ホラー倉庫

菫川ヒイロ

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ラビリンス

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 私はいつもの様に目が覚めたらベットから落ちていた。
 寝相が悪いから落ちるのだろうが、一体どんな夢を見ていたかなんてまったく
 覚えていないから、ただまた落ちたのだと思いながら起きるのだ。
 
 
「おはよう、またすごい寝ぐせがついてるわよ」


 母親にそう言われても『嗚呼そうなんだ』程度の認識で洗面所に向かい、
 鏡に映った自分の姿にこれが現代アートって言う奴なんだろうなと自分の未来に
 芸術家の道が開いた事を喜ばしく思いながら寝ぐせを直した。
 
 
 食卓に着いたものの、朝からごはんなんて食べられる気がしない私はいつも
 梅干しをひとつ齧る。う~ん、酸っぱい!
 
 
「もう、こっちまで酸っぱくなるからその顔は止めて」


 朝からしっかり食べる派の姉にそう言われても酸っぱいものは酸っぱいので
 止められないし、そもそもこれは自然とそうなるのであって意識的にしていない
 から自分の意思ではどうにも出来ないのだ。
 
 
「はい、牛乳」


 そして私は母親に出してもらった牛乳をぐびっと飲み干して朝食を終えるが、
 姉はそんな私を見ていつも嫌そうな顔をしながら二杯目のご飯を食べ進めている。
 もはや何か言うつもりもないらしいがその表情から言いたい事は分かるのだ。
 そりゃあ十何年も姉妹をやっているのだからそれぐらいは分かる。
 
 
 言葉も交わさずに相手の気持ちが分かるという事がコミュニケーション能力が
 高いという事なのだから、きっと私はコミュ障ではないはずである。寧ろ相手の
 気持ちを推し量れない者の方がコミュ障なのである。
 
 
「行って来ます」


 そして私は今日も学校へ行く。
 それが私のしなければいけない事なのだから行く。
 例えどんなにコミュ障だらけの場所であろうとも私は行くのだ。
 だって私は何も間違ってなんかいないのだから。
 
 
 でも少しだけ、ほんの少しだけ思ってしまうのだ。
 みんないなくなってしまえばいいのにって。
 そうなれば私は毎日をこんな気持ちで電車に揺られながら学校へと向かわないで
 すむのにって思ってしまう。
 
 
 そんな事が実際に起きるはずがないのに……
 
 
 ドン!
 
 
 突然の音共に急ブレーキの音、そして世界はスローモーションで動き出して
 私は何となくこの後の事が分かってしまった。
 自分の人生の終わりがこんな終わり方だなんて想像していなかったから、
 こういう瞬間って意外と冷静に物事を考えられた。
 
 
「あのおじさん、やっぱりカツラだったのね」









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