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しおりを挟む私達はいつの間にか飛ばされていた……砂漠に。
見渡す限りが砂しかないそんな場所で私は途方に暮れる。
何をどうなってこうなったのか?
そんな事を考える事さえ馬鹿らしくなってしまう。
「何よこれ。馬鹿じゃないの? 」
文句を言った所でどうなる訳でもないけれど、それでも言わずに居られない。
それぐらいは許されるはずだ。だというのにワタナベさんは止まる事なく進んで
行くのである、文句も言わずに。
そんな寡黙な姿に私は敵わないなと思う。
カッコいいなと思ってしまう。
これだって思ってしまった。
「ちょっと待ってよ」
私はワタナベさんの後をついて行く。
歩いていると私の人生もそうでありたいと思ってしまった。
ワタナベさんと同じ道を歩いて行きたいと思った。
これはきっと恋だ。
ワタナベさんの姿がとても凛々しく見える。
その歩く姿が愛おしい。
これ即ち恋の始まりだった。
私達だけの世界で恋が芽生えてしまったのなら、
もう咲かすしかないだろう。
「私と結婚しませんか? 」
この先、どんなことがあってもワタナベさんとならやっていけると思った。
ワタナベさんとなら何も怖くはないと思えた。
だから私は求婚した。
「いや、獏だから」
ワタナベさんはそんな事を言うけれど、それが何だと言うのだろう?
この世界で私達しかいないのだ、問題なんて何もない。
これはきっと運命だ!
「そんな事、関係ありませんよ! 獏だからって何だって言うんですか? 」
「関係大ありだよ。そもそもこうなったのは君の所為じゃないのか? 」
「え、私? 」
「え、違うの? 」
ワタナベさんは何か勘違いをしている。
確かに私は夢を食べるけれど、だからと言ってこんな力はないのだ。
砂漠へ急に飛ばすなんて力を持ってなんていない。
「じゃあ誰の仕業? 」
「さあ? 」
それが分かったからといってどうなる訳でもないし、どうでもいいのだ。
私はワタナベさんと一緒ならハッピーエンドを迎えられると信じている。
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