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卒業
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しおりを挟む「私達は今日、卒業します! 」
すすり泣く声が聞こえる中で進んで行く式典。
進行表通りに進んで行く卒業式は会話などした事のない校長の話を聞き、保護者
代表の話に、在校生代表とまったく関わった事のない人達の話を聞く事が殆んど
だった。
一体どこが泣くポイントだったのかと考えながら歌う校歌は数える程しか歌った
事がなくて、きっともう歌う事も、思い出す事もないだろう。
まったく思い入れのない歌はきっと有名な作曲家が作ったものなのだろうけど、
俺にとってはその程度でしかない。
漸く式が終われば、体育館から送り出されて教室へ。
担任から卒業証書を受け取って終了だ。
寄せ書きだの写真だのと思い出作りがみんな大好きだが、
俺は卒業アルバムは綺麗に取っておきたい派なので落書きはなく、
写真は命を吸い取られるので写らない事にしている。
俺は気づかれないように教室を出て帰路につく。
涙出来るほどの思い出はここには一切ないのだから長居する意味はまったく感じ
られないからだ。
入学して卒業したここを、これからは母校と呼ぶのだろうか?
そう呼べる程の親近感は未だ感じられないが、いつかはそう感じる時が来るの
かもしれない事にまったく期待していない自分がいる。
「これが最後なのか」
振り返って校舎を見る。
ただもうここに来る事がないと言う事実に自分が卒業したのだと実感した瞬間
だった。
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