10年目の浮気

１

　私は確かに貴方の事が好きだった事は認めないといけない事なのだろう。
　あれだけの濃い日々を過ごした思い出は消える事なんて無かったからだ。
　もうあれ以上は無いと本気で思っていた。
　
　
　それもまあ、全部は若かったからという理由で済まされる事なのかもしれない。
　若気の至り。他人はそう呼ぶのだろうし、私もそう呼んでいる。
　どうしてあんな事やこんな事が出来たのだろう？
　今思い返しても赤面するような事ばかりだ。
　
　
　でもそれは訪れた。
　それは一つの答えだったのだろう。
　貴方が言ったのだ、婚約破棄するって。
　
　
　あの時の私がどんな気持ちだったかなんてきっと貴方には分かるはずもない。
　どれだけ傷ついたと思っているの？　
　私の事を一体何だと思っていたの？
　真面でいられる私じゃなかった。
　
　
　でもそのおかげで出会う事が出来た、夫に。
　絶望の淵から私を救ってくれた夫には感謝しかない。
　だからこの人しかいないと思えたし、そうじゃないといけない気がしたのだ。
　
　
「よかったね」


　貴方は私にそう言う。
　私の話など聞いてはいないのだろう。
　それは貴方にとってはどうでもいい事なんだろうと思うし、
　興味がないのは分かってしまうのはどうしてだろうね。
　
　
　結婚して10年も経った。
　そして今私の横に貴方が眠っている。
　10年ぶりの再会は私を真面では居させてくれなかった。