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しおりを挟む「ちょっと貴女、それは私のよ! 」
そう言って突然現れた女はズンズンこちらへと足を進めて来る。
その明らかに常軌を逸した女は私からそれを奪うとこう罵った。
「よくも平気で他人の物が取れるわね、頭、おかしいんじゃないの?
これは私の! 私のなのよ! 」
強引に奪ったそれを女はギュッと胸に包み込んだ。
でも、ちょっと待って欲しい。
それは私の物なのだ。
私は他人から取ったりなんてしない!
それは私が大切にしてきた物なのに……
それを急に現れたこんな奴に奪われて、私が何をしたっていうの!
「返して! それは私のよ! 」
「いいえ、これは私のです! 何処かに貴女の名前でも書いてあるの? 」
「それは貴女も同じでしょ! 貴女の名前を見せてみなさいよ! 」
「嫌よ! どうして私がそんな事しないといけないの? 今、私が持っているの
だから私の物なのよ! 」
こうなれば実力行使に出るしかない!
こう見えても私はポカット3級である。
「放しなさいよ! 」
「嫌よ、貴女こそ早く返しなさいよ! 」
二人で奪い合いをしているとそこへ老人がやって来た。
「もう止めなさい、みっともない。貴族令嬢がそんな事をするもんじゃあない!
ほれ、そこにもあるじゃないか。それじゃあいかんのか? 」
「駄目に決まっているでしょ! 」
「爺は黙ってなさいよ! 」
私達が老人に気を取られているとそれはポチャンと泉の中へと落ちてしまった。
「ちょっとどうすんのよ! 落ちちゃったじゃない!」
「貴女がさっさと放さないからでしょ! 」
すると泉から老婆が現れた。
「あなたが落としたのはこの金の婚約破棄ですか? それともこの銀の婚約破棄
ですか? 」
「どっちでもないぞ。ただ、そこら辺に落ちている婚約破棄じゃ」
その問いに答えたのはさっきの老人でした。
「おお、貴方は私の運命の人! 結婚しましょう! 」
「そうしよう」
こうして老人と老婆が結婚する瞬間に立ち会った私達は争う事を止めました。
「ねえ」
「何よ」
「私達、親友になれるんじゃない? 」
彼女の問いに、アナタならどうしましますか?
応援ありがとうございます!
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