気に入りだった。
 
 
 彼女は成長してもそれは変わらない。
 
 
 だから今回の事がどうなるのかが彼女にとってはとてもギリギリな遊びだった。
 でもそれが何よりも彼女を興奮させた。
 自分を賽にして投げ出す事が彼女にはたまらなく、何よりも楽しかった。
 
 
 だからお礼が言いたい。
 
 
 彼女は今が一番の幸福だった。
 出来るのであればもう一度と、願わずにはいられない。
 
 
 
 
 
 
 




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