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しおりを挟む「手伝うよ」
彼は突然現れて、私の荷物を持った。
それはきっと彼にとっては当たり前の事で何も特別な感情なんてものはない。
ごくごく自然な行動であったのだろうけど……
そんなの誰だって勘違いしてしまう。
彼に優しくされたら、誰だって恋に落ちてしまう。
こんな冴えない私でさえも……その笑顔はズルいと思った。
いつまでたっても治らないこの病から私はどうやって逃げ出せるのか?
なんて考えてみたけど結局答えなんて見つかりはしないのだ。
恋を忘れるには恋をすればなんて言われても無理なのだから。
何せこの恋が初めての恋で、そうそう恋なんてするような人間ではない私がだ、
この恋を忘れるぐらいの恋を出来るなんて到底思えない。
まさか初めてがこれなんてトラウマものだった。
もう恋なんてしなくていい。
寧ろこんな感情を私から失くして欲しい。
彼との思い出なんて全部消して欲しい。
こんなものがあるから私はこんなにも苦しまなけばならないのだ。
この病巣を取り除いてくれる医者は何処かに居ないのだろうか?
出来れば今すぐオペをお願いしたいのだが?
なんて天邪鬼な私に対して彼は言う。
『どうしたの? 何かあった? 相談に乗るよ? 』
そんな甘い甘い、ハチミツのような言葉を私にかけてくる彼に私は何と返事を
すればいいのだろうか? いっその事、今ここで全てをぶちまけてしまえば
少しは楽になれるのだろうか?
でもそんな事出来る根性なんて私にはないのだ。
「大丈夫」
そう言って彼から距離を取るだけで精一杯だったし、そう言えた自分を自分で
褒めてあげたいくらいだった。危なかった。これ以上は確実に致死量だった。
彼の優しさは私の心臓をえぐる。
どうせ死ぬのなら死に方は自分で選びたかった。
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