お前しかいない

菫川ヒイロ

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 俺は呆気にとられていた。
 
 
 嘘だろ? そんなはずは……
 じゃあ俺は何の為にここに来たのか?
 これから三年もの間、一体何をして過ごせというのだろうか?
 
 
 俺が入りたかった映像部は無くなってしまっていた。
 
 
「まあ、無いものは仕方がないよ。諦めよう」


 落ち込んでいた俺に鈴は簡単に言っては来るが、
 そう簡単に受け入れる事なんて出来る訳もないじゃないか!
 だって俺の目標だったものがこうも簡単になくなってしまうなんて
 誰が予想できただろうか?
 
 
 俺は受け入れる事が出来ずに、教室の天井を見上げていた。
 
 
「どないしたんや君、もう五月病かいな」


 そんな俺に声をかけて来た奴がいた。というか関西弁?
 
 
「え? 」


 俺は声がした方へ顔を向ける。


「ああ、ごめんな。俺は三田村言うんや、三田村慧。別に盗み聞きするつもりは
 なかったんやけどな、なんや君らの話聞こえてもうてな。
 でもそう落ち込む事ないんとちゃうかな、映像部どうにかなるかもしれへんし」
 
 
 色黒の三田村が白い歯を輝かせて言うには、どうも映像部は
 無くなったという事ではないらしく、今は休部状態なのだという。
 
 
 実績のある部活だったのだが、部員が集まらずにいたので
 活動が出来なくなってしまったというのが現状だそうで
 だから部員が集まりさえすれば、どうにかなるんじゃないかと
 いう事を三田村は教えてくれた。
 
 
「へえ、そうだったんだ。よかったじゃん栄ちゃん。これで映像部どうにか
 なりそうなんじゃない? まずは部員を集めないといけないみたいだけどね」
 
 
「嗚呼、そうだな。じゃあすぐに部員を集めないとな! 」


 鈴に言われ俺もさっそく部員集めに動く事にした。
 これでどうにかやって行けそうだ、曇り空に一筋の光が射したみたいだった。


「ああ、それやったらもう動いてる奴おるで」


 いい情報を教えてくれて、お礼もまだ言っていないのに
 また三田村が教えてくれたのだ。
 
 




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