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しおりを挟むトントン
ドアがノックされ、開けて見ればそこには枕を抱えた弟が立っていた。
私はそんな弟を笑顔で迎え入れる。
こうして歳の離れた弟と一緒に過ごせる時間はきっともう無いだろうから。
「姉様。最後に一緒に寝てもいいですか? 」
「ええ、いいわよ」
弟も、もう分かっているのだ。
結婚してしまえば私達が会えなくなってしまう事は。
私の返事ににぱーと笑った弟はベットへと駆けて行く。
まだまだ子供だとそれを見ていると思い、考えてしまうのだ
『大丈夫だろうか? 』って。
『私にべったりだったこの子が、私が居なくなっても大丈夫のか? 』
それだけが心配である。
「姉様! 」
「はいはい。今行くわ」
弟に呼ばれて私もベットへ入ると抱き着いて来る。
もうこの温もりもこれで最後なのだ。
「姉様、僕は姉様が居なくても大丈夫です」
抱き着きながらそんな事を言われても、とは思うが弟なりの決意表明なのだろう
から、私も受け入れてあげないといけないのだ。
「ええ、大丈夫よ。あなたならね」
*****
横で眠る弟の頭を撫でながら、寝顔を眺め、昔を思い出す。
いつの頃からだっただろうか、弟が私の所へ駆け寄ってくるようになったのは?
歳が離れていたせいか、私もついつい弟を甘やかしてばかりだった。
その所為か、いつだって私の側に居た弟。
そんな弟が私も可愛くて仕方無かったのだ。
ついつい優先順位が高くなってしまって、結局最後には婚約者よりも弟を優先
してしまった私は、当然のように婚約破棄されてしまった。
周りの人にはいろいろ言われたけど、私はそれでよかったと思っている。
私の大切な弟の事を無下にするような相手となんて結婚は出来ないから。
そんな私を見かねて、両親は私の許可を得ずに結婚を決めてしまった。
正直、酷いとは思った。でも決まってしまった事はもう覆らないのだ。
その事実を受け入れるしか私には出来ないのだ。
だから私は決めたのだ。
『必ず会いに行く』
明日、弟が結婚して行ってしまったとしても。
私は必ずこの子の元へ行こう。
だって私が居ないと駄目なのだから、私が必ず弟の元へ。
そう決めた結婚前夜だった。
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この姉ちゃん、弟の妻の場所をぶん取りそうで
怖いね。