1 / 1
1
しおりを挟む目が覚めたらもしかして変わっているかもしれないと思っていたけど、
そんな事は全然なくて、寧ろより一層強くなっていたのだ。
だから私はパンを齧りなら窓の外を見た。
よく晴れていたので街がよく見渡せた。
今日もあの店の前に人が集っているのが見える。
何かしらお得なものが売っているらしいその店に私は一度も行った事はない。
だってお得だからという理由だけでものを買おうとは思わないから。
私はいつだって欲しいものを買うだけだ。
人だかりを横目に私はブーツをコツコツを鳴らしながら、すぐに路地裏に入って
行くのはこの道が一番近道だったからだ。でもこの道は残念ながらいつも誰かが
横たわっているのだ。
「ちょっと通りますよ」
そう言って人を跨いで進む路地裏には占い師が居て、
勝手に人の運勢を占ってしまうから私は走り抜けた。
気にしないつもりでいても何かしら行動が制限されがちな私には必要ない。
息を切らして走り抜けたその先では路地裏とは全く違う世界が広がる。
たった一歩踏み出しただけなのにこんなにも違う、まるで異世界へ来たみたいに
人も空気も街並みも違って見えるのだ。
そんな中を異世界人の私は歩く。
気づかれないように注意をしながら、俊敏に歩く。
でもついつい鼻歌なんか歌ってしまうのは見逃して欲しくはある。
だって仕方ないじゃない?
鼻歌に合わせてベルを鳴らせば男が出て来た。
「誰だよこんな時間に! そんなに鳴らさなくたって分かってるんだ! 」
怒鳴り散らしながらも出て来た男はそれはもう好みのタイプの顔で、
まあだからこそこうしてわざわざやって来たのだが……
「何だお前か、何をしに来たんだ? 」
「取り返しに来たのよ」
「何を? お前のものなんてここには何もないぞ」
訝しげに男はそう言う。
だから私は拳銃を取り出して銃口を男に向けた。
でも男はまだ自分の状況がよく理解出来ていないようだった。
「私の心を取り返しに来たのよ」
だから説明してあげた。
昨日婚約破棄を言いつけたこの男から、私の心を弄んだこの男から
私は取り返すのだ。
「バーン! 」
失くしてしまったものを。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる