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景色
新芽
しおりを挟む私は心配していた。
あれだけ何もせずに、息すらもしているか怪しい。そんな状態だった彼女が
急に動き出したから。
それは本当に急だった。
とりあえずの生存確認の為に彼女の家へ行った私に飛びついて来た。
「お腹が空きました」
それを聞いて少しホッとした私は、買ってきたプリンを渡す。
「おおおお、神よ~ 」
そう言ってすぐにプリンを食べだした彼女はあまりに残念な女だった。
上下のスウェット姿にボサボサの髪、獣のようにプリンを貪るその姿は他人様に
はとても見せる事が出来ない。
でもまあ、ようやく復活したようでなによりである。
今回は三カ月となかなかの期間だったのでもうダメなんじゃないかと思い始めた
所だったのだ。
この女、木彫岬は恋愛体質だった。
そんな奴が失恋をしたら、そりゃあ大ごとになるに決まっていた。
ノーガード戦法の彼女の恋の終わりは、いつもボロボロになっている。
何も考えずに全てを恋愛へと注力出来る彼女の事を少し羨ましく思ったりもする
けど、こんな姿を見せられては自分には無理だと再認識させられる。
私の分のプリンまで悪びれずに食べた岬はつぶやく。
「お店、開こうかな」
自分の気持ちに正直な彼女はこれと決めれば必ずやる女であった。
*****
「いらっしゃい。どうよ、私の店は? 」
あれから半年もしない内に岬はお店をオープンさせた。
「それにしても、本当に開くとはね、焼き芋屋」
「まあね、あの時閃いたのよ! 」
「プリンを食べながら? 」
「そう! 」
一体彼女の思考回路はどうなっているのか私には理解不能だが、お店には
そこそこ人が来ているみたいだし、心配はないだろう。
きっと岬は何処ででもやっていけるのだ。
また新しい芽を出して、やがて綺麗な花をさかせるのだろう。
「すいませ~ん」
ほらまた、匂いに誘われた虫たちがやって来た。
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