1 / 1
1
しおりを挟む「話があるんだ」
始まったと思った。
「とても重要な話なんだ」
だから私は椅子に座り直した。
*****
「君との婚約は破棄させてもらう」
私は彼の言葉が終わると、もう冷めたお茶を一口含む。
「そこまで言うのなら分かったわ。いいわ、婚約破棄しましょ」
そして私は席を立ち、店を出た。
コツコツと地面を鳴らしながら歩く。
ちょうど突き当りを左へと曲がった。
「はあ~、ダメだったか。今度は行けたと思ったのに……」
私は独り言ちる。
結局駄目だった事を悲しむも、もう慣れっこだった。
だから頭の中で次の事を考え始めていた。
「ん、どうしたんだい? 何がダメだったんだい? 」
「気にしないで、こっち事だから。さあ、話を続けて頂戴? 」
彼の問いに私はそうあしらう。
「そうかい? なら続けさせてもらうが、その前に君のそう言う所は良くないと
思うよ……」
彼の話がまた始まったが、私はもうそんな事でいちいち傷ついたりはしないのだ。
だってこれで彼に婚約破棄をされるのは14回目だったから。
どうやら私はどうやってもここへ戻って来てしまうようだった。
*****
これでも大分進んだ方だと思う。
今までは店を出た途端にここへ、彼の前へ引き戻されていたのだから。
だからかなりの進歩だった。
どうやら彼からの婚約破棄はもう決定事項のようで、それを拒否したりすれば即
時間が引き戻される。そして長々と彼の話を聞かないといかない羽目になるの
だから早くここから抜け出したかった。
そう何度も自分の悪口を言われて真っ当で居られる訳もなく。
今はとりあえず次の行動をどうするのかを考える事に時間を使っていた。
むしろそっちの方が今の私には重要なのだから。
さっきは突き当りを左へ曲がって戻って来た、なら次は右へ進もう。
私は次の行動決め終わったら、さっそく次の行動に入る。
次は自分を守る為に彼の悪口を考える事に時間を使うのだ。
何も彼の言い分ばかりを聞いてやる必要などないのだから。
彼は微妙に裾が短いパンツを穿いて来る、そういう所気持ち悪い。
流した前髪もナルシスト感があって嫌いだ。
「君との婚約は破棄させてもらう」
さあここからが本番である。
私は彼の言葉が終わると、もう冷めたお茶を一口含む。
「そこまで言うのなら分かったわ。いいわ、婚約破棄しましょ」
そして私は席を立ち、店を出た。
コツコツと地面を鳴らしながら歩く。
ちょうど突き当りを右へと曲がる、今回こそは上手く行くように祈りながら。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる