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しおりを挟む「アンタとの婚約は破棄させてもらうから! 」
私は確かに彼女がそう言うのを聞いた。
「マジで? 」
そして兄が眼鏡をクイッと上げてから泣きそうな声でそう聞き返す。
その時に眼鏡が光ったのを見たのでアレは完全に泣いているのだろと思う。
「はあ? どうして私が嘘なんてつかないといけないのよ! 」
彼女のその言葉に兄の方がプルプルと震えているのが見えた。
「ぼういぢど、がんがえなぼじでばぼらえばぜんが? 」
兄が泣きながら彼女に懇願するも
「キッモ! 」
一蹴されてしまった。
確かに私もそれを見て身内ではあるがキモイと思ってしまったし、そう言われて
も仕方が無いと思う。
「ごおねがうぢばず」
兄が床に頭を着けた瞬間に私は無になる事にした。
これは私とは何ら関係のない出来事なのだと自分に言い聞かせる。
「死ね! 」
彼女はそう言い捨てると店を出て行った。
「アリガトウゴザイマシタ」
カランコロンカラン
ドアベルが鳴り響く。
*****
兄はしばらく微動だにせず床にへばり着いていたが、むくっと立ち上がると
ハンカチでおもいっきり鼻をかんだ。
チ~~~ン!!!
そして何も無かったような顔をしてお会計をしようとして、固まった。
「いつからだ? 」
どうにか声を吐き出した兄。
「最初から」
私はレジからずっと兄の姿を見ていた。
「そうか。釣りはいらん、取っておいてくれ」
兄はそう言って店から出て行った。
どうやら妹を買収しようという事らしいが……
こんな恥ずかしい事を一体誰が話すと言うのだろうか?
*****
その日の夜に家族会議が開かられた。
当然議題は婚約破棄である。
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