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戦士ヴィドルシス
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しおりを挟む「戦士長、ご結婚おめでとうございます! 」
そう部下に言われて俺は訂正する。
「まだ、婚約しただけだ」
「失礼しました。ですが、おめでとうございます」
「嗚呼、ありがとう」
俺は婚約した。
彼女はとても素晴らしい女性である。
綺麗で、慎ましく、料理もうまい。
俺にはもったいないくらいの人だと自分でも思う。
そんな彼女と婚約した。
まあ恐らく、多分、結婚する事になるだろう。
否、必ず結婚するのだ。
彼女との結婚生活を想像するだけで、ニヤニヤが止まらないが、部下にそんな
所を見せる訳にもいかない。なにせ俺は戦士長なのだから。戦士長自ら風紀を
乱すなんて事にならないようにしなくていけないのだ。
とはいえ、気の緩みは確かにあって、だからなのか何なのか予想外の事が起こる。
「果たし状? 」
俺の机の上に置かれたそれにはそう書いてあった。
とりあえず透かしてみたが、何も無いようなので開けてみた。
内容は俺との戦いを望むという内容だった、彼女をかけての。
「ふむ。どうしたものか」
正直、俺よりも強い奴などそうそうはいない。
ただ彼女をかけてとなると話は違ってくるのだ。
逃げるなんて事は許されはしないし、俺自身が許せないからだ。
*****
指定された場所へ行ってみれば、もう相手は待ち構えていた。
「待っていたぞ! さあ俺と戦え! 」
「本当にそうなのか」
吠える相手を見て俺はつぶやく。
果たし状に書かれていた名を見て俺は、出来れば嘘であって欲しいと思っていた
からだ。
「本気なんだな? 本気で俺と戦うというのか弟君! 」
「当り前だ! 俺の大事な姉さんをお前になどやりはしない!
姉さんと結婚するのは俺だ! 」
男の子だなと思ったし、こんなにも兄弟から想われている彼女は素晴らしい。
ただ結果などやる前から分かり切っているのだ。大人と子供。平民と戦士。
力の差は明らかだ。なのにそれでも弟君は挑むというのだ俺に。
「分かったよ。ただ真剣は止めよう。傷つくと彼女が悲しむ」
そして木刀での果し合いが始まる。
「かかって来なさい」
明らかな身長差、間合いが違い過ぎる。
俺は考えていた、どうやって終わらそうかと。
多少は受けてやり、後は軽く弾いてやろう。
そんな感じで、稽古ぐらいのつもりだった。
「なっ! 」
一瞬で間合いをつめられ、連打、連打、連打の応酬。
予想外の攻撃に俺は慄く。
『こんなに出来るのか、この子は』
新人相手なら確実に一本とれているだろう。
素晴らしい才能。だからつい部下を相手にするようにしてしまう。
「くっそう。姉さんは渡さん」
ぶっ飛ばした弟君にはまだ戦う意思があった。
なら認めるしかあるまい。
今まで子供だと、ただの平民だと侮っていたと。
「悪かったな弟君。俺は間違っていたようだ。君はもう十分に戦士だ。
認めよう、戦士ヴィドルシス。君に私の全てを見せよう。そして判断してくれ。
君の姉に、彼女に私が見合う男かどうか。いくぞ! 」
*****
その一太刀で地面が割れた。
俺にとってそれは初めての出来事だった。
姉の婚約者は凄い人だった。
「参ったな、あんなの勝てる訳がない」
戦士とはあんなにも強い人達なのだとしたら、俺にはどうやったて適う訳がない。
「ごはん出来たわよ! 」
不貞腐れている俺に姉が言う。
あと何回、口にする事が出来るのか分からない姉の料理を俺は搔き込んだ。
心なしか今日のご飯は塩分が多かった。
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