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「もう止めにしないか? 」


 そう彼に言われた時に私は思いました『これが婚約破棄なのね』と。
 でも私は納得なんて出来ないのです。私のこの気持ちは本物だと、真実の愛だと
 そう思うから。
 
 
 私がどれだけ彼の事を思っているのかなんて語り出したら、それはもう永遠と
 語れる事でしょう。だから私は彼にこの私の思いを、気持ちを伝えようとしたら
 横から知らい人が入ってきました。
 
 
「アンタ、それは酷過ぎるんじゃないか? この子がどれだけアンタの事を思って
 いるか考えた事はあるのかい? 少しでもあるのならこんな酷い事は言えない
 はずだ! まったくどうしてこんな奴が好かれてしまうのか、俺にはさっぱり
 分からないよ」
 
 
 急に割り込んで来たその男は何故か私の見方をしてくれているようですが、私は
 この人の事をまったく知らないので、正直どう対応していいのかがいまいち分か
 らずにいました。
 
 
「君も君だよ! どうしてこんな男を選んだんだ? こんなろくでもない奴なんか
 選んだって仕方無いじゃないか! 」
 
 
「何なんですか貴方! 急に入って来て! 私が誰を好きになろうと私の勝手で
 しょ? 」
 
 
「俺は君の事を思って言っているんだ! 君が毎日待ち合わせ時間よりも早く来て
 待っているのも知っているし、彼の物を拾ってあげる優しさを持っている事も
 知っている! 君はいつだって彼の為に行動して来たじゃないか! なのにこの
 男ときたらそんな事などお構いなしだ! こんな血も涙もないような奴の事なん
 てさっさと忘れた方がいいに決まっている! 」
 
 
「貴方になんて彼の良さは分からないわよ! 大体ね、私は全部好きでやっている
 んだからそれでいいのよ! 見返りを求めてやっている訳じゃない! 私はそん
 な打算的な女じゃないわ! 謝って! 彼に謝って! 」
 
 
 私は自分が大好きな彼の事を悪く言うなんて許せませんでした!
 一体何なのでしょうかこの男は? 急に私達の間に入って来てこんなに引っ掻き
 回して、どういうつもりなのでしょう。
 
 
「それは無理だ。だって俺は君の事を思って言っているんだから、謝るなんて事
 出来る訳ないじゃないか! 」
 
 
「あの~、すいませんお客様。他のお客様のご迷惑になるのでお静かにお願いしま
 す」
 
 
「すいません、もう出ますので。ご迷惑をおかけしました。皆さんの分も私が
 お支払いさせて頂きますので、どうかごゆっくり」
 
 
 彼はそう言うとお会計を済ませて行ってしまいます。
 当然私も彼の後を追いました。
 
 
「待って! 」


「もういい加減にしてくれないか! もううんざりだ! 僕は子爵家の者なんだ。
 周りに迷惑をかけるなんて事は考えられないよ! 」
 
 
「ごめんなさい。でもそれは、この男が…… 」
 
 
 この男の所為で彼に叱られてしまったではないか! 
 それにどうしてまだこの男はついて来るのか?
 

「君も一緒だよ! もう僕につきまとうのは止めてくれ! 君達は自覚していない
 ようだから教えてあげるよ、君達のような人の事をストーカーって言うんだ!
 今後、僕に近寄らないでくれ! 警告はしたよ! 今後は権力を使うからね! 」
 
 
 彼は行ってしまった。
 私達、ストーカー二人をその場に残して。
 
 
 
 
 
 
 


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