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しおりを挟む「嘘よね……」
そして私は目を覚ます。
パジャマはじっとりと湿っており、喉がカラカラだった。
とても嫌な夢を見た。
*****
きっとあんな事は起こらないとそう自分に言い聞かせつつ、
待ち合わせに場所へ急ぐ私は街の景色に既視感を味わっていた。
でもあれは夢で、それが現実に起こるなんて事が本当にあるのだろうか?
そんな嘘みたいな事が起こるなんて信じられない。
私は現実主義者である。
きっと気の所為だと全てを振り払った。
「やあ、遅かったね」
彼にいつもと違う所はない。
何もおかしな所なんてなかった。
きっと思い過ごしだと自分を納得させる。
そもそも未来なんて誰にも分かりはしないものだ。
そんなものが見えるなんて事がある訳がない。
誰かの願望がそんな嘘を生み出したのだ。
「実は君に話があってね」
だから彼がそんな口上を述べた時に私がすべき事は彼の話を聞く事ではなくて、
彼の話を遮る事だったのだろう。
そうすれば、違った未来があったのかもしれない。
「君との婚約は破棄させてもらうよ」
そんな夢で見たままの事が今、現実として行われている事に私はただ呆然と
見ている事しか出来なかった。
今、確実に夢が現実になっている。
何も出来ない私。
何の言葉も発せられない私。
そして行ってしまう彼。
私は知っているのだ。
この光景を知っている。
私は見ていた。
この光景をまた見る事になるなんて……
道の向こう側で彼が車に轢かれてしまう。
鈍い音と、悲鳴が聞こえる。
そして漸く、私の時間が動き出す。
全てが現実になった。
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