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しおりを挟む仕事が終わると教会へ行く。
それが俺のルーティーンになった。
でもそのおかげなのかもう震える事はなくなったし、いつだって不思議と冷静で
いられるようになった。
「なんかお前変わったよな」
「そうかな? まあ慣れては来たよ」
「そうか……」
でもこの時は気付けなかったのだ。ジルがおかしくなってきている事に。
どこかでジルは大丈夫だなんて勝手に思っていた、別に俺とさして変わりはしな
いのに、同じようにただの人間だったのに、それが分かってはいなかった。
そして気が付いた時にはもう手遅れだったんだ。
ジルだって怖いものは怖いし、何かに頼りたいと思う事だってある。みんな
なにかしらに救いを求めていたのだ。ただそれがクスリだったというだけで、
それには副作用があったからジルはもう昔のようには笑わなくなってしまった。
最後まで一緒にいようと決めたのはそれが友達だからだ。
「ありがとうよソイダ。お前とダチになれてよかったよ」
最後はそう言って車で突っ込んでいった時俺は少しばかり戸惑ってしまって、
碌に返事なんて出来なかった。結局いつも助けられてばかりだった。
流れが変わった。
変わる時は一気に変わるものである。
「どうだ最近、上手くやっているのか? 」
呼び出されて早々、そんな事を言われても碌に仕事が出来ていない事はこの男が
一番理解しているはずなのだが。そのニヤついた顔に最初は正直すぐにでもぶん
殴ってやろうと思っていたがもう今は何度もみたから何も思わないようになって
いた。
「いえ、全然です」
「そうかそうか、まあ今回はちょっとしたお使いを頼みたいんだ。
何、簡単な事だ。この人を教会までお送りして欲しいんだ」
そこには修道服を着た男が眼鏡を光らせていたが、それはおかしな話である。
教会とは関わらないというのがこの町のこいつらの方針だったはずなのに、
どうしてこの男はここに居る? 何をしに教会へ向かう? 理由がまったく分か
らなかった。
「よろしく」
嘘みたいな笑顔を浮かべる男の手など握りたくはないが、差し出された以上断る
訳にもいかないから握った。それは聖職者とは思えない程の分厚い手をしていた。
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