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しおりを挟む雨が降っていた。
パツ、パツ、パツと当たって弾ける雨粒から私を守ってくれる傘は二人が入る
には少し小さくて、彼の肩が濡れてしまっている。
こういう時はどうすればいいのだろうか?
きっとそれ指摘してしまったら彼の優しさを無下にしてしまうのだろうし、
でも彼が濡れてしまうのも何だか嫌で、胸が痛くなる学校からの帰り道を
少しでも長く続いて欲しいと願ってしまう。
どうしようもなく悪い人間だなって自分でも思うけど、それでもこんなにも
愛されていると実感出来る時間がとても愛おしくて、どうしても手放したく
なくって、何だかもう私の心の中はめちゃくちゃに渦巻いていた。
この湧き上がってくる感情にもうどうにかなりそうで私は少しだけ彼に近寄る。
そうすると彼も横へ距離を取ろうとするから制服の裾をつまんだのはこれ以上
離れてしまわないように。
制服越しに彼の体温が急に上がったような気がして、そんな事が伝わってくる
はずもないのに私の鼓動も早くなり、彼にもそれが伝わってしまっているのでは
ないかと考えると余計に速度が上がった。
恥ずかしいけど、それでも伝わって欲しいと思う、私に伝わったように。
彼へのこの気持ちが少しでも届いていればいいなと思いながら雨の中を二人、
相合傘をしながら歩いた雨の帰り道。
私の心臓はスピードを上げていく。
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