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しおりを挟む今日は朝からツイていなかった。
セットしたはずの目覚ましは何故か仕事をせず、僕をたっぷりと寝かせてくれ
結局課長のモーニングコールで起きる事になってしまった。
「おい、どういうつもりかは知らんが理由だけは聞いてやるからさっさと来い!
精々気の利いた理由を考えて来るんだな、楽しみにしてるよ」
そう言って切れた電話。
僕は受話器を持ったままどうするかを考えた。
『よし、バックレよう』
それが寝起きに思い付いた最初の答えだった。
でもそんな事が出来る訳もなく、僕は急いでパジャマを着替えて家を出る。
車に乗り込んだ僕は少しでも早く会社に着くように近道を選択し、それが間違い
であった事をすぐに実感する事となった。
「今、止まらないで行こうとしたよね? 」
何故こんな時に限って捕まってしまうのか? こんな時だからなのか?
そんな事よりもと時計を見て課長が怒り狂っている顔が想像出来てしまった。
あーだこーだと長話をされている間ずっと貧乏ゆすりが止まらない。
長話を聞いて金を払って、辿りつた会社で課長からなが~い説教を聞かされて、
本当に今日は最悪の一日になった。
因みに遅刻の理由を「金縛りにあっていました」と言ったら、「俺が電話した
おかげで解けたんだから感謝しろよ」と恩着せがましく言われたので、「ありが
とうございま~す」と店員風に言った所為で説教が長くなったのかどうかは
分からない。
ともかくどうにか今日を乗り切れた自分のポテンシャルに感謝をしながら
峠攻めをしていた僕の車の前に不意に女が現れた、気がした。見間違いかも
しれないが何だか気になって戻ってみたら確かにそこに女が立っていた。
女と目が合うと、彼女はこちらへやって来たかとおもうと、
コツコツと窓を叩かれ、ゆっくりと窓を開けた僕に彼女は言う。
「乗せてくんない? 」
それが彼女との出会いだった。
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