ブルー

菫川ヒイロ

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ラブソングを聞かせてよ

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 私はラブソングをよく聞く。
 だってそんな事があるなんて思っていなかったから。
 あり得ない状況を想像する事は楽しかったのだ。
 
 
「ぼ、僕と付き合ってください」


 だから告白される事が私の人生の中であるなんて、考えた事などなく、
 こんなラブソングみたいな状況がやってくるとは……
 だから当然、答えは決まっていた。
 
 
「よろしくお願いします」


 こうして私に人生にメロディーが流れだす。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「何、あんた。いい事でもあったの? 」


 翌朝、母からそんな事を聞かれた私。
 
 
「何でもない」


 そう言って学校へと登校する。
 学校までの道はいつもよりも綺麗で、華やいで見えた。
 
 
 こんなにも人は変わるのだと実感しながら教室へ入れば、クスクスと笑い声が
 聞こえてくる。
 
 
「ねえ、どうしたの浮かれちゃって? もしかして彼氏でも出来た? 」


 そんな事を聞かれて私は悟ってしまう。
 
 
 『何だ、全部嘘だったのか』
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「ねえ、どうしてあんな事したの? 」


 私が問い詰めれば
 
 
「罰ゲームだったんだ」


 そう答えた彼。
 私と付き合う事は罰ゲームに相当するらしい。
 
 
 きっと彼らにとっての私という人間、否、物か、はそういう物なのだろう。
 どんな事をしたって大丈夫で、何をしても許される。何とも都合のいい物なのだ。
 
 
 もう、私は誰も好きになんてならない事にした。
 

 だからラブソングを聞かせてよ。
 
 
 
 



 
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