そして女神は……

菫川ヒイロ

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温泉が好き!

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 A子は一番乗りだった。
 それは当然ご主人様に喜んでもらう為以外の何物でもなかったのだ。温泉に気持
 ちよく入ってもらう為に掃除をする事はとても重要なことである。だからこそ、
 誰よりも早く来て掃除をする事がA子にとって一番優先される。
 
 
 だからその現場を見てA子は動きを止めた。
 脱衣所から温泉へのドアを開け目の前に広がっていたのは死体である。首がちょ
 ん切られていたのだからそれはどこからどう見たって死体以外考えられないのだ
 が、それでも一応の確認をする。
 
 
「し、死んでいる」


 床には血が広がっていてそれが粘着質である事がA子にとっては最悪だった。
 どうすればこれを素早くかたずけられるだろうか? そんな事を必死になって考
 えてしまうのはA子にとっての優先順位がご主人様以外存在しないという事の証明
 でもあった。
 
 
 とりあえずは血はデッキブラシで洗い流そうと思い、次にこの死体をどうやって
 運べばいいのかを考える。流石にこのままここに置いておくというのはなしだ。
 こんな不快なものをご主人様の目に入れるなんてあり得ないのだから。でもさす
 がに一人でこれを運ぶのは大変だし、時間がかかり過ぎる。
 
 
「ちょっと何してるのよA子」


 そんな時丁度良くやって来たのがB子である。
 これ幸いとばかりにA子はB子に言った。
 
 
「良い所に来たわ。これを運ぶのを手伝ってちょうだい」


 それはA子にとっては当然の要求だった。
 だからただ単純に頼んだのだのにB子にとってはどうやら違っていたようだった。
 
 
「分かったのよ。仕方がない、今回だけなのよ」


 どうしてそんなに偉そうなのかA子には分からなかった。
 ご主人様の為に行動する事は私達にとって当たり前の事だというのに、どうして
 B子はA子に対してそんな対応を取るのだろうか? そんな事を考え始めようとし
 てすぐに止めたのはご主人様の事を優先するという思考回路からだった。
 
 
「ええ、お願いするわ」


 そうと決まればすぐに行動に移すのがA子だ。
 だから頭部を身体の上に置いて運ぶ準備をしていたらそこへC子もやって来た。
 
 
「何よこれ! どうしてこんな状況になっているの! 」


 現場を見たC子の問いにB子が答えるが、それはまさかの裏切りであった。
 

「違う、私は関係ないのよ! 全部A子がやった事なのよ」


 それにどれだけの意味があるのかなんてA子にはわからない事だったけど、それで
 もB子に何かしらの利益があるのだろうとは思った。それがB子の行動原理だから。
 
 
 3人には性能の差なんてものはないが、それでもC子がリーダーであったし、それ
 は生まれた時からそういうものだったのでそこに何かを思う事はなく、そもそも
 ご主人様以外の事を考えるなんて事がありえないA子にとってはどうでもいい事
 だった。
 
 
「私はやってない。そんな事よりも早くここを片付けるのを手伝って」


「A子、本当にそうなの? 」


「そうよ、A子はそういう子なのだからご主人様に報告しないとなのよ」


 どうやらB子はご主人様のA子の評価を下げたいらしいが、こんな事でご主人様が
 評価を下げるなんて事がありえないとA子は知っている。それはA子のご主人様へ
 の忠誠と同じようにだ。だからもう全てをC子に任せる事にしたのだ。
 
 
 
 








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