上 下
1 / 1

しおりを挟む




 私は今日、婚約破棄をされました。
 「運命の人が見つかったんだ」って言われて
 「君との婚約は無かった事にして欲しい」なんてそんな事……
 
 
 私は本当に彼を愛していました。
 きっかけが親同士の約束だったとしても、そんな事など関係無しに今までやって
 来たと思っていたのに……
 
 
 どうやらそれは私だけだったようで、彼はそんな事、一ミリも思っていなかった
 という事なのでしょう。
 だから私は婚約破棄を受け入れました。
 
 
 これは彼の為なのだと自分に言い聞かせて、自分の気持ちに嘘をついて、
 蓋をして、気づかないふりをしました。
 
 
 結果、私には心に傷を抱える事になり、
 ちょっとした瞬間に彼の事を思い出す度にその傷は大きく深くなっていきました。
 
 
 こんなに苦しいのなら、もう誰も好きになんかならなくていいと
 毎晩泣いていた私を心配した両親や親友が私を外へ連れ出してくれて、
 少しずつですが気持ちも晴れ、傷にもかさぶた出来てきた頃に
 デリロ王子と出会いました。
 
 
 デリロ王子はとても王子ぽっくない王子でした。
 だからすごく親しみやすくて、私もついつい敬語を忘れてしまって
 何度謝った事か。でも王子はいつも嫌な顔もせずに許してくれました。
 
 
 そんな王子から急に求婚されて私はとても怖くなりました。
 もう誰も好きにならないと決めたはずなのに、
 それなのに彼に惹かれている自分に気づいてしまったから。
 
 
「ごめんなさい、私は出来ません」


 私はその申し出を断ってしまいました。
 またズキズキと痛む胸に、到底そんな気持ちにはなれませんでした。
 
 
 なのに彼は翌日私に会いに来てくれました。
 いつもと変わらない笑顔で私に笑いかけてくれる彼に私は……
 
 
 親友に打ち明けてみた私に、親友はそっと背中を押してくれました。
 
 
 だから私は決心しました。
 
 
 
 傷ついた心を震わせながら、彼に思いを伝えに行きます。
 
 
 
 
 私、もう一度恋をしてみようと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...