菫川ヒイロ

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 よーく考えてみた結果だった。
 
 
 
「婚約は破棄するから」



 それが妥当な判断だと思ったし、今までの自分がどうかしていたと後悔の念に
 押しつぶされそうだった。どうしてこんな奴と……
 
 
 
「何? 急にそんな事言われたって分からねえよ! 」



 理解なんてしなくてもいいし、して貰いたくもない。
 そもそもこんな奴と一緒に居るという事が私にとっての人生の汚点であり
 間違いで恥部だった。
 
 
 
 こいつの第一印象は最悪だった。
 だからこんな奴と関わるなんて事は絶対にないと思っていたし、付き合ったり
 ましてや婚約までしてしまった私は完全にどうかしていた。
 
 
 
 マイナスからスタートである。
 少しばかりのプラスが他の人のプラスよりも大きく見えてしまった。
 いくらプラスされた所で結局はマイナスのままだったのだ。
 
 
 
 なのに私はマイナスの部分をいつの間にか省いていた。
 だから結果としてプラスばかりが積み重なって行くという謎の計算が行われ、
 粉飾決算となった。
 
 
 
 不正が行われたのであれば、正さなくてならないし
 当然のように責任を取って罰も受けないといけないのだ。
 
 
 
 私はこれから男を見る目がない女として生きて行かないといけないし、
 それを聞きつけてやってくる糞野郎どもと対峙しないといけない。
 そんなこれからの人生が私には用意されているのだ。
 
 
 
 そんなレールに乗ってしまった私。
 途中下車をしたいが、生憎急行に乗り込んでしまっているのだ。
 次の駅は遥か先である。
 
 
 
 こんな事ならいっそ、道を外れてしまえばいいのではとも考えたが
 そもそも自分が走っている道が既にハズレの道だった事を思い出し、止めた。
 
 
 
 ここから外れてしまってはもう
 予想も出来ない場所へ着いてしまいそうだったから。
 
 
 







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