季節は過ぎても

菫川ヒイロ

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「好きな人が出来たからごめん。きっと運命だと思う」


 そんな理由で貴女は私に別れを告げた。
 分かってはいた、きっと私じゃ勝てないんだって事は。
 どんなに私が貴女の事を想った所で、私達が一緒になるなんて事はない。
 
 
 私から告白した。
 そして貴女はそれを受け入れてくれた。
 その時、私がどれだけ嬉しかったのか貴女にはきっと分からないのだろう。
 
 
 それが条件付きであったとしても。
 貴女に運命の相手が現れるまでの間だけという、そんな条件でも私は
 嬉しかった。
 
 
 貴女にしてみれば一時の気の迷いで、ちょっとした遊び程度の考えでしか
 なかったのかもしれない。少しばかりの好奇心が貴女を動かしたのだとしても
 私には十分だった。
 
 
 貴女を必ず振り向かせてみせるって、私が運命の相手になってみせるって、
 そう思っていたから、頑張れた。
 
 
 でも結果はダメで、私が勝つなんて事はなくて、
 去って行く貴女を呼び止める事も出来ずに、ただ見ている事しか出来なかった。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 あれからどれくらいの季節が過ぎただろうか?
 それは偶然だった。
 もう会う事も無いと思っていた貴女と出会ってしまった。
 
 
 貴女は当たり前みたいに、私に声を掛ける。
 
 
「元気にしてた? 」


 なんて貴女は私に聞くけど、そんな事ある訳ないじゃない。
 だって私は今でも貴女の事をまだ好きでいるんだから。
 

 だから、貴女のその笑顔に私は何って答えればいいのだろうか?
 
 
 自分で思っていた以上に好きだった貴女に。
 
 
 






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