僕の夢

菫川ヒイロ

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「やあやあ、今日も元気かい? 」


 お姉さんはそう言っていつものように僕の横に座った。
 なんて事はない、よくある公園のよくあるベンチに僕達は並んで座りながら
 どうでもいいような事を話す。
 
 
 例えば、最近お母さんが妹の事ばかりを気にかけているから僕の事にまったく
 興味がなくて、こうして学校をサボっていたってどうって事ないって話とか。
 
 
 例えば、あそこの駄菓子屋の婆さんが当りを全部隠しているから絶対にクジは
 買ってはいけない事とか。
 
 
 例えば、お姉さんが最近婚約破棄されたって事とか。
 
 
 例えば、お姉さんは不良って奴で今日も悪い事をして来ただとか。
 
 
 そんな話をして僕達はここで時間を潰すのが日課になっていた。
 お互いのどうでもいい話をして、時間になったら帰っていくそんな僕達の関係は
 友達と呼べるものだろうか?
 
 
 でも僕はそんなものじゃあないような気がしていた。
 きっと僕とお姉さんは出会うべくして出会ったのだと思う。
 つまり、運命って奴だ。
 
 
 だから僕はいつか必ずお姉さんに言うのだ、『結婚して下さい』って。
 そしてお姉さんと一緒にこの街をでて暮らすのだ。
 その為にお金も少しばかりだが貯めているし、いざとなればこの買ってもらった
 腕時計を売ればいい。これはいい物らしいからきっと高く売れる。
 
 
 それが僕の夢だった。
 
 
「ミーチェ! やっと見つけたよ」


「な、何よ今更! 何をしに来たのよ! 
 アンタとはもう別れたんだから関係ないでしょ! 」
 
 
「俺が間違っていたよ! やっぱり俺には君が必要なんだ。
 愛してるよ、ミーチェ! 」
 
 
「もう、馬鹿~~~~! 」


 こうして僕の夢は破れた。
 ベンチから立ち上がった僕は駄菓子屋へ直行する。
 当たる事のないクジを引きに。
 
 
 
 
 
 





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